惜しい!というのが正直な感想です。
あと一歩で勝利なのに、どこかで手順を間違えてしまって、勝てる勝負を引き分けに持ち込まれた、という感じの映画です。
一番の原因はストーリーが二股に分かれてしまっているからだと思います。
予告編などを見ると、ブレンダン・フレイザー演じるフィリップと少女ミアとのやり取りを中心にストーリーが展開していくのだと思っていたのですが、そうではありません。
途中、いくつものエピソードが挿入されるのですが、そのうちのもっとも大きなものがミアとのやり取りと柄本明演じる老俳優・長谷川とのやり取りなのです。これがストーリーの二股化です。
個人的にはどちらかひとつに絞ったほうが良かったのではないかなあ、と思います。
ストーリーの中心が分散することによって、感動の度合いが薄れてしまいました。
ウェットにならず、どちらかというとドライ気味の演出というと、同じ東京を舞台にしたソフィア・コッポラ監督の「ロスト・イン・トランスレーション」が思い出されます。
そういえば、どことなくブレンダンフレイザーとビル・マーレイには類似点があるようです。
HIKARI監督は、お涙頂戴の映画にはしたくなかったのでしょうが、観客の側からすると、ベタでも泣かせてほしかった気がします。
ともあれ、ブレンダン・フレイザーの演技は素晴らしい。
人生の奈落を味わった人にしか出すことのできない演技が光ります。
小説家として気になった点もあります。
ひとつめは、伏線の張り方の甘さです。
甘いというか、そもそも伏線を張っていないので、ちょっとご都合主義のように感じられる場面がありました。
たとえば、ミアがフィリップの正体を見破る場面。
あそこは、ぜったい歯磨きのコマーシャルを使うべきです。
そうすれば、前段のコマーシャルのシーンが生きてきます。
ふたつ目は、個人の抱える悩みが無視されている点です。
フィリップの悩みは売れないところ。
やっと大きなオファーが来たのに、何の葛藤もなく(少なくとも私にはそう見えました)断っているのは不自然です。
ミアもいつのまにか、フィリップを受け入れているし、心に深い闇を抱いていそうな社長・多田の悩みも語られる場面がありません。長崎に行った長谷川が壺(?)を掘り起こす場面も心理描写が甘いせいで、感動的ではありません。
その辺が実に、惜しい!のです。
とはいえ、発想は面白いし、前述したようにとにかくブレンダン・フレイザーの演技が素晴らしいので、一見の価値あり、です。
お勧め度 ★★★☆ 70点
















