朝会社に行くとき、東海道線のホームに大量の小学生がいた。
みんなリュックサックを背負っていて、もの凄いはしゃいでた。

「遠足か。いいねえ」とにこやかになっていたら
小学生の1グループが突然の手拍子とともに
「エーロース! エーロース!」
と音頭を取り始めた。朝からエロスて。
俺は関西人でもないのに「なんでやねん」と思った。

そして、 小学生の音頭と俺の心の声で
「エーロース!(なんでやねん) エーロース!(なんでやねん)」
みたいなハーモニーになり始め、餅つきのリズムみたいでだんだん面白くなってきてしまい、
笑いを噛み殺した変な顔のまま東海道線に乗り込んだのであった。
営業いって、のほほんとした秋の夕暮れ前の帰り道。
赤く染まったもみじが降り落ちる道で、小学生が前を歩いていた。
ただ歩いていたわけではなく、その小学生は
「はさむぜはさむぜー!」とか言いながら、洗濯ばさみを振り回して歩いていた。
そして植木などの葉っぱを挟んでいた。
若くして変質者の素質は十分である。

そんな彼が凄く気になってしまった俺は彼に声をかけた

「へい少年!!これ挟んでみてよ。」
自分の携帯電話を差し出す俺。

「いいよ!」
ものすごい笑顔で挟む彼。

間違いなくあの瞬間の俺たちは、世の中の中心に存在していた。

そこから品川駅までの道のりの少しの間、俺は彼と会話をした。
短い時間だったが、彼のことを色々と知った。
・小学一年生ということ
・英語教室に通っていること
がわかり

彼を観察することで
・顔が長いこと
・童貞であること
がわかった

人を知っていくって面白い!

そして英語教室に通っているという話を聞き、
俺は彼に「なんか英語でしゃべってナイト」と言った
「えー、、、ハウオールダーユゥ?」

年齢聞かれてる!!
しまった、、、、
なんか度忘れして答えられない!!!

と思ったのもつかの間、数字だけ言えばいいやと考え
「トゥエンティーファイブ」と言った。
しかし(あ、これなんか足りないんだっけ?)と思い、中学生時代に習った英語を思い出す。

その後、蛇足のように「アイム トゥエンティーファイブイヤーズオールド!」と付け足したら
「そこまで言わなくていいんだよ。」と、わりと冷たい声で言われた

でも俺は25歳だし「うん、知ってるよ。」みたいなリアクションを取った。
だって俺25歳だし。
むこう7歳とかだし。
俺の方が英語詳しいって思わせたかったし。

本当はさよならも言わずに「知ってるし!バーカ!!」って叫んで、
ダッシュで品川駅に逃げたかった。
でも平静を装ったまま歩き続けた俺は根っから紳士だと思う。

文科省が悪い。
物凄い勢いでひきこもって、M-1グランプリやyoutubeですべらない話やおぎやはぎのコントやらなんやら
なぜかお笑い一辺倒に傾いて暇を潰しています。

こんなに面白いものを連続連続で見せられると、家の中で面白いものを探そうと必死になりますが
そんな面白いものはありませんでした。

ただ一人、父を除いては、、、、

メシを食っていると、親父が突如話し掛けてきました。
「おいたかし。
これからはな、物を落としそうになった時には落とした物を目で追うのはダメだ。
これからは、『物を落とした!』と思ったら、必ず着陸する場所を見るんだ。」

話題が唐突すぎる。
なんで落下地点の話やねん。お前は外野手か。

俺は親父に天然スイッチ(認知症の前兆)が入ったことを確認し、話を続行させる。

「そんでどうすんの?」

「何が。」

もう話してたことを忘れてしまったのかよ、、、

「いや、今話してたじゃん。
物を落とした時、落下地点を先回りして予想するじゃん。その後どうすんの?」

「あ?ああ。あれな。普通に落としてしまったら、そのまま失くしてしまうよな。
どこに落ちたかもわからず、コロコロと転がってしまう。
その確率がグッと減るんだ。まあ凄いスピードで確認しなきゃいけないんだけどな」

やばい、、今、父の中で何かがフィーバーしてる!
続けさせなきゃ!

父の夢は膨らむ一方!
俺の期待も膨らむ一方!

「でもなんかそれって見るスピード凄すぎじゃない?無理だろ。
てゆうか落ちたもの、そのまま目で追ったほうが早いんじゃないかい?
そもそもなんでいきなりそんなことを思いついたの?」
俺は素朴な疑問投げかけた。

「いや、だからさ、物を落としそうになったら、
やっぱり焦ってしまうと見失ってしまうじゃないか。
そんなふうに、落とした後に見つからないってなることが凄く多いじゃないか。
ふぁからそんな時の為に着陸ちふぇんを・・・」

と、一生懸命に父は説明しているのだが、なんかだんだん滑舌が悪くなっていってる。
「お父さんどうしてしまったの?」というくらいに滑舌が悪くなっていってる。

「物を落としたあほにみうかはないふっへいふ」
とか言い続けてる。

おかしいと思い、父を見てみると
父が言葉を発する度に、入れ歯が少しずつズリ落ちていっているのだ。

少し坂になってる所に置いてある携帯が、自身のバイブレーションによって滑落していくかのように、
入れ歯がだんだんズリ落ちていってる。

「入れ歯落ちとるがなwww」と俺が爆笑していると、
父が『もうダメだ』と思ったのか入れ歯を「クイッ」と上げ直した。

それはまるで知的な秘書とかがメガネを「クイッ」ってあげるかのように。
俺はその時の親父の背後に「知的な秘書」の幻影を見たよ。

そして入れ歯を直した後、父は言った
「こういうのだったら落ちてもすぐわかるんだけどな」

そんなセルフフォローはいらんわ。