これは6月9日の出来事である
こそこそこそ・・・・
「何をなさっているのですか?ご家老様?
姫様のお部屋の前で・・・」
「おお、風村(ふぁむら)か、しいっ!静かにするのじゃ」
「は・・・はい」
「姫様が今、悪氏呉服店で大量の呉服を購入してきたのじゃ!!」
「では、これから突撃してお叱りに?」
「違う違う、その逆じゃ!!
どうやって、姫様を安心させて差し上げようかと思案しておるのじゃよ」
「はぁ・・」
「お主も知っての通り、城に住み着いていた
たぬきな
あれがのう・・・少し前に病気でこの世を去ったのじゃよ
姫様は部屋に住み着いたたぬきをこの上なくかわいがっておられたからのう
たぬきがいなくなってからの姫様は
まさに生きる屍状態じゃったのじゃ
それはもう見ていられぬくらい憔悴してのう・・・」
「はい存じておりまする、私もとても心配しておりました」
「だからの、姫様がなんとか元気を取り戻してくださるよう
ワシは呉服店の「ありがとう祭り」なる宣伝巻き物
をわざと廊下に落としておいたのじゃ」
「なんと!!ご家老様!!そんな手を!!」
「うむ、しばらくはなんの動きもなく
部屋で釜飯ばかり召し上がっていたので
ヤキモキしていたのじゃがの
今日こそこそとでかけていったと思ったら
呉服店の紋の入った大風呂敷を抱えて戻ってきたのじゃよ」
「姫様、少しお元気になられたのでしょうか?」
「そう願いたいのう・・・。
なので、姫様になんとかワシが大量購入の呉服に何も文句がないということを
わかっていただきたくて
どうしたらいいのかと
こうして部屋の前で頭を絞っておったのじゃ」
ガラッ!!!
「ひぃぃ!!姫様!!」
「なんじゃ?二人揃ってわらわの部屋の前でゴソゴソと・・・
気持ちが悪いではないか!!」
「ひ・・姫様!!ありがとう祭りの収穫はいかほどでござりましたかな?
収納が足りぬのでしたらば
このじいが
行李やタンスなどをもっと持ってきまするぞ!!」
「・・・・・なんじゃじい、行李からはみ出すわらわの呉服に
いつも文句たらたらじゃったのに・・・
気持ちが悪いのう」
「姫様!!御家老様は姫様がたぬきを失って辛かろうと
この際
呉服店に行かれることを推奨しておるのでございまする」
「あっ!!これ!!そのような直截な物言い・・・」
「はっ!すみませぬ、姫様」
「なるほど。。。
そういうことか、うむ、だいぶ気持ちも落ち着いてきて
こうして呉服店の巻物を見て楽しめるようにもなったぞ
心配してくれていたのだな
すまぬな、じい」
「姫様〜〜〜私めではたぬきの穴を埋めることは叶わぬと思いまするが
どうぞお気を落としすぎませぬように・・・」
城に住み着いたたぬきは姫様の宝物であった
家老、風村はもちろん城中のものにも人気だったたぬきは
世を去ってもなお
人々の語り草になっているという
元気な頃の城のたぬき近影
姫様とじいシリーズ
メッセージをいただく中に
意外にも「姫様とじい」のファンなのですが
もう出さないのですか?
というお言葉が結構多い
ありがとう存じまする
笑
今回思い立ってキン(たぬき)を登場させてみた
姫様とじい
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