1980年代クリムゾンの音楽を受け継ぐBEAT、2025年9月来日。スティーヴ・ヴァイ語る | 音楽とごはんとお酒のブログ

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1980年代キング・クリムゾンの音楽と精神を受け継ぐスーパーグループ、BEATが2025年9月に来日。9月1日(月)、日本武道館でワン・ナイト・スペシャル・ライヴを行う。

エイドリアン・ブリュー(ギター)、トニー・レヴィン(ベース、スティック)という当時のメンバー、そしてスティーヴ・ヴァイ(ギター)、ダニー・ケアリー(ドラムス/TOOL)という超実力派ミュージシャン4人が集結。繰り広げるテクニックとミュージシャンシップの応酬は現代ロック界最高峰といえるものだ。『Discipline』(1981)『Beat』(1982)『Three Of A Perfect Pair』(1984)からのナンバーに彼らが新たな生命を吹き込むステージは、まさに歴史的ターニングポイントである。

さらに8月29日(金)には2024年11月10日のロサンゼルス“ユナイテッド・シアター・オン・ブロードウェイ”公演を収めたライヴ2CD+Blu-ray『ライヴ~イン・ロサンゼルス2024 (LIVE)』も発売。ロック史に刻まれるドキュメントとして永遠に語り継がれるであろう本作で武道館公演に向けて気分を高め、そして公演後も何度でも反芻したい。

天才ギタリストの名をほしいままにしながらキング・クリムゾンの紅色の伝説に身を投じるスティーヴ・ヴァイがBEATを語った。



BEAT公演フライヤー/courtesy of KYODO TOKYO
<キング・クリムゾンの音楽は複雑極まりないけど聴き手を遠ざけることがなく聴きやすい>
●BEATの結成と、あなたが加わることになった経緯について教えて下さい。

1980年代にキング・クリムゾンが発表した3枚のアルバムは、それまで存在してきたいかなる音楽ともまったく異なっていた。1970年代の彼ら自身とも違っていたんだ。俺は当時22、23歳だったけど、衝撃を受けたよ。あまりに異なっていて、聴きやすくて、音楽的で、複雑でメロディックで...何だ?この音楽は!と思った。しかも彼らはほとんどライヴ形式でレコーディングしたというんだからね!だから2019年だかにエイドリアン・ブリューからこのプロジェクトに誘われたときは、飛び上がって喜んだよ。当初エイドリアンは1980年代のキング・クリムゾンを再結成させようと考えていたけど、ロバート・フリップは関心を持たず、ビル・ブルーフォードは当時ツアーに出る気がなかった。それで他にロバートのパートを弾けるギタリストは...ということで俺の名前が挙がったんだ。ロバートも公認しているということで、エイドリアンとトニー・レヴィン、そしてダニー・ケアリーと一緒にBEATを名乗ってやることにしたんだよ。

●BEATの噂だけはかなり前から流れていましたが、なかなか実現しなかったのは?

コロナ禍のパンデミックのせいでプロジェクト自体が棚上げになった。それから俺は自分のアルバムを作ってツアーに出なければならなくて、BEATは2024年まで先延ばしになったんだ。北米からツアーを始めて64公演をやったけど、最高のショーになったし、ファンからの反応も凄かった。それで世界中どこでも、呼んでくれるなら行こう!と考えた。南米やメキシコにも行ったし、日本でプレイするのを楽しみにしているよ。ロバートのプレイを再現するのはとてつもないチャレンジだけど、だからやりがいがあるんだ(笑)。

●BEATでの日本公演をとても楽しみにしています。

日本にはキング・クリムゾンの熱狂的なファンが大勢いることを知っている。もちろんいろんな都市でショーをやれたら良いんだけど、武道館1回に絞ることで、特別なエクスペリエンスにしたかったんだ。日本中から大勢のファンが集まってくる、1980年代キング・クリムゾンの音楽のセレブレーションにしたい。名曲の数々をプレイするのは喜びだ。とにかくエキサイトしているよ。...フェイヴァリットな曲?全部だよ!「Neurotica」「Heartbeat」「Sleepless」「Frame By Frame」...「Elephant Talk」のエイドリアンの象の鳴き声も毎晩スリルを感じる。自分がその一部でいることを光栄に感じるし、日本のみんなにも一部になって欲しい。

●BEATのワールド・ツアーは2024年9月にスタートして、日本公演はちょうど1年目となります。そのあいだでバンドのライヴにはどんな変化がありましたか?

キング・クリムゾンの音楽は複雑極まりないけど聴き手を遠ざけることがなく、とても聴きやすいものだ。入念にリハーサルをしたけど、本格的にシックリ来たのはツアーが始まってしばらく経ってからだった。『ライヴ~イン・ロサンゼルス2024 (LIVE)』で収録した公演はツアーの絶頂かは判らないけど、とても良いショーだったし、レコーディングすることが出来て本当に嬉しいね。ツアーの最初と今で違いがあるとしたら、4人の連帯感だろう。最初は自分のパートを正確に演奏するので精一杯だった。でも今ではお互いのプレイを深く感じて掘り下げていくことが出来る。それが全体に良い影響をもたらしているよ。

●2CD+Blu-ray『ライヴ~イン・ロサンゼルス2024 (LIVE)』のロサンゼルス公演はウェブキャストで配信されましたが、内容は同じものですか?

ライヴ・パフォーマンスはすべて同じものだよ。良い演奏だったし、直す必要はなかった。直したのは音声のバランスとミックス、そして映像のアングルぐらいだよ。リアルタイムのウェブキャストだと本来映すべきプレイヤーが映っていないことがあるから、修正する必要があるんだ。結果としてCDと Blu-rayは音声も映像もずっと良くなっている。特典映像やインタビューもあるし、BEATのライヴを素晴らしい形で捉えたドキュメントだ。

BEAT on stage /courtesy of KYODO TOKYO
<ギターは人間の個性がそのまま反映される楽器だ>
●あなたがキング・クリムゾンの音楽と出会ったのはいつ頃ですか?

バンドがデビューした頃、まだ9歳ぐらいだったから、最初からは知らないんだ。十代になってロックンロールを聴くようになったとき、近所にジョン・セルジオという数歳年上の友達がいた。彼はありとあらゆる音楽に詳しくて、プログレッシヴ・ロックについても教えてくれた。その中にキング・クリムゾンもあったんだ。どのアルバムだったかは思い出せないけどね。ただ俺はレッド・ツェッペリン、ディープ・パープル、クイーンなどが好きで、彼らにはハマらなかった。その後にロバートのソロ・アルバム『Exposure』(1979)を聴いて、奇妙な感覚をおぼえたんだ。自分のまったく知らない、聴いたことのない音楽だと思ったんだ。それからキング・クリムゾンの作品を遡って、『Discipline』からはリアルタイムで聴いている。いつか自分でもプレイしてみたかったけど、怖くもあったんだ。自分が触ってはいけない音楽じゃないかってね(笑)。

●2004年の“G3”ツアーでロバート・フリップとジョー・サトリアーニとツアーしましたが、それ以前からロバートと交流はありましたか?

ずっとファンだったけど、彼と直接会って一緒にステージに立ったのはそのときが初めてだった。素晴らしい経験だったよ。ジョーや俺みたいなシュレッド・ジャム・タイプのギタリストと彼はまったく異なっていて、“G3”ツアーに音のタペストリーを編んでくれた。ロバートの生み出すサウンドスケープと音の大海原は圧倒的だった。

●BEATのツアーではエイドリアンが自分のパート、あなたがロバートのパートを弾くのですか?それとも2人のギターの配分を再構成していますか?

エイドリアンのパートは彼が自分で弾いて、俺は“ロバート役”なんだ。エイドリアンの隣で、彼のフレーズを弾こうとするなんて、恐ろしくて出来ないよ(苦笑)!

●ロバートのパートを弾きこなすのもかなりハードルが高そうに思えますが、再現しやすい曲、しにくい曲などはありますか?

比較的再現しやすかったのは...全体の10%ぐらいかな(苦笑)。あと50〜60%はロバートのフレーズをどう弾くか悩みに悩んで、市販の教則本を読んだりもしたよ。出来る限り彼のフィンガリングまで再現したかったんだ。でも「Frame By Frame」だけはそれが出来ず、自分なりに“リ・シェイプ”する必要があった。もしかしたら、50代の俺だったら弾けたかも知れない。でも今の俺は65歳で、肩の手術をしたばかりだ。1公演なら良いけど、ツアーで移動しながら毎晩プレイするのは難しいんだよ。だからオリジナルに敬意を表しながら、自分のスタイルに沿って、タッピングで弾くようにしたんだ。決して楽をしたり、シンプルにアレンジしたフレーズは弾いていない。ただ、俺なりのアレンジを加えているよ。

●我々がBEATのライヴを日本武道館に見に行くのは、完全コピーではなく“スティーヴ・ヴァイらしくキング・クリムゾンを弾く”のを見たいというのも大きな理由のひとつです。

ギターというのは不思議な楽器でね、ロバートとまったく同じポジションの音を弾いても彼と同じには聞こえないんだ。それは弦の押さえ方やピッキングの違いもあるけど、人間の個性がそのまま反映されるからだと思う。それはギターだけでなく、ドラムスについても言えることだ。ダニー・ケアリーがビル・ブルーフォードとまったく同じフレーズを叩いても、ビルのようには聞こえない。ダニーらしく聞こえるんだ。だから「1980年代キング・クリムゾンとまったく同じじゃない!」と文句を言うファンもいるかも知れない。でもそれは同じメンバーではないから当然だし、異なった個性を楽しんで欲しい。

●ロバート・フリップは2002年頃にキング・クリムゾンの音楽を“ヌオヴォ・メタル”と定義し、同じジャンルに括られるアーティストとしてTOOLを挙げていました。あなたはTOOLをキング・クリムゾンの直系にあるバンドだと考えていますか?それともまったく別の流れから生まれた存在でしょうか?

現代のメタル・バンドでポリメトリックやポリリズムなどを取り入れていて、キング・クリムゾンから影響を受けていない方が少ないんじゃないかな?TOOLもその流れにあるだろう。でも彼らの音楽には揺らぐことのない独自のアイデンティティがあるし、コピーや剽窃とは次元がまったく異なっているよ。

●あなたとエイドリアン・ブリューはいつから知り合いだったのですか?

エイドリアンも俺もフランク・ザッパのバンドにいたけど、時期が異なっていたし、面識はなかったんだ。もちろんずっと彼の音楽とギターのファンだったけどね。それから電話で話したことはあったし、BEATをやることになって電話やメールをしたり、自分がプレイする動画を送ったりしたけど、直接会ったのはBEATの最初のフォト・セッションのときだったよ。おおよそ彼の人柄は判っていたけど、実際に会ってみると想像以上にクールな人だった。

●トニー・レヴィンは世界中のあらゆるミュージシャンと共演したことがありますが、あなたとは一緒にプレイしましたか?

いや、かなり前に共演する話があったけど、実現しなかったんだ。トニーは唯一無二のプレイヤーだし、いつか一緒にやりたかった。まさかこのプロジェクトでやることになるとは想像もしなかったけどね!キング・クリムゾンを聴くようになって、当初はギターだと考えていたパートが、実は彼の弾くチャップマン・スティックだったことが多かったんだ。2本のギターとスティックのオーケストレーションが彼らの音楽に素晴らしいテキスチャーをもたらしていたんだよ。彼は優れたベーシストでもあるけどリズムを弾くだけではなくオールラウンドなミュージシャンであって、さらに俺の知る中で最も愛するべき人間でもある。BEATで彼と世界をツアー出来て光栄だし、毎日を楽しんでいるんだ。

●自分のソロ・ツアーとBEATではギターや機材は大幅に変えていますか?

半分ぐらいは共通していて、フラクタルとシナジーのモジュールを使っている。でもBEATでは当時のサウンドを出すためにギター・シンセを弾いた。ただし操作性を考えて1980年代当時のものではなく、BOSSのSY-1000とGM-800を使っている。SY-1000がギター・シンセ、GM-800はギターのサンプラー的な使い方で、時間をかけていろんなパッチを作成してミックスしているよ。さらに当時の音色を再現するためにローランドのジャズ・コーラスを手に入れた。エイドリアンも当時から現在に至るまで使っているものだ。

●キング・クリムゾンは世界中に熱狂的なファンがいて、3枚のアルバムからどの曲をプレイしなくても「どうしてあの曲をやらなかった!」と文句を言われると思いますが...。

ああ、「Discipline」のことね(苦笑)。結局、時間の問題だったんだ。既に俺たちのショーは2時間を突破していたし、リハーサルに割ける時間にも限界があった。「Discipline」をやろうとするならば、かなりの事前準備が必要になるんだ。あまりに難しすぎたんだよ。

●スティーヴ・ヴァイの口から「難しすぎる」という言葉が出るとは信じられません。

いや、もしリハーサルにもっと時間をかけることが出来れば全員が弾きこなせただろうけど、他の曲だって難易度は高いし、とにかくスケジュール的に無理だったんだ。将来的にやるかも知れないよ。俺自身「Discipline」にチャレンジしてみたいしね!

●1980年代の3部作からでない「Red」をプレイすることにしたのは?

1980年代のキング・クリムゾンだけでなく、バンドの歴史に敬意を表したかったんだ。「21st Century Schizoid Man」も考えたけど、あまりに初期のバンドと密接な曲だから「Red」が完璧だと思ったんだよ。まさにインストゥルメンタルの名曲だし、ステージで演奏できることにスリルを感じるね。

Adrian Belew and Tony Levin of BEAT /courtesy of KYODO TOKYO
<忙しいのが好きなんだ。毎日がハッピーだよ>
●これからBEATを続けていくとしたら『THRAK』(1995)からの曲などをプレイする可能性もあるでしょうか?

実はそのことについて話し合ったことがあるんだ。「Dinosaur」をやったら面白いんじゃないか、とかね。「Discipline」と同様に、次回以降のツアーの課題だよ。ただ全員が別のこともやっていて忙しいし、“次回”がいつになるかまったく予想できない。まずは今回のショーを楽しんで欲しいね!

●4人のクリエイティヴなミュージシャンが集まったBEATゆえ、オリジナル・アルバムも作って欲しいです!

うん、その可能性についても話したことがある。まあ、いろんなことを同時にやろうとするのではなく、一歩ずつ前に進んでいくよ。今の俺は“ビューティフル・ソルジャー”であることに喜びを感じているんだ。キング・クリムゾンの音楽をプレイして、敬意を払うのは最高の気分だ。もしこの4人でオリジナル音楽のアルバムを作るとしたら、まったく異なった音楽性になるだろう。それもまた楽しみだけどね。

●今回のBEAT以外にも、あなたはフランク・ザッパに捧げるザッパ・プレイズ・ザッパ、ジョー・サトリアーニはサミー・ヘイガーとヴァン・ヘイレンの曲をプレイする“ザ・ベスト・オブ・オール・ワールズ”ツアーを行うなどしています。今後また他アーティストへのトリビュート・ツアーをやるとしたら、誰の音楽をやりたいですか?

キング・クリムゾンやフランクの音楽をプレイするのは、たまにやるのは楽しいけど、それをキャリアにするつもりはないんだ。俺にとって最も大事なのは、自分自身の音楽だ。もう30年以上やってきたし、いつだってそれがメインの、シリアスな活動だよ。もし誰かのトリビュート・ライヴをやるとしたら、トム・ウェイツの音楽をやりたいと考えているんだ。

●...ええっ?

彼は存命のアーティストで俺のフェイヴァリットだよ。ただ、大きな問題がある。誰が歌うんだ?...ってね。彼みたく歌えるシンガーを見つけるのは不可能に近いよ。だからこのプロジェクトは、万が一そういう人が見つかったらやろうと考えている。

●シリアスな自分の音楽と、楽しいトリビュートを両立させている中で、ジョー・サトリアーニとやっている双頭バンド“サッチヴァイ・バンド”はどちらになるでしょうか?

両方だな(笑)。ステージで自分の曲、ジョーの曲、2人で書いた曲をプレイするんだ。とても刺激的で、スリルを感じるよ。BEATのツアーが終わったら、今度はこのバンドで日本に来たいね。ツアーのタイトルは“サーフィング・ウィズ・ザ・ハイドラ”というもので、最高にエキサイティングだよ。

●あなたとジョー、そしてグレン・ヒューズで新曲「I Wanna Play My Guitar」を発表しましたが、他の曲でもグレンをフィーチュアしていますか?

いや、ジョーとのレコーディングでヴォーカル入りは1曲だけで、他はすべてインストゥルメンタルなんだ。でもグレンは凄いシンガーだし、ぜひまた近い将来、一緒にやりたいと考えているよ。

●9月のBEAT日本公演の後の予定を教えて下さい。

日本から帰ったらすぐにジョーとスタジオに入って、年内はサッチヴァイ・バンドとしてのアルバムを作るんだ。2026年の前半にリリースして、まず北米からツアーを始める予定だよ。もちろんBEATも続けていきたいし、2026年の夏にはヨーロッパ・ツアーも考えている。ソロ・アルバムの構想も練っている。これからしばらくは忙しい日々が続く。そう言い出してから何年経つか判らないけど、俺は忙しいのが好きなんだ。毎日がハッピーだよ(笑)。

Steve Vai of BEAT /courtesy of KYODO TOKYO




BEAT - Performing the music of 80s KING CRIMSON

2025年9月1日 (月)

日本武道館

開場18:00 / 開演 19:00

【日本公演特設サイト】
https://eventimliveasia.com/beatjp

【日本レーベル公式サイト】

https://www.sonymusic.co.jp/artist/BEAT/
 

 

セットリストにREDが入っているのを不思議に思っていましたが

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