パンを焼く時に、多くの人は「トースターで焼く」という選択肢をすると思う。トースターは電子レンジと同じく、キッチンにある定番のアイテムともいえる。安いものであれば2000〜3000円程度で買えるし、最近では数万円するハイエンドモデルも人気だ。
ただ私は、パンを焼く時はフライパンで焼く。その理由は単純明快である。
我が家にはトースターがないのだ。
思えば学生時代に親元を離れた時、アメリカンな雰囲気に憧れてポップアップトースターを買ったものの、あまりの使い勝手の悪さに「なんだこのやろう!」と憤慨したのが15年以上前。
私はそれ以来、トースターというものを買わずに生活をしてきた。
だからといって、最初からパンをフライパンで焼いていたわけではない。コンロに併設されているグリルを使ってこんがり焼いていたこともあった。
ただ、グリルの火力は思った以上に強く、少し目を離せばたちまち黒こげになってしまう。私は黒く焦げた部分をカリカリと削り、半分くらい削げ落ちたみすぼらしいパンを、なんともいえない気持ちでかじっていたのだ。
そこで先に述べたように、紆余曲折の末にフライパンでパンを焼くようになったのだが、実のところ、ここに行き着いたのはつい最近のことだ。
「パンは何かで焼くもの」であることと「フライパンは何かを焼くもの」は当然のことなのに、このふたつを結びつけることができず、ここにたどり着くまでに30年以上かかってしまった。
「パンをフライパンで焼く? そんなの別に普通のことだろ」と思われるかもしれないが、私にとって、この発見はまさにコペルニクス的転回であり、近年における人生の豊かさ向上ランキングでは断トツで5位くらいに入る出来事なのだ。
かくしては私は、今日もパンをフライパンで焼いた。
パンを焼く一方
もう一つのコンロで目玉焼きも作っておく。
シティの男は、何ごともスマートにしなければいけない。同時進行することによって、時間を有効活用することが大事だ。
このスキマ時間こそが大事で、いいアイデアというのは得てして、こういう時にフッとうまれたりもする。
実は今日も、今までずっとアイデアが出なかった仕事の企画があったのだが、目玉焼きを焼きながらぼーーっと考えていると、いいものが浮かび上がってきた。
これはナイスアイデアだ、忘れないうちにメモしておこう。
そのあいだに焦げてしまった。
しかし具材をのせてしまえば見えないから大丈夫だ。目に見えるものだけが真実では無い、朝のトーストはそんなことも教えてくれる。
このように、私はトースターを持たずとも、快適なトーストライフを送ることが出来ている。だから、数万円のトースターを持っている人を羨むこともない。フライパンがあれば、なんとかなるのだ。
パンはパンでも、パンを焼くパンはなーーんだ?
フライパーーン!!
(終)
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