「よく噛んで食べなさい」と昔から言われるが、ほとんど噛まずに飲み込んでしまう早食いの習慣はなかなか治ることがない。
私は典型的な早食いタイプで、食事=飲み物だと思っている節がある。喉越しを楽しむ、体に悪い食べ方である。
それではいけないと思い、よく噛むように心がけているものの、食べているときはついついいつものクセでご飯をかき込んでしまう。
しかし30歳を過ぎてこのままではちょっとマズいなと思い、しっかりとよく噛んで食べることを強く意識し、「一度口に入れたものは粉々にしてやるッ!」という掛け声を心の中で出すようにした。
そうすると、以前よりも食事に時間をかけて、ゆっくりと食べれるようになった。
すると不思議なもので、味付けの濃いものやジャンクフードは、あまり食べたくなくなってきたのである。あくまでもイメージだが、よく噛めば噛むほど体に悪い成分がにじみでてくるような気持ちになったのだ。
逆に玄米や食べ応えのある野菜などは、今までよりも美味しく感じるようになってきた。味は薄くても、少量でも、よく噛むと満足感が出るので食べ過ぎ防止にもなる。
ああ、これがよく噛んで食べるということかと思いつつも困ったことがある。
いま、私の内頬はズタズタなのである。
何を言っているかわからないかもしれないので改めて説明すると、私は頬の内側がぷっくりしていて、歯と頬が限りなく隣接しているのだ。
それで、一生懸命噛めば噛むほど奥歯で頬肉を挟んでしまい、結果、ズタズタになっているのである。
私は「このまま内頬がズタボロになるくらいなら、いっそのこと以前の食べ方に戻した方がいいのではないか? と思ってしまった。
しかしここで早食いに戻っては、また同じことを繰り返すだけなこともわかっている。逃げてはいけない。
かつてこの国には「痛みを伴う改革」というものがあった。いま私が直面しているのはまさにそんなことなのかもしれない。