仕事帰りの買い物の楽しみに「おつとめ品のお惣菜を買う」というものがある。特に20時を過ぎる時間帯では、否が応でもおつとめ品を期待してしまう。

そんな気分でスーパーに乗り込んだのに、淡い期待を粉々に砕くシールが貼られていることがある。

「夕方5時以降に作りました」である。

このシールの破壊力たるや凄まじいものがある。表向きは「出来立てですよ〜!」と見せかけているが、本当はそんなことはない。今日はもう、絶対に値引きはしないぞ、という強い決意がにじみ出ているのだ。

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このシールが貼られてしまったが最後、いくら売場でウロウロして時間を稼ごうとも、値引きシールが貼られることはまずない。

何しろ、夕方5時に作ったばかりだからである。

25時まで営業しているのに、17時に作ったものを20時に値引きするスーパーなどありやしない。作り手側も「今日はもう値引きしないからね」ということを無言で伝えているのだ。

このシールを見たときに私は今まで「負けた」と思っていた。だがしかし、よくよく考えてみると本当にそうなのであろうか。

このシールが登場するときは、大抵売場のほとんどの惣菜に同様のシールが貼られていることが多い。

これが何を意味するかというと、スーパー側はしっかりと売上を立てて、値引きしなくとも商品をさばききったということなのである。

料理を作る人にとって近所のスーパーというのは、いわばビジネスパートナーに近い存在である。ビジネスの基本は「相互の利益を最大化する」ということだ。

そのビジネスパートナーであるスーパー側が、しっかりと商品を売り切り、そして夕方であるのにも関わらず大量の商品を投入するくらいの回転をしたということは、我々にとっても喜ばしいことではないか。

私は普段の仕事でも「相手の利益を考えないで、自分たちだけの利益を考えて仕事を推し進めることは、決して互いの成長に繋がらない」という思いを持っている。

だから、スーパー側が「夕方5時以降にお惣菜を作る」ということは、喜ばしいことなのではないかと思い至った。

惣菜売場一面に広がる「夕方5時以降に作りました」シール。それを眺めながら、おつとめ品がないことを落胆するのではなく、スーパーに対して「よくやったね。おめでとう!」と思うことにした。

すると不思議なことに、目の前のおつとめ品がない状態すらも、私は穏やかな心で見ることができるようになったのだ。

値引きされていなくても、今日はお惣菜を買って帰ろうと思った。それがビジネスパートナーにたいしての礼儀なのだ。

そのとき私の目に、1つだけ「40%オフ」のシールが貼られたチキンカツを見つけた。

私は迷うことなく手を伸ばし、そして足早に惣菜売場を後にした。


その時の私は、間違いなく勝者の顔をしていたのだった。



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