「君は料理における器の大切さを知っているかい?」
老人は青年に向かって問いかけた。
「料理は作る人の技量と食材が全てさ。器で料理の味が変わるなんて嘘だね」
青年は憤った口調で老人に言った。その語気には、自分の意見を決して譲らない断固たる思いが込められていた
しかし老人はさらに問いかける。
「君は料理の本質というものが全く分かっていない。料理というのは何を楽しむものかわかるかい?」
「そんなの決まってるだろ? 料理は味を楽しむものさ」
その返答に、老人は首を振った。
「料理における『味』はただの結果であり、視覚、嗅覚、触覚、聴覚、その五感の全てを楽しむのが正しい姿だ」
「はん、そんなのちゃんちゃらおかしいね! 俺はそんな戯言なんて信じないぜ」
青年はあくまでも自分の意見を曲げようとしない。そこで老人は二つのカレーを差し出した。ひとつは何の変哲もない食器に乗せられたカレーで、もうひとつは取っ手のついた銀製の器に乗せられたカレーだった。
「おいおい、同じカレーじゃないか。これを俺にどうしろってんだい?」
「何も考えず、ただ食べるといい」
「はははっ、器が変わるだけで味が変わることを証明したいってことかい? そんなこと──」
二つのカレーを食べ比べていた青年の顔つきが変わった。
「こ、これは……」
「君にもわかったろう。確かにそれは同じカレーだ。だが器を変えるとどうだろう。全く別の味わいになったろう?」
「し、知らなかった…。俺は…今まで…なんて無駄な時間を過ごしていたんだ…!」
「大丈夫だよ。君の人生はこれからだ。素敵な器を求めて、より良い人生を過ごすといい」
「はい!師父!」
──「老人と青年の対話~近代食器論~」より抜粋
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✳︎いつものグリーンカレー
★★★レシピ★★★
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