公園はとても広かったです。


かなりの山奥でないと、こんな面積はとれないだろう、というほど。



そう。

近くの町からかなり離れた場所にきてしまっていたのです。



晩ご飯どうしようか?
おいしいものたべたいよね。
どこまで出たら、お店あるかな。



てか、ガソリンもつの? これ。



かなりエンプティに近いところに、残量の針がきてます。


山をおりたら、とりあえずガソリンいれよう。


ええと…安くいれられるといいねっ。



この段階で、かなり不安でした。


まだ免許を持っておらず

自分で運転しない私には

残りのガソリンでどれだけ走れるのかわからない。


センセイにたずねると

「だいじょぶだけど、ちょっとヤバイ。ガソリンスタンドみつけたらすぐ教えて」


そういうセンセイの顔に余裕がない。




あかん。
マジでヤバイ。



ここは山奥です。


いくらいい気候だからといって、夕焼け小焼け、空調なしですごすにはさむすぎる。


けっこう薄着できてしまったので、もうすでに肌寒い。

車中に、からだにかけられるブランケットもないときた。


おなかすいてきた。


状況はかなり悪化しています。



町におりたら日が暮れてた。


山中になかったガソスタ。
ならば下りたところにゃあるでしょう。


読みは当たってました。

ありましたともガソスタ。


そりゃそうだ、ある程度走ったところにガソスタないとみんなが困るもんね。



喜びいさんで向かったガソスタ。


閉まってました。

………………。



センセイの運が悪いのでしょうか。

それともなにかの呪いなのでしょうか。


いったい私たちがなにをしたというのママン……。

あれは新緑豊かな休日でした。


大きな公園に向けて少し遠出をしました。


公園とテーマパークが半分ずつくらいの、広い憩いの場。


たくさんの家族連れが来ていて、
とても和やかにすごせました。


らぶらぶなので、なにやってもどこ行っても楽しいんですけどね……




一日ゆったり歩いて
足も疲れて
おなかもすいて。


おいしいもの食べて、ぼちぼち帰ろうか。


そんな流れになってました。



来る道中、いくつかガソリンスタンドがありました。


まだけっこうガソリンは残っていたので
「安いところで入れたいね」と単価を比べては見送っていたのです。



ここで、私は自分の甘さをかみしめることになります。


センセイは、生半可な、運の悪さではない。
しかも自分では予測しえない。


ということは、同乗者が注意しないといけないのです。



彼が道を間違えることも見越して……

センセイはこまやかな人です。


臨機応変に動くことが上手で、フットワークがとても軽い。



そんなセンセイが不得手とするのは
段取りを組むこと。


予定をたてられないのではなく、
予測ができないのだと思われます。



また、センセイはとても運が悪い人です。


いつでも電話にでてくれる友人が、センセイがかけると話中。


今だけは来て欲しくない、その30分の間に宅配が来る。


昔から運が悪かったようで、彼の知人はみなこぞってうなずきます。



「彼は運が悪いからね」




だから、約束の時間にいつもちょっと遅れます。


仕事では遅れないようなので、大事には至っていませんが


ありえないハプニングがしょっちゅうおこるのです。


いきなり運転中に、道路にアルマジロを発見したり。(もちろん幻)


「降りよっと♪」と言って
軽快な足取りで降りはじめた崖が、
実はすんごい急だったりとか。

(気づこうよ、降りる前に……)


見ている分にはかなりゆかいで、

怒るどころか感心してしまうほど。


大事な取引でやらかしてしまわないことをいつも祈ってます。



恋愛がはじまってから変わったこと。

それは私の中と外。



簡単にいうなら、もとに戻った感じ。


十代から二十台前半の

あきれるほど元気で
必要以上に前向きで
自由だった自分に。



未来はよいものだと思っていたし、
夢も仕事も、やりがいのある楽しいものだと信じてた。


人と知り合うのは新しい世界への扉だと考えてた。



思い出してから、やっと、
そういったものから遠ざかっていたことを思い知らされました。


長いこと、元彼氏だとか貧乏だとか
目先のことに捕らわれてしまって
どっかマヒしてたんですね。


ゆるやかに変化していったのできづかなかったんだと思われます。




センセイといると、なつかしい自分に出会う。


小説はかきたいから書いてるんであって、書かないといけないものじゃない。


義務感なんかを自分で作り出して、泣きながら書くものじゃない。


夢をかなえる努力はただしんどい厳しいだけじゃない。


つらいことあるけど、やりとげる快感は大事なエネルギー。



仕事も、状況が悪いなら改善すればいい。


勤めてから長いけど、知らないことは恥ずかしがらずに教えてもらえばいい。


不満があるなら口にだして伝えればいい。


ただ我慢して、自分本位にがんばればいいもんじゃない。



なんだかうまきいかなくて、がんばるしかなくて、しんどいけどとにかく続けないと進まない。


終わりのないマラソンを走ってたみたい。



中学時代からの知人にセンセイを紹介したとき。


「おかえりなさい」


紹介もろくすっぽしてないうちから、そんなことを言われました。


なんにも話してないのに。

わかってしまうもんなんだなー、としみじみ。




後にたくさんの人から、たくさんの言葉をもらいました。


「肩に入ってた力がぬけたようだ」
「表情がおだやかになった」
「よかったね」


自分では以前とそんなに変わらないように思うけれど
周りで見る分にはかなり違っていたようです。


ここまで言われるなんて……
いったい今までどんな風だったのか自分が一番謎ですともさ。


まわりを安心させたようで、とてもうれしかったのです。


正しいことをしている。

そんな気持ちにさせられる。



だいじな相手とめぐりあったんだなと実感しました。




その後、判明したこと。

センセイはセンセイで、同じようなことがあったそうで。


その年初詣で引いたおみくじに
「恋愛:この人より他になし」
と書かれていたらしく……。


おみくじに背中押されたのかしらセンセイ。


それならそれで、神様に感謝なのです。


もし、そんなことはないと思うけれど、
万が一センセイと仲良くなくなってしまった時には
神様に文句つけにいこうと思います。



おたがいが他にない、という状態でのスタートでした。


いろいろ大変だったけど、この人と出会えてよかった、という気持ちがとても大きい。


こういうのって、大事なことだと思っています。

はじまりました、恋愛期。


おそろしい……



正直に申告します。

かなり……

いや、もうめちゃめちゃ、らぶらぶでした。


どこに出しても恥ずかしくない
バカップルぶり。



知人にはみせられん。
マジで。


手をつないで歩くのはデフォルト。


一日とおかず、会いたい。




人目のあるところでえっちなことをしなかったのは
なけなしの理性の賜物だと思われます。



いい歳なんスよ。
いい歳なんスよ、ふたりとも!



そういや、あの時期ヘンにもてました。

モテ期、到来。


なんで彼氏ができてから!?
来るならその前に来てよ、もー!


恋愛対象にされるだけじゃなくて
男性全般に受けがよくなったようでした。


女性ホルモンが漏れ出てたのかな?


事務所の中で動きやすくなりました。

発言力も1.5割増(当人比)。


今まで、仕事において

女だということであまり得をした記憶はありません。


とっても男社会の業種なのです……。


こういう場所で男性にかわいがられるのは
すんげぇ楽!


書類とってきてくれるし

にっこり笑えば多少のムリ聞いてくれるし

お茶ひとつ入れるだけで「ありがとう」だって!


今までの事務所ではあり得ない光景。

(待て、その方が異常じゃないのか!?)




はじめて知りました。

つーか、女性力が強い人は、いっつもこんな楽してるのか。

スゲー、スゲーよ女性力。


ちょっと自分の過去を振り返りつつ、
女性力を磨いてこなかったことを後悔してみたりする今日この頃なのでした……。


観覧車でドキドキ(in恐怖)

ジェットコースターでワクワク(in享楽)。


あのときは深く考えていなかったのですが、
後になってみると


あれは「つり橋効果」をねらっていたのでは!? 



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「つり橋効果」


つり橋の上で上で出会った男女は
通常の状態で出会った男女に比較して

お互いに強い好感を覚えることが
実験で確かめられている。


これは、つり橋の上という恐怖によって上昇した心拍数を
恋による心拍数の上昇と錯覚することによるものである


という説である。

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ええと……
確かに、ジェットコースターから降りたとき、私浮かれてました。


ずいぶん乗ってなかったので、興奮してるんだと思っていたのですが。




謀られた!?




策に嵌まった私は、うかつにも、
自分から告白までしてしまったのでした。


日曜、昼下がりのドライブ中。


自分の中のぐにぐにした気持ちを伝えたい。

でもちゃんと言葉にならない。


そのぐにぐにを、ぐにぐにしたままセンセイにぶつけていた時


ふいに

「つまり、お前は俺のことが好きなんだな!?」
と、強い口調で言われ。


「だからそう言ってるじゃない!!」
と、どなり返してしまいました。



……………………。


なんだなかー。

全然ロマンチックじゃないよなー。



ちょっととほほな、センセイとの恋愛のスタートなのでした。

観覧車と、ジェットコースター。

このふたつにしてやられました。



私は高い所が苦手です。

ある一定の高さから下をみると、
お尻がきゅーっとなります。

犬にたとえると、尻尾が丸くなってお腹の方にまわっちゃう感じ。




センセイは私が高所恐怖症の気があると知りつつ、
小説教室の課外実習。


センセイと一緒に、楽しく観覧車。

楽しく。

楽しく、


た、楽しむ前に怖い……
やっぱりお尻きゅーっ。



ちなみに実習のテーマは
「俯瞰を学ぶ」でした。


観覧車から見える光景を描写するための実習。


内容はわかっていても、
怖いものは怖いんだよぅ……。




それから間をあけず、
ジェットコースターに連れていかれました。


授業の息抜きに連れ出してもらったのですが

センセイのリクエストだったことを覚えています。



ジェットコースター、大好き!
何度乗っても、あきません。


ひさしぶりに乗るジェットコースターに、私の方があきらかに喜んでました。



このとき、すでに策に嵌まっている私……。


気づこうよ、さすがにさぁ……。

最悪の春をむかえて、
ずっとうつうつしてる私。

なんだか暗~い人になってました。



お外に遊びにいかない私を陽にさらそう。

センセイはいろいろなところに連れ出してくれました。


なぜなら小説の授業もままならない状態だったから……。


「生徒のコンディションを整えるのも、先生のお仕事」
なのだそうです。




遅咲きの桜。

たくさんの子犬や子猫。

おいしいお茶。

映画や本。

静かな神社。

観覧車や、ジェットコースター。



遊びに行ったとおもいきや
そこにまつわる宿題が出ることもありました。

いちおう授業なのですね。
むぅ。


しかしこの連れ回しが私の気分を変えていくのです。

いまにして思えば、嵌められた感がぬぐえません。


そうです。

彼氏と別れるときに策士さまを紹介してくれたセンセイ。


センセイ自身もまた、策士であったのです。


策士が策を練らないわけがない。



そのことに気づくのは、もうずっと後になってのことだったのでした。


003




彼氏と別れて、こころずたぼろ。

それまでのストレスで、体ずたぼろ。


世間は春。

GWを謳歌している人々の中で、孤独に過ごすはずでした。




そんな私を、つれまわしてくれたのは、センセイでした。


センセイは小説の書き方を教えてくれる先生です。


センセイとはアルバイト先で知り合い、もう六年にもなる長いつきあい。



が。



初見えの感想はおたがいろくでもないものでした。

バイトのメンバーで飲みに行った際、センセイは遅れてやってきて

来るなり、愛想をふりまいて場に溶けこんでました。

おそるべしコミュニケーション力。



私の感想といえば

「そつないなー。
誰と仲良くすればいいのか、場所よく見てるな。
面倒みなくてよさそうだ」
(↑なんて不遜な……)



センセイはといえば。

「こいつさえ押さえておけば、他の女性たちとそつなくやっていけるな。
それにしても、うっかりするとぱっくり頭からかじられそうだ」
(↑なんだとコラ)




あの頃は生意気ざかりだった私。


おせっかい&無神経だったので、男の人に物怖じすることなく、お仕事してました。


そんな私とセンセイは、おたがいに便利だなーと思いつつ友好的にお仕事をしてました。



長いこと一緒に働いていくうち、距離は少しずつ縮まり


バイト仲間と遊びに行ったり

センセイから彼女の話をきいたり

私の彼氏に対する相談をきいてもらったりするようになってました。



あの頃は、まともに作文も書けないくせに小説を書きたいという私のわがままについて、
小説の書き方を教えてくれる文章の先生でもあったのです。


先生業を引き受けてくれたときには、おそらく、日本語の書き方から教え直さねばならないとは思ってもいなかったことでしょう。



いまだにけっこう不自由しながら書いてます。


てへ。
ごめんね先生。
まだまだよろしくね。





母入院。
しかも、ガン。



ガーン。


そんなつまらないシャレを言ってる場合ではありません。


命にかかわるとか言ってるし。

あわあわあわあわどーないしょー!!




どないもこないもないがな。

できる限り、母のためになることして、
なんとか手術成功してもらって、
生き延びてもらわなあかんがな!




そんで、やっと気づきました。



私、お母さんになにもしてあげてへん!


娘をもった母としてのしあわせ、なにもあげてへん!




具体的に言うと、

1 結婚してへん
2 子供つくってない
3 かといって一生食っていけるような仕事もしてへん。


ガーン。

だからシャレ言うてる場合じゃないし。



けったいな彼氏と一緒におって、体壊してる場合じゃないがな。


しっかりしなさい、自分!


両手で頬をはたいて、鏡とにらめっこして。

やっと、しゃっきりしてきました。


ちゃんと前見て歩かないと。
自分のこと、自分でしっかり面倒みないと。


そんな当たり前のことを、やっとマジメに考えはじめました。




それからいろいろ、いろいろ、ほんとーにいろいろと考えて、
こんな結論出してみました。



使えん彼氏は、ほっぽりだす!




それから一ヶ月後。

まだまだ寒い春の夜中、カバンひとつでほっぽりだしてみました。


あれはちょっとむごかったよなぁ。




しかし策士様によれば
「そこまでしなければ相手に伝わらない」
とのこと。


確かに、すんごいショックを彼氏に与えたようでした。

その後の別れがとてもスムーズ。


そうか、あれぐらいしないと分かんないのか……。


自分の甘さを思い知る春。




策士様には、大変細やかなレクチャーをいただきました。


それはもう……

一般市民をグリーンベレーに一夜で変えてみせるがごとき。
すばらしきレクチャーでした。


ありがたや、ありがたや。




愛犬が死んで

母が入院

彼氏と別れる。


全て誕生日前後に起こった出来事で

ここから人生が大きく変動していくことなど
予想もつかない涙涙の春でした……。