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Takehito Kimura(木村 健人)のブログです。

~第2幕~

<規則 ~2080年>
1. 肉体消滅・脳アップロード後、一旦電脳世界の住民になったら、再び物質世界へ「降臨」することは禁止とする。

2. 資格が与えられた夫婦のみ、「子孫」を残せるものとする。

3. いかなる理由があっても、物質世界に身体を残しながら、あるいは自殺をする形で脳のアップロードをしてはならない。

•規則を破った者は、厳罰に処せられるものとする。
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 「今日もお仕事おつかれさま。」
 「ああ、ありがとう。そっちも調子はどうだい?」
 「野暮なことを聞くのね。私はいつも元気よ。」

 3年前、不慮の事故により物質世界での死を迎え、電脳世界へと移り住んだ麗美との会話は
真一郎の脳へ直接語りかけてくる。こちらも、わざわざ声にして発する必要はない。
 
 「そういえば音斗也は元気?」
 「ああ、元気だよ。そろそろピアノレッスンから帰ってくる頃じゃないかな」

 そう、2人の間には、息子がいた。もう10才になる。しかし、この息子が如何にしてこの物質世界に生を受けたかは、AD2000年前後の世界の状況とはかなり異なる。

 2020年以降から徐々に、人類は従来の方法では子孫を残せなくなってきた。それには複合的な理由が述べられている。少子・高齢化社会、食汚染、電磁波、ワクチン、etc... そして何より、その頃から始まった国民総管理体制が完成を迎えた末、子孫を残せる人間も選ばれた者のみとなった。徹底的な遺伝子検査の末、合格した男女のみが子孫を残せることとされた。

 多くの人間の生殖能力が退化した2080年、厳格な検査に合格した男女双方の遺伝子は電脳世界上で掛け合わされ、国が厳格に管理している「最後のアダムとイヴ」コミュニティ内で生まれる胎児へとダウンロードされる。この様な方法は当初、倫理的な議論も当然巻き起こったが、人類存続の為にはと、最後には反対派も沈黙を余儀なくされた。しかしながら、その「最後のアダムとイヴ」コミュニティ内でも、生殖能力の退化が進んだ結果、いよいよ政府も「完全に電脳世界でのみ存在する子孫」を認可せざるを得なくなってきた。選ばれた男女夫婦の遺伝子を電脳上で掛け合わせ、電脳上で誕生した後は、物質世界で実体を持たないこと等いくつか違いはあるにせよ、1人の人格として認められ、歳も重ねていく。

 そう、真一郎と麗美は10年前、特別な遺伝子テストをクリアした数少ない選ばれた男女だったのだ。電脳上での的確な計算によって掛け合わされた2人の遺伝子が生んだ音斗也の遺伝子は、バグでも無い限りは精巧な計算の結果である。いわゆる「トンビがタカを生んだ」という様なかつての諺ももはや通用しない。2人の息子、音斗也も例外ではなく、驚異的に優秀だった。

 2077年当時、誰もが羨む家族を営んでいた中、麗美は突然の事故により物質世界に別れを告げた。幸いなことに脳は無傷であったのでアップロードは出来、電脳世界への移住が可能となった。
それから3年。このまま現状を受け容れて電脳上の麗美、物質世界上の音斗也と暮らし続けていくものだと漠然と思っていた・・・

(続く)