京都の着付け教室 きものシャン
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こんにちは 京都の着付け教室 きものシャン 講師の原 です。
この話何度もしていますが、着物は買ったあとに仕立てという加工の段階があります。
その際に、仕立て代というものが発生します。
仕立て代込みになっている場合は、別ですが、仕立て代を購入者が別途払う場合、いくつかの選択肢を提示されることがあります。
代表的なものに、手縫いかミシン縫いか?という縫製のオプションがあります。
ミシン縫いの方が安いため、金額上のメリットがあります。
これは見たら誰でもわかる差、ちょっと賢い子なら幼稚園児でも理解できる話です。
ただ、ここから生まれるデメリットがないのかどうか、そこは知識のない人には心配ですよね。
Google検索してもなかなか事実に沿った話で、わかりやすいページがみつからなかったのが現状。
ミシン縫いのデメリットにはいくつかありますが、なかなか決定的にわかりやすいものではないため、実際に私が経験したことを踏まえて、まとめてみます。
メンテナンスの際の違い
ミシン縫いにしてしまうと、やはり生地に針穴が残るので、それによって仕立て直しが出来ない場合が発生するということが長らく言われてきましたが、
いまのハイテクミシンの技術であれば、仕立て直しは出来る前提で縫われています。
ただ、手縫いに比べると解くのがかなり大変であったり、それなりに生地に負担がかかるなどの制限がつくことがあります。
そして着物については、必ずクリーニングとの兼ね合いがありまして、ドライクリーニングをガンガン頻繁に行うと生地が痛むということから、
特に高級な紬などの風合いを重んじるものについては、ドライクリーニングはほどほどに、染み抜きをして、年数が経ったら洗い張りという選択肢があります。
紬以外においても、長く着る人生の中で数回は洗い張りするでしょうし、また別のアイテムに仕立て変えたり、体型の変化や着付けの好みの変化によって縫い直したいというシーンも意外と多いものです。
逆にそうでなければ、手縫いはもったいないといえるでしょう。
つまりこれはメリットとデメリットをどう捉えるかという視点の違いです。
たくさん回数を着てクリーニングもして、着たおしてそれだけで十分に元がとれるという人にとっては、ミシン仕立ては大変にメリットがあります。
ミシン縫いも素晴らしい技術の上に成り立っています。なかなかスゴいですよ。
また数回しか着ない予定の人で、その後のことは特にノープランである場合、初期費用を抑えたいというところでミシン縫いという選択があるかと思います。
分業制のデメリット①
こちらもわかりにくいことなのですが、ハイテクミシン仕立ての場合、ミシンで行う作業と手の部分と分業になります。
これはミシン仕立てに限らず、手縫いでも分業にしているところがあります。
効率よく仕立てることができて、合理的に見えますが、やはり縫い目の癖というものが生まれますから、一貫して同じ職人が1着仕上げるのが理想的な着心地、シルエットとなります。
一流と言われる和裁所さんでは、一人の職人による一環工程を売りにしておられることが多いです。
分業制のデメリット②
まだまだ和裁の仕立ての世界では、手縫が主流であるため、ミシン仕立てに特化したお店でないかぎりは、手縫よりもミシン仕立ての方が納期がかかることもあります。
特に手縫いの職人さんを育てているような、伝統的な和裁所さんではその傾向にあります。
縫い目への負担
着物の構造上の問題のひとつに、縫い目の生地にかかる負担をどうするのか?というものがあります。
着物を着るシーンは多くありますが、撮影やパーティなどで短時間着るだけの場合をのぞけば、立ち座りの際に着物の縫い目のあるところに負担がかかります。
手縫いの場合、糸に適度な緩みがあるので、縫い目に沿って生地にかかる負担を最小限に抑えてくれます。
また強く引っ張られたら、縫い糸の方が切れるため、生地が破れるというような心配もほとんどありません。(力のかかり具合によっては、生地が破れるというのも0%ではありませんが、普通に着ている限りは大丈夫です。)
ミシンの場合はやはり縫い目が強い分、生地に負担がかかります。
着心地に影響する場合がある
これは私が1番強く実感したことです。
ただ、着慣れていない人や着付けがそもそも得意でない人だと差がわからない場合もありますし、実感の度合いが生地によっても少し違います。
とはいえ、やはりミシン縫いのほうが縫い目の硬さが感じられ、手縫の着心地とは違いがあると言えます。
わかりやすいのが肌に近い、浴衣です。
私も実際に浴衣をミシン縫いにしてみて、やはり手縫いとは全然違うな、と実感した次第です。
着物ファンとしては着心地の良さって着物を着る理由のひとつでもあるので、特にカジュアル着物ユーザーさんには知っておいて欲しいポイントです。
私が思う、いちばんの問題点
正直なところ、私が思ういちばんの問題点は、たまに このメリット・デメリットをうまく伝えられていない着物屋さんがおられるということです。
何か違いはありますか?とお客さんから聞かれて「ほとんど一緒ですよ」
とだけおっしゃっているの聞いたことがあります。
逆に「何か違うんですか?」と着物屋さんから私が質問されたこともありますし、
仕立て直しの話をしたら、「いまどき洗い張りなんてする人います?」と聞き返されることもありますし、着心地の話をしたら、「先生だから感じるんじゃないですか。普通の人は分からないですよ。」と断じたり。
まあ結論として、安い着物だからミシン縫いを提案されるんですけどね。
地機の結城を買った人にミシン縫いしますか?なんてアホなこと聞く着物屋さんはいませんから、お店側も大きくは間違ってないんです。
こういう細かい説明がない着物屋さんって、もともと卸業メインで商売されてきたのを最近になって小売を始めたようなところに多いですね。
置いている商品も悪くないし、お値段も良心的だけど、最後の最後でもったいないなぁと思うパターン。
そして安い着物だからといっても、安い高いというのは、買った人にとってはまた違う価値観かもしれないじゃないですか。
たとえヒトケタ、8万円くらいの着物でも、特に初めて買う人ならそれなりに考えて思い切ったぶん、大切に長く着ようと思ってらっしゃる場合もあるでしょうし、工夫をすれば実際に長く着られます。
そもそも着物は一生ものだと世間ではイメージを持たれているかと思います。
ユーザーにとってのシルクロード
これはガード加工についても同じことが言えます。
風合いは変わりません、と売り場で行ってはおられますが、織元・メーカーの人間から「加工後も風合いは同じ」だという話は聞いたことがありません。
むしろ「ぶっちゃけ絹の化繊化と言っても過言ではない」くらいに認識しています。そこを考えてもメリットがある場合に行われるのが、ガード加工です。
なので、加工については、もう少し消費者の皆さまが理解して、こうして欲しいと自分の要望を出せるようになって欲しいですね。
ぜんぜん難しいことではありませんから。
みんな買うまではアレコレいうのですが、購入が決まったら安心するのか、丸投げする人が多い。
商品選ぶときにパーソナルカラーがどうだこうだと、あんだけぎょうさんいろんなこと言うてはったのに、八掛の色選びになったら突然お店まかせにする人とかね笑。
本来は丸投げして納得できるのが1番良いのですが、なかなか結構その辺細かいところまで説明が行き届く着物売り場は少ないです。
本来はお店とお客様が長くお付き合いする中で、お客様はお店側からいろんなことを教えてもらいながら、選択肢を広げたり狭めたりしながら、自分のファッションセンスを育てていくものです。
でも今どきそんなの、ごく一部を除いてはファンタジーに近いことだから、うちのような着付け教室がそれに変わってやっているわけです。
繭から糸へ、糸から織物へ、そして織物が皆さまに愛される着物となって手元に届くまでがユーザーにとっての「シルクロード」だと私は思っています。
やはりお召しになる人自身が加工について理解した上で選ぶという姿勢が、いまの世の中求められているのではないでしょうか。
加工の際に気にするポイントを知るだけでも、着物に対する満足度、QOLが爆上がりしますよ。
新品を仕立てる際だけではなく、リユース着物を買われる際にも注意したいところですね。
最後までお読みいただきありがとうございました。