こんにちは 京都の着付け教室 きものシャン 講師の原 です。
梅雨の時期ですので、ちょっとタイムリーに今回は「カビ」のお話です。
生徒さんからヤフオクお買い物の相談を受けて、お品物サイズや他の類似商品をチェックしていたところ、
ふと目にとまった生紬の袋帯。
あらかわちいわねー笑 ということで、気軽に入札してみました。
確か5000円くらいだったので、とりあえず1万円を入札して放置。
帯は必ず畳み位置や柄位置(全長と畳み位置から推測)、お仕立て(縫い代の処理)など確認しますが、今回はいずれも問題なくOK。
色やけがある旨の注意書きがあったので、届いたら「色やけ直し」の記事でも書こうかしら...というイメージでした。
しかし画像では色やけって確認できなくて、どのあたりのことを言っているのかしら...という感じでした。
※生徒さんが買われる場合は、ヤケなども含めてダメージのあるものはおすすめしていません。
カビです
8000円くらいで落札されていました。
届いて開けてみると、なんと、色やけではなく白カビ^^;
全体に広がっていました。
カビの見分け方
しかしながら、この記事を読んでおられる人のなかには、以下の可能性が浮かぶ人もおられるかと思います。
・染めムラ
・糸汚れ
・ゴミの織り込み
・後から付着した汚れ
まずこれらについて、カビとの違いを明確にするために書いておきます。
染めムラというのは、このような紬地によくあるもので、均一に染料が浸透しておらずムラになるというもの。ひどいものでなければ、商品の特徴、つまり「味」のひとつとして受け入れられます。
糸汚れはその名の通り、製織の段階で糸が汚れてしまったものです。染め帯ではなく、先染めの織の帯の際に考えられますが、織元のチェックで直らなければ、不良品として流通しません。
ゴミの織り込みも、製織の現場で起きることです。機場のなかで、なにか、ホコリ・チリ、ゴミのようなものが織物に織り込まれてしまうものです。
ただこれも染め帯の場合は、そもそも生地の段階でチェックされますから、今回の帯については、そのままということは考えにくいです。
後から付着したよごれについては、食べこぼしや化粧品などの汚れです。これらは品物として流通した後のことだと考えられます。
さて、これらの白い汚れが白カビかどうかの判断はとても簡単です。
その表面の白いものを払い落とすように、ブラシや固く絞ったタオルで擦るだけ。
今回は、お風呂より少し熱い温度のお湯でにつけて、絞りました。
なお、やる時は換気の良いところか、出来れば天気のいい日に家の外でやることをおすすめします。
あとマスクもしましょう。人によっては喘息のような状態になることもあります。(私もホコリや動物の毛がとても苦手なので、マスク着用でやりました)
タオルはめちゃくちゃ全力で固く絞って下さい。
さて一方向に向かって、払い落とすように擦ります。
この黄色の丸印のところにご注目ください。
上述の
・染めムラ
・糸汚れ
・ゴミの織り込み
・後から付着した汚れ
については、タオルでサッと払い落とすことは当然できませんから、このように簡単に汚れが取れた時点でカビであることがわかります。
また、タオルで払い落とすことが出来なかったくらいに繊維の中に入り込んでいたカビは、歯ブラシを使ってみると、これまた簡単にサッと落すことができました。
※あくまで見た目のことです。これでカビ落とし一件落着ではないので、記事の最後までご確認ください。
顕微鏡で見てみましょう
通常、ゴミの織り込みや糸汚れを直す時は、10倍程度のルーペでいいのですが、今回はカビの様子を見たいので60倍の倍率の高いものを用意しました。
カビの見えないところの拡大図
カビが見えるところの拡大図。
糸のなかに入り込んでいる白カビの様子が見えます。
いや〜拡大すると神秘的ですね。
どこまで気にする?日本のカビ事情
顕微鏡で拡大した図をお見せした理由は、興味本位でなく、実際問題、カビによって繊維が侵食されている状態を知っていただきたかったからです。
元気な状態の糸と違って、このようにカビが入り込むことによって長く放置すると、生地が弱ったり変色したりとダメージが広がります。
なにより他の衣類にも広がる危険性があるので、私は断固としてカビのついたものは家の中に置いておくのは嫌なのですが
何人かの人に聞き取りしたところ、
「ニオイが強くなければ、あまり気にしない」
というリユース着物ユーザーさんが何名かおられました。
このように意外と、自覚症状というか、危機感が薄い人も少なくはないようです。
昔、古物の業者さんの手伝いで、生前整理に伺ったお宅はものすごいニオイだったのですが、ご本人は問題なく生活されておられました。(私は喘息が出ました)
自然界に存在するカビ。
高温多湿な日本で暮らすなかで、何をどこまで気にするかというレベルには人それぞれかなと思いましたが、私は目に見える限りは、根絶派です笑
カビは見落とされる
なお今回購入した帯について、すぐにわかるようなカビのニオイはしませんでした。
むしろ箪笥の防虫香のええニオイしてました笑
購入したものを検品する習慣のない場合、気付かずに使用される人も多いのではないでしょうか?
もちろん購入後に気付いた場合は、返品返金の要求が出来ると思います。
繊維品の売買でここまでしっかり目立つカビについての注意書きがないといのは、クレーム対象になるでしょう。
とはいえ、わからないグレーゾーンもたくさんあるでしょうから、購入前から神経質になりすぎてもリユース品は買えません。
どうかな?と思ったお品があった時には、購入後に、まずドライクリーニングされることをオススメします。
カビは空気中に広く生息しており、そもそもが2~10マイクロメートルと目に見えない程小さいものです。
カビは植物でいう種となる胞子を放出し、この胞子は空気中を漂い、あらゆるものに付着します。
この胞子が定着して菌糸を伸ばし、目に見える大きさまで増殖したものが、普段私たちが目にする「カビ」になります。
このような現実的なカビの事情から見ると、どこまで気にされるのか?については、常に日頃の手入れとともに考えるものだということがわかるかと思います。
それゆえにお手持ちのものも、
・日頃からカビが生えないように注意する
・気付いた時に素早く対応する
ということが大切になります。
簡単なカビ落とし(業者編)
今回の帯については、
・表面に見える白カビ
・帯芯ナシ
というものでした。
それゆえに、まずは自分でカビの確認(この記事に書いた内容です)の後、業者にカビ落としとドライクリーニングを依頼。
信頼できる西陣の帯のプロである「みつやま」に依頼しましたところ、ドライクリーニングとカビ落としで5200円のお見積もりをいただきました。
さらに口を解いて帯芯を入れる場合は、帯芯代と仕立て代です。
これが、芯なしの場合で、見た目にはカビは確認できないが、なんとなくニオイが気になる程度の場合は、シンプルにドライクリーニングだけでもかなりスッキリキレイになります。
芯ありの場合は、帯を開けて芯を確認したらカビが生えていた、という場合があるので少し厄介ですが、仕立て直しを検討される方向で考えられるのが安全かと思います。
簡単なカビ落とし(セルフ編)
表面の白カビだけ、しかも数箇所だけ、という場合は、先ほどのタオルやブラシで自分で落とした後、顕微鏡を使って落ちているかしっかり確認。
そのあと、下にタオルを敷いて、染み抜きの時にやる要領でベンジンでトントン叩きます。
ちなみに私が、このセルフで終わらせなかった理由が二つ。
今回の帯は、1箇所2箇所ではなく約430cmの帯全体に渡って白カビが点在していたのです。
私はクリーニング屋さんではないので、本業の時間を削ってやれないと判断しました。
また基本的にリユースで購入した帯は、かならずドライクリーニングをするようにしているので、どのみちクリーニングに出すなら、という感じです。
線香を炊くと防カビ効果あり
どうやら線香の煙には除菌効果があるらしく、私も着物の部屋でお香を頻繁に炊いています。
お気に入りの香りはかなり色々あるのですが、和風じゃない方が好きな人には、めちゃくちゃオススメなのがこちらです。
知る人ぞ知る、センス高い系お香の最高峰ともいえる DUMBO 365days.
すごい清潔感のある香りで、似たものは他にありません。圧倒的な人気の365days のほか、もう少しチャラい笑 けど品のある Def も私は好きで、365daysと共にまとめ買いをしています。
毎日使うわけではなく、週に2回程度や来客の前など。
着物部屋では、箪笥の引き出しを少し開けて換気がてらお香を炊きます。
25本入っているので、3ヶ月程度待ちますから4つ買っておけばほぼ1年分。
まとめ買いだと1度に金額はそれなりに必要ですが、DUMBO 365daysを使い出すと他の洋風のお香は使えません...。
残り香がすばらしく、帰宅するたびに、うわっいい匂いと自分のお家をもっと好きになれますよ笑
着ることが最大のお手入れ
そして何度も言いますが、着ることが最大のお手入れです。キレイにクリーニングしても、湿度の多いところにしまいっぱなしでは、またカビが生える可能性もあるでしょう。
しばらく着用しない場合も、通気性を気にしてあげることが大切です。
募集中
● リユース着物目利き講座 《着物編》
8/19 土曜日 大阪会場
今後の予定
⚫︎リユース着物目利き講座 《帯編》
9/2 土曜日 大阪会場 (募集開始前)
こちらの募集は8月頃から「はこにわ」オフィシャルホームページにてご案内いたします。
※なおリユース着物目利き講座《レベルアップ紬編》は、京都会場で10月3週目あたり、横浜会場で11月または12月の開催を企画中です。実現に向けて、運営者、会場側と打合せをしているところです。
※対面レッスンしております
(マンツーマン・ペアレッスンのみ。)
鏡(全身鏡)は人数分ご用意して、距離を取っています。
ドアノブや机類など室内のアルコール除菌を徹底しております。
レッスンでは、生徒様にもアルコール消毒、マスクの着用をお願いいたします。