こんばんは
東京の桜が開花しましたね
日中はコート無しでも外に出られる気候になってきましたし、
春が来たなと思って嬉しくなりますね
…花粉さえなければ
さて、今日も試験勉強です
きもの文化検定 問題集2021年版 1級向き試験問題
問3は黒紋付染についての虫食い問題でした
黒紋付染は黒染の製品で、経済産業大臣指定伝統的工芸品に
認定されているのは、「京黒紋付染」と「名古屋黒紋付染」です
まず、京黒紋付染から書きます
京黒紋付染には2種類の技法があります
まずは浸染(つけぞめ)です
その名の通り、生地を染液に浸けて染める技法です
良い黒は黒の色が違うとよく言いますが、京黒紋付染も
黒色に深みを持たせる為に、黒く染める前に下染めをします
それが、藍下(あいした)や紅下(べにした)と呼ばれるものです
藍下はまず青く染めてから黒染めをして、紅下は赤く染めてから
黒染めをします
黒の染料は科学染料で、90〜95℃の染液に25〜30分浸けます
高温で染めることでしっかり染まります
江戸時代には、女性は紅下染めで男性は藍下染めを用いたそうですが、
紅下は関西風、藍下は関東風などともいうようです
ただ、現在は藍下染めが主流のようで
私の働く呉服店でも藍下染めのみで紅下染めはしていません
もう1つの染色方法が引き染めです
引き染めとは、染料を付けた刷毛を引いて生地を染める技法です
京黒紋付染の独特の染色法に「三度黒」があります
植物染料と2種類の媒染剤を染め重ねる染色法で、薬品で酸化させて
黒く発色させるので、染料を定着させる「蒸し」の作業は行いません
手順を簡単に説明しますね
まずは、ログウッドというマメ科の植物から作られた染料で染めます
ログウッドは「血の木」という意味を持ち、
アメリカの先住民族が使用していた染料です
日本には明治時代中期に輸入されるようになり、大正時代から三度黒の
染料として使用されるようになりました
ログウッドに含まれる主成分ヘマチンが重金属と結合することによって
有機顔料となります
ログウッドで染めた生地は、次にノアールナフトールという
ログウッドにさまざまな媒染剤を混ぜた液で染めます
酢酸・シュウ酸・クロム明礬などを加えて加工した
ログウッド還元液です
これで酸化発色させる準備ができます
そして、最後に重クロム酸を引いて酸化させることで
黒く発色します
この重クロム酸の濃度で赤みに発色したり、深みが出たり
しますが、濃度が濃すぎると生地が痛んでしまいます
発色させたあとは、前述の通り「蒸し」の工程は行わず
水元の工程に移ります
ですが、この発色の為に使った重クロム酸は劇薬です
生地を洗った排水をそのまま下水に流すわけにはいかないので、
浄化させる設備が必要になります
そのため、三度黒染めを行っている染色工場は少ないです
三度黒は最後の工程にも特徴があります
最後は薄い膠(にかわ)を通して仕上げます
参照したのはこちら
工芸ジャパン「京黒紋付染」
重クロム酸についてはこちらも
厚生労働省「職場のあんぜんサイト」
そして、もう1つの「名古屋黒紋付染」について書きます
名古屋黒紋付染も、浸染と引き染めの2種類があります
名古屋黒紋付染の特有の技法は、浸染の時に行う
「紋当網付(もんあてあみつけ)技法」です
これは、紋を入れる部分に家紋を型取った厚紙を
生地の両面に貼り合わせ、型紙がずれたり外れたりしないように
型紙の上に直径5cm程の真鍮の金網(紋当金網)を当てて糸で締め付ける
技法です
この技法は天保時代に生まれて、明治時代から現在の方法になりました
それまでは紋糊伏せ技法を使っていたようです
参照したのはこちら
工芸ジャパン「名古屋黒紋付染」
山勝染工株式会社「名古屋黒紋付染とは」
黒染めは、洋服にも使われているようです
色褪せたり、シミが取れない服を黒染めして
生まれ変わらせる活動があります
こちらも是非ご覧くださいね
黒の世界も奥深い
お友達になってください