先日、突然お電話が入りまして、

  「おきものの地色を変えたり

  と言うことは出来るのでしょうか?」と、

  質問されました。

 

  事情を伺うと、

  お嬢様が来年成人式を

  迎えるそうなのですが、

  全くお振袖に興味がなく、

  残念な気持ちでおられたそうです。

 

  ところが、今年の成人式の翌日、

  お婆様からお嬢様にお電話が入り、

  「○○ちゃん。まさか、

  今年が成人式ではなかったわよね?」

  と言われたそうです。

 

  お返事をすると、

  「良かったわ。

  うっかりしちゃったかと思って

  心配しちゃったわ。」

  との事だったそうです。

 

  そう致しますと、いきなり、

  お嬢様は振袖を着たいと

  思う様になられたそうで、

  お母様のお手持ちのお振袖を

  箪笥から出してみたそうです。

  

  そう致しましたら、

  袖と身頃の地色が

  かなり違ってしまっており

  (焼けかもしれません)、

  そのままでは、

  お母様も心苦しいと

  思ってしまったそうです。

 

  そこで、先ほどの質問となった訳です。

 

  ですので、取り敢えず

  おきものと帯と長襦袢をお持ちいただいて、

  お嬢様にお召しいただき、

  どのようにされたいか、

  それが可能かどうかの

  ご相談を承る事に致しました。

 

  拝見させて頂いたお振袖は、

  しっかりしたお品で、

  地色を変えることの出来る

  柄行でした。

 

  ただ、問題でしたのは、

  お嬢様が薄い色に替えたいという

  ご希望だったことです。

 

  これは、職人と相談するしかないと、

  早速、京都の悉皆屋さんに送り、

  意見を聞きました。

 

  お嬢様のご希望に沿うには、

  大まかな柄の部分を糊伏せして、

  地色を気持ち濃い色に変えるか、

  脱色と言って柄はそのままで

  地色をきれいにする(抜く)

  という二つの方法を提案されました。

 

  あとの方法の方が高かったです。

 

  職人が少し濃い色として指定してくれた色が、

  お嬢様とお母様のお気に入りの色でしたので

  (少し濁った薄い金茶色)、

  こちらにしてもらうことになりました。

 

  そして、約一か月。

  

  出来上がりのご連絡を

  させて頂きご覧頂いた時に、

  お二人とも、とてもお喜び頂けました。

 

  そして、是非、

  職人さんにもくれぐれも宜しくお伝え下さい。

 

  とのことでしたので、

  その旨伝えると

  「そう言っていただけると、

  仕事のし甲斐がある。」と、

  職人さんにも大喜びしていただけました。

 

  基本は、お客様が、

  職人の腕を信じて任せて下さること。

 

  そして、お客様の意向を、

  職人にいかにきちんと伝えるか

  と言う事にかかってくると思います。

 

  今の時代、医者に行っても

  歯医者に行っても最悪の場合

  こうなりますああなりますと、

  色々書かれた文章にサインをさせられて、

  控えを持たされたり致しますので、

  やってみないとわからない

  お仕事をお受けするのは、

  大変リスクが大きいことです。

 

  ですが、このお客様は、

  まず、信頼してくださいましたし、

  そのようなお仕事が少なくなっている中、

  職人に任せて下さいました。

 

  そして、職人も、

  その期待に応えるために

  万難を排してくれました。

 

  心が洗われる気持ちでした。

 

  これから、

  パールトーン加工をして

  お仕立に取り掛かり、

  秋に小物を合わさせて頂きます。

 

  来年の成人式が楽しみです。

  

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