ある親子様が、

  お母様の派手になってしまったおきものを

  お嬢様用に直したくてお持ちになられました。

 

  お品物は、良いものばかりですが、

  お嬢様の手がとても長いため、

  どうしても、

  ご希望の寸法に直すことが出来ません。

 

  お持ち下さる度に、

  出来る限りでとおっしゃるのですが、

  どれもご希望の寸法に出来ないことが

  心苦しくて仕方がありません。

 

  新しいお品を勧めたくて

  出来ないと言っているのではありません。

 

  裄が、一尺八寸以上の方のおきものは、

  古い反物では作れない場合が多いのです。

  

  たとえ布巾があっても、

  柄がつながらない場合もあります。

 

  その場合は、仕立ててから、

  柄を足します。

  

  その上、お嬢様方は、

  たいがいとても細くていらっしゃる場合が

  多いのです。

 

  細いと言う事は、肩巾が無くて、

  手が長いために

  裄が長い方が多いのです。

 

  しかし、きものの場合、

  反物を横に並べてその幅で

  裄を作りますから、どうしても、

  肩巾も広げなくては、

  長い裄に対応できません。

 

  昔の反物は、

  幅が九寸~九寸五分のお品物が

  ほとんどです。

 

  縫い代をほんの数ミリにしても、

  難しい話ですが、

  今の反物は尺巾の物から尺五分の

  お品物まで出ております。

 

  ですから、細いお嬢様の場合、

  袖巾で一杯に取って、

  肩巾を狭くすることも可能になります。

 

  しかも、今のお嬢様方は、

  お洋服に慣れておられますので、

  裄も昔のように短めよりは

  長めにしたいご希望があります。

 

  その場合は、やはり、

  新しいお品物にしていただくしかありません。

 

  そして、派手になってしまったおきものは、

  地色を替えたり染め直して、

  お母様にお召しいただくしかないと思います。

 

  当店では、出来る限りお客様の

  ご要望にお応えするように社員一同に

  教育いたしております。

 

  出来るのに出来ないなどとは申しませんが、

  たまに、出来ないお品物まで

  出来ると言って

  お預かりしてしまう事があります。

 

  これも、大変申し訳ないことです。

 

  いつも、お話しいたしますが、

  おきものには、

  手をかけた方が良いお品と

  かけない方が良いお品がございます。

 

  手をかけてしまう前に、

  ストップをかける最終砦は、

  当店の加工部です。

 

  ですので、ごくたまに、

  お預かりしたにもかかわらず、

  そのままお返しさせて頂く場合も

  ございますが、お許しくださいませ。

  

  お着物のご相談は、きもの蔵人みやもとまで