黒の紋付の羽織というものが、
先代からの残されたタンスの中に一枚や二枚はあると思います。
日常着が着物だったころ、子供の入学式や卒業式、
あるいは、急なお通夜の席に駆けつける時、
普段着の上に、さっと、それを着れば、正式と見なされました。
抜き紋のものの方が縫い紋のものより、
より、正式と見なされました。
これの再利用の方法ですが、前提がございます。
羽織というものは、きものの上に来ます。
今の方は、手が長くなってきており、昔の反物では、
その方にピッタリの裄に着物を作るのは、
布巾一杯に使っても足りない場合があります。
きものでそうなのですから、上に羽織るものは、
それより、最低二分、つまり、
五ミリメートル位長くしなくてはなりません。
つまり、昔の反物で、一杯に仕立てなくてはならない程の裄の方は、
羽織の作り直しで、上に羽織るものはおつくりいただけません。
最近は、流行ってきたとは言っても、
あまり羽織をお召になる方はおられません。
ですから、羽織のリメイクの一番早道は、
道行コートに直すことですが、以前申し上げましたように、
ここでネックになるのは、紋です。
昔の紋付の羽織は、一つ紋、三つ紋、五つ紋とあります。
縫い紋でしたら、解けばよいのですが、
抜き紋ですと、紋を消さねば、コートにはなりませんが、
これがきれいには消せません。
裄が短い方ならば、背紋は縫い込むことができます。
逆に、裄が長い方は、それが出来ませんので、使いまわしができません。
ここで、活躍するのが、金加工です。
刷毛ばきといって、
刷毛でしゅっと横に描いたように柄を置くことで紋を消すのです。
わざとらしくならないように、
紋以外のところにも加工するのがポイントです。
今回は、この方法で、格のある名古屋帯をお客様がお作り下さいました。
とても素敵にできました。
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