最近、たまたま、お留袖のお直しを、お二人様から承りました。

 

どちらも、先代のお留袖を譲るという形での作り直しです。

 

お一人のお留袖は、地色が黒であったのに、

 

下に染めてあったが戻ってしまい、

 

少し、茶色っぽくなっていました。

 

そこで、色揚げをさせていただくことにしました

 

色揚げとは、柄はそのまま生かして地色を元の黒に戻すことです。

 

今回お預かりしたお留袖は、柄の周りがぼかしてありましたので、

 

元のぼかしも生かさねばならず、少々苦労したようでした。

 

尚且つ、紋も今のご紋と違っておりましたので、

 

この機会に、今のご紋に直させていただきました。

 

出来ばえは、なかなかの上がりで、本当にきれいに仕上がりました。

 

もうお一方のお留袖は、地色はきれいだったのですが、

 

お母様のお若いときのお留袖でしたので、

 

今度お召しいただくお嬢様のご年齢からすると、

 

柄の中の菊の部分のが気になるお留袖でした。

 

そこで、今回はその朱を茶に変えてもらうことにしました。

 

      

この色がこんなになったのかと思うほど変わります。

 

今回の朱を茶色に直すのは、解かずに済みましたが、

 

一旦解いて反物状に戻さねば出来ない場合もあります。

 

しかし、新しいお着物をご購入になられても、

 

基本的には仕立て代がかかるわけですから、

 

直して出来上がったお着物を、新しく購入したとしたら、

 

その直すためにかかったお代でご購入が可能かどうかを

 

天秤に乗せていただくと良いと思います。

 

もちろん、以前にも申しましたように、その前提として、

 

直そうとしているお着物が、生地がしっかりしているかどうか

 

直したら本当にきれいになるのか

 

尚且つ、直しても着たいと思う柄なのかどうかが大切です。

 

嫌いなものは、やはり、せっかくお金をかけても、着ないものです。

 

また、生地が余りに薄いものは、染めに生地が耐えられませんから、

 

やめておかれたほうが良いと思います。

 

もうひとつ大切なことは、信頼関係です。

 

例えば今回のように、朱の部分を茶にすると言っても、

 

どんな茶にするかは、ある程度、私や職人を信じていただかなくてはなりません

 

あと、感性が近いかどうかも大切です。

 

もちろんお客様は、

 

私どもを信頼してくださるからお仕事を任せてくださるのですが、

 

が美しいと感じるものをお客様も美しいと感じるとは限らないということです。

 

いい出来だと私がどんなに思っても、

 

なんて着物にしてくれたんだとお客様が思わないとは限らないということです。

 

いつもそのことは、頭においてお直しを承っているつもりですが、

 

常に謙虚にならねばなりません。

 

ただひとつ、私がこれはだめだと思うものを

 

お客様に見ていただくことはだめだということです。

 

もしかしたら、これでもいいとお客様はおっしゃるかもしれないと、

 

不満足なものをお客様にお見せしてよい結果になったことはありません。

 

私が、これならと思うまで、何回でも直させます

 

その上で、お客様の了解を得るようにしております。

 

ですから、お直しというものは、思った以上に時間がかかります。

 

そこのところも、皆様にご理解いただけるとありがたいと思います。

 

今回承ったお客様も、私を本当に信じてお任せくださって、

 

ありがたいことだと思っております。

 

   

 

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