ある日、きれいなお嬢様とお母様がご来店になりました。
成人式にはまだ早い、かわいらしいお嬢様でした。
聞けば、来年お姉さまが結婚されるとのこと。
その時にこの着物を着せたいのですが、と出されたお着物は、
七歳のお祝い着でした。
お嬢様はすでに十五歳。
細いお嬢様でしたが、やはり身長は高くなっておられましたし、裄も身幅もぜんぜん違います。
ただ、お品物は良いお品で、このまま捨ててしまうのにはもったいない感じでした。
そこで糸をほぐしてみると、
身丈はいっぱいに伸ばして、帯の下になるところに布を足せば、何とかなりそうでした。
裄も一杯にすれば何とかなりそうですが、
肩の部分と脇の部分で柄が描かれていない部分が出てしまうため
見た目におかしなことになってしまいます。
そこで、みやもとの母が言い出したことは、
「そこに柄を足しましょう」でした。
そんなことができるのかと、私はびっくりしました。
また、七歳用の帯は大人の帯に比べると細いので、
いかんせんお嬢様は背が高くなっておられましたし、そのままでは結べません。
そこでまた、母が考え出したのは、
帯の左右に黒い朱子を足し、普通の袋帯の幅にしてしまうことでした。
昔のお染帯のような帯です。
本当に出来上がるのだろうかと心配になりながら、
私も楽しみにしておりました。
しばらくして、お着物も帯も出来上がりました。
肩や脇に柄を描き足したなんて、まったくわからなくなっていました。
(柄足し前)
柄足し後
今 、私はその技法を利用して、
落とすことのできないしみや隠したい紋の上などに
着物の中にある柄を足したり、金霞を施すことで、
お着物を蘇らせております。
着物ってすごいなあ、と感動いたしました。
お着物のご相談は、きもの蔵人みやもとまで