心に吹く風。



乾いた暖かくてほのかな香りを放つその風が

そろりと中に入っては、

私の奥深く潜んでいる内側から外側まで、

薄い桜色に染めて、

嬉しくて体をよじらせると、

淡い黄色になって、

私は、満足していると実感する。

周りの景色が変わっても、

気温が急に冷たくなっても、

内なる温度が変わらない。

それが、氷のように冷たくても、

溶かせる自信がある手を躊躇いもなく翳し、

私の周りで私の空気が堂々と流れている時間。

時間が微笑みながら、私の周りを回っている。

回っている時間を私が必死に追い掛けるのではなく、

時間が飛び跳ねながら、興味深そうに私についてくる。

私は思わずはにかむ。

そういう時間が最近増えた気がする。

それで満足。

最近全然泣いていない。涙腺ってば緩みもしない。

涙腺ってば、なぜにそこまで頑固なのか。

私は本当に泣かなければならないとき、

心の中心で泣き叫んでいたら、涙は頬を伝って落ちるのだろうか。

泣くときのタイミングが最近分からない。感覚を失いつつあるのか。

映画を見ても、「ここが泣く場面だ」と意識しないと悲しい感情が込上げて来ない。

私のどこかの感覚が、他の配線に繋がっていないかい?

困った涙腺。

強くなりすぎたんだよ、と友達に言われたが、私はそんなこと微塵も思わない。

強くなりすぎていけないことなんかない。強くなることは、やさしくなること。

このまま暖かい風に抱かれて、ほっとして、腕を広げて掴める幸せを抱く。

それで、ほろりと泣きたいだけなの。

強くなることはやさしくなること。


人の痛みをわかるようになること。

経験の分、痛くて傷ついた分、阻害された分、打ちのめされて胸に痞える思いを一人で抑えた分、人を傷つけて後悔してしまった分、努力が報われなかった分、


人は強くなる。


当たり前の言葉、それが真意になる美しい瞬間。