[ジャカルタ 2日 ロイター] インドネシアの首都ジャカルタ郊外のテベトは、10万ドル(約800万円)規模の家々が並ぶ地区。しかし、その赤い屋根瓦のバンガロー前の小道では、住宅価格に匹敵するメルセデスベンツやBMWなどの高級輸入車が目につく。
ジャカルタ中心部や富裕層が住むエリアでは、しゃれたイタリアの改造車や英国の高級車ベントレーなどが走る。
高級車の所有は、同国中産階級の所得向上の象徴であり、鉱山や投資ブームで膨れ上がった資産で、誉れ高い高級車を購入したいとの願望が生まれていることを表している。
ナイトクラブやバーを経営する会社で働くSabam Rajagukgukさんは、これまでトヨタのスポーツ多目的車(SUV)に乗っていたが、最近になってランドローバーのディスカバリー(19万ドル)に買い替えた。
「道路を支配したような気分にさせてくれる」と話すRajagukgukさん。「みんな、他人からどう見られているか気にしている。レンジローバーは富裕層が持つ平日用の車だ」と語り、「週末用の車は天井知らず。20代の若者がランボルギーニでクラブにやってくることもある」と明かした。
ジャカルタでは、最高120万ドルするランボルギーニのスポーツカーの納車が、半年待ちの状態だという。1990年代にスハルト元大統領の息子が買収したこともあるランボルギーニは、長く同国でのステータスシンボルだった。
<自動車メーカーが投資拡大>
独高級車メーカーBMW<BMWG.DE>のインドネシアでの販売台数は、2011年に25%増、今年に関してはすでに45%増と好調。また同国では、全車の5月の販売台数が57%増で過去8カ月で最高の伸びを記録、中国の2倍のスピードで成長している。
保有台数については、1─2台では足りないという人たちも出てきている。すでに、ジープ、ランドローバー、ベントレーを保有するボルネオ島の石炭会社のオーナー、Zainudinさん(47)は、「家族のため」と30万ドルのロールスロイスをコレクションに加えた。
2011年に過去最高の自動車販売台数を記録したインドネシア。BMWやゼネラル・モーターズ(GM)<GM.N>などの大手メーカーも、経済成長が進む同国での投資拡大を加速させている。
一方、低価格車市場では、二輪車の販売台数が今年に入って減少が始まり、低金利ローンを利用した二輪車から四輪車への買い替えが目立っている。低価格車投入のため、6月にジャカルタを視察に訪れた日産自動車<7201.T>代表取締役COO(最高執行責任者)の志賀俊之氏は「インドネシア市場は成長するだけでなく、層も広がっている」と述べた。
<モールにショールーム設置>
これまでトヨタ自動車<7203.T>が独占していたインドネシア市場だが、欧米の自動車メーカーが販売強化の戦略を打ち出し、その効果が表れ始めている。
米フォード・モーター<F.N>は、昨年同国で最も急成長を遂げたブランドになったとし、クライスラーは、今年1─5月の販売台数が昨年全体の75%に達したと発表している。
ジャカルタのモールの入り口前には、日本車の長い列で渋滞ができる一方で、モール内では高級車メーカーが買い替えを促すため、ショールームの設置を進めている。
BMWのインドネシアでの責任者、Ramesh Divyanathan氏は「インドネシアで始めたことはユニークな試みだ。交通事情を考えれば、販売店に行ってもらうより、モールで車を見てもらう方が顧客にとっても都合がいい」と説明。同ブランドの販売増は、20─30代と社会的な上昇志向の強い層が牽引(けんいん)しているという。
ジュリアス・ベアによると、世界第4位の人口数を抱え、東南アジア最大の経済国であるインドネシアは、富裕層の増加スピードが世界で最も速い。
証券取引所前のモール「パシフィック・プレイス」には、ワインバーも備えたジャガーとベントレーのショールームがあり、モールの通路にはフォルクスワーゲン(VW)<VOWG_p.DE>のアウディが並んでいる。
10万ドルのジープや15万ドルのレンジローバーを販売する代理店「グラマー」の販売員は、ステータス向上欲が支える高級車販売の増加で、喜びを隠し切れない様子。
「顧客はすでに他の車を所有している。彼らはステータスのために(高級車を)買う。富裕層はそれをキャンディーを買うかのように買っていく」
(原文執筆:Neil Chatterjee記者、翻訳:野村宏之、編集:伊藤典子)
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