2020年3月12〜26日
紀伊國屋ホール
ネタバレあり感想レポート②



※ 感想記事内の台詞やページ数は、トレンドシェア公式HP「つかこうへい演劇館」内の「モンテカルロイリュージョン」台本を元にしています。現代では差別的に映る用語もそのまま記載していますので、ご了承ください。

https://www.trend-share.com/tuka/engekikan3/#


※ この感想ブログは兒玉遥さんの大ファンが、観に行けなかった仲間にも作品あらすじと はるっぴの素晴らしさが伝わるよう、観劇後の飲み会のノリで書いています。

※ 作中の登場人物、年表などは感想レポート①をご参照ください。



「あなた、あなた」(P.3


ここからです()


開幕してすぐ、水野朋子の最初の台詞。


ただ、初めて観た時には意味がよく分からなくて。2回目の観劇でこのオープニングの台詞は、この作品のエンディングから続く、死後の世界の場面だと気づきましたおばけくん


モンテカルロで事故死した、速水雄一郎の姿を追い求める木村伝兵衛部長。


その部長を追いかける水野朋子。


生前に幾度となく繰り返したこの一方通行を、死後の世界でも繰り返すやるせなさ。「あなた」の重みも、2回目の観劇から分かるようになりました。


だから、よくある幽霊のような弱々しい声ではなく、柔らかくも強いあの声だったのかな。この台詞について考えれば考えるほど、胸がキュッとなりますぐすん







「そういう話し合いだったら申し訳ありません」(P.11


ほんの1分前に木村部長から「私の女」と紹介された水野朋子が、その部長から肩透かしをくらわされ、酷いことを言われ、それでも健気に会話に加わろうとして書類を投げつけられるシーンガーン


天国から地獄みたいな対応に、水野朋子の口調も愛人から部下の事務っぽさへ変わる切なさ!


でも、このシーンの彼女は内心、謝ってない気がしますイヒ


口では「申し訳ありません」と言いながら、胸の内では「ふんっ」と鼻を鳴らしているような様子が はるっぴの演技に感じられて、それが素敵拍手


そしてそう考えると、この報われない関係を10年も続けられる人だものねと、彼女の豪胆さが垣間見える台詞にも思えました。







DESIRE -情熱-」歌唱(P.13


部長から、結婚式をめちゃくちゃにしてやると言われ、「いや!」と言いながらもなぜか少し嬉しそうな水野朋子。


そして、やおら「DESIRE」を歌い出す部長に合わせて、ノリノリでタンバリンを叩き始める水野朋子


もう、胸の内で「うぉぉおいっ」とツッコミ入れましたよね()


その水野朋子がまぁ可愛いくて。


もう超絶可愛いすぎラブラブ


水野朋子の愛情って「許すこと」が際立ってると思うのですけど、それにしたって立ち直りが条件反射すぎません?


コントのようなやり取りのスピード間にけっこう戸惑ってから、何拍か遅れて はるっぴへ手拍子を送る僕でした。三枚目な演技も堂に入っていて、素晴らしかった







「たまには私にも。いえ。いえ」(P.16


ヨシオ(誰⁈)には200万円するブルガリの時計をスパーっと買ってあげた木村部長。それが、自分に10年尽くしてくれた水野朋子からの ちょっとしたおねだりはまったく拒絶!?


もう許せない!と観ている側は思うのですけど、当の水野朋子は、部長から「何だ」と凄まれるだけで何も言えなくなってしまう。


とにかく部長に対して弱いショック


「たまには私にも」とあんなにウキウキしていた愛らしさが一転、軍人のような「いえ」に。この落差の演じ分けがなんとも可愛らしくて切なかった。


そして、このあとも続く水野朋子の期待と、木村伝兵衛の肩透かしに、客席の気持ちはだんだんと「水野朋子の味方」になっていくのでした。







「部長に手錠をかけ、死刑台に送り込むお時間でしょう。よしません」(P.19


劇中、一番解釈が難しかった台詞。


部長のことが好きで好きで仕方ないはずの水野朋子が、えらくツンと、部長の死刑を願うような言葉を放ってしまう。


しかも、それに続く台詞から分かる通り、水野朋子が木村部長に尽くした10年間で唯一言い切ったわがままがこれ笑い泣き


愛しさあまって憎さ100倍だったのかな

ついカッとなって言っただけ?

それにしてはあまりに極論だし

部長との決別を決意したとすると、このあとのやり取りと矛盾するし


と色々考えさせられました。


しかもこの瞬間的な反抗が、木村伝兵衛部長からの「君には感謝しているよ」という、水野朋子の10年に報いるにはあまりに残酷な言葉を招いてしまうアセアセ


はるっぴが水野朋子に語らせる、そのあまりに自己破綻的な言いっぷりと、その言葉に乗せて飛び交う気持ちのやり取りは見応えがありました。







「いい加減なこと言うんじゃないわよ。昼は山形で夜は新宿、どうやって通ってたのよ。(飛ぶのよ。オカマは)飛ぶのかオカマは。じゃ、いつ寝てたの。(オカマは寝ないのよ)シェリー、シェリー、シェリー、シェリーベイビー。すごいシェリーだわ。またまたすごいシェリーだわ」(P.23


尾崎豊の「シェリー」を歌う速水刑事が、木村部長の犯行を証言した「ゲイバー トン吉」のママと同一人物だったことも分かり、ストーリーがあまりに力技な急ハンドルを切るシーン。


観ている胸の内は「そんなバカなw」になっているのだけど、その急展開に我らが良心 水野朋子(ここまではまだギリギリそういう印象だった)までがノッてしまい、観客としてはもうお手上げおーっ!


出演者がみなおかしな世界に向かう中、彼女だけは染まらないでほしいというこちらの気持ちに、あきらめの終止符を打たれるオモシロ台詞。


さながらコント風な はるっぴの掛け合いや、間の取り方、テンション。めちゃめちゃ上手いなぁと感心しました拍手


かなり突拍子のないツッコミで、ともすると客席をポカーンとさせそうなのに、観客を「ふっ」という笑いに巻き込んで、木村部長と速水刑事が作ったおかしな空気を回収する絶妙さ。


二枚目より三枚目な演技の方が難しいそうですが、ここに はるっぴの上手さや勘の良さが表れていたと思います。


ここが作品の主な見どころじゃないかも知れないけど、ここを見どころにした はるっぴの感性、素晴らしい!個人的にとても好きな台詞です。








右矢印感想レポート③へ続きます。