※ 感想記事内の台詞やページ数は、トレンドシェア公式HP「つかこうへい演劇館」内の「モンテカルロイリュージョン」台本を元にしています。現代では差別的に映る用語もそのまま記載していますので、ご了承ください。
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■「はい」(P.29)
木村部長から「水野君、新聞記者たちに連絡しておいてくれたまえ」と言われて、短くこう答える水野朋子。
え、「はい」なの?
木村部長が殺人事件の容疑者として世間に晒されるのを、そんなにあっさり受け入れるの?となるシーン。
この「はい」の響きの哀しい響きったら…
これまでの部下としての「はい」ではなく、なにか達観したように、ため息より少し強いかなくらいの声で発せられる「はい」。その後の無言の敬礼からも、水野朋子の部長への愛情と敬意が伝わってきました。
■「負けないわ。あたし負けないわ」(P.30)
容疑者の大山金太郎含め、全員で捜査を進めようとしている中、木村部長の聞き間違いで場の空気が崩れた隙を突いて、水野朋子が木村部長に抱きつくシーン。
もう、どさくさ紛れ!
脈絡なさすぎ!
「キュウニドシターッ」ってなるのだけど、1人だけ自分の世界にいるような水野朋子のあまりの可愛さに「ま、いいか」となってしまう。
観客の思考が追いつくのを待たない、急展開に次ぐ急展開
このへんまで来ると もうなんでも許せる心構えがこちらにもできていて、それがなんとも可笑しなシーンでした。
■「部長、頑張って下さい。負けちゃだめ。夏です」〜「ふたりの愛ランド」歌唱(P.33)
青森県竜飛岬でオリンピックコーチ 立花五郎を殺害するのに使われた丸い凶器を突き止めようとする捜査陣。
で、ヤシの実⇨ココナツ⇨「ふたりの愛ランド」ってことで、木村部長とデュエットしだす水野朋子…!
最後はまた部長に抱きつく水野朋子…!
それでいいのか、水野サン!
…あぁ…もう、それでいいのね…
だって、めっちゃ楽しそうやん…
はるっぴの歌がしっかり聴けるこの場面。彼女のキャラクター込みで、ついついコールをしそうになるくらい可愛くて。
とはいえ、あまりにぶっ飛んだ突き抜け方に、胸の内の半分は「水野朋子カムバーック!」と叫んでおりました(笑)
■「東京砂漠」歌唱 〜 部長の席に座るシーン(P.36-37)
容疑者 大山金太郎が、後に殺害されるオリンピック選手 山口アイ子と行った、熱海の喫茶店
その前にある写真館にどんな写真が飾ってあったか?という話の流れで、なぜか「東京砂漠」を歌い出す木村伝兵衛部長と水野朋子…
部長、歌いたいだけ。
水野朋子、部長とデュエットしたいだけ。
あまりに支離滅裂な悪ノリと、ド演歌も意外と上手い はるっぴのミスマッチが可笑しくて可笑しくて。
で、歌い終わった後、お茶目な悪ノリそのままに、部長が止める様子を楽しみながら部長のイスに座ってみせる水野朋子。
可愛い…!
いたずらして気を引こうとする、その可愛さったらありませんでした
■「ここぞとばかりに言うぞ。部長、好きと言ってください」(P.38-39)
写真館に火をつけた大山金太郎に、速水刑事が詰め寄るシーン。
火をつけた後に大山が行った喫茶店の名前を聞き出そうとしてピストルを取り出したはいいものの、うっかり落として大山が拾い、大山もまた落として水野朋子が拾う
そこで水野朋子が、部長に銃口を向けながら放つ台詞がこれ。
もう隙あらば部長。
捜査そっちのけで部長。
で、案の定、その木村部長から軽くあしらわれる水野朋子…
しかも速水刑事がそんな木村部長を叱ると、「部長の悪口を言わないでください」と、速水刑事に向けてピストルを打つ水野朋子サン…
あまりに盲目的すぎて笑っちゃいました。
ただ、ともすると ことさらに“演技”と意識してしまいそうな コミカルなシーンなのに、観ていると彼女の感情移入して、その背景に想いを馳せてしまって。
はるっぴが元来持っている可愛さやお茶目さが、役に説得力を与えていると感じました。
■「もっと、もっと能天気な高い声だったと言うのですよ。…今のじゃあなたはこの声を聞いてませんよね」(P.41-42)
今さっきまで「津軽海峡冬景色」の節に乗っておちゃらけていたのに、容疑者 大山金太郎の言葉の隙を突いて、名探偵よろしく水野朋子が大山の嘘を見破ってみせるシーン
観ていて、ジェットコースターが急ブレーキをかけたみたいに「おっととっ」と前のめりになるような感覚になりました
台詞の緩急、間の取り方が絶妙に素晴らしかった…!
そして、このあたりから よりいっそう台詞量が増す はるっぴ。
でも、長くなれば長くなるほど流暢で、抑揚に富み、会場中に響く声で、たっぷりと「聴かせる」台詞回しに感激!
個別マイクのないこの舞台で、これには本当に驚きました。
はるっぴがこれまで出演したAKB48グループでの朗読劇や、HKT48での明治座・博多座、または昨年の舞台「私に会いに来て」。
どれも素晴らしくて、どれも大好きですが、もしそれらの印象で止まっている方がご覧になったら、はるっぴの急成長ぶりに腰を抜かすと思います
覚悟を決めて、しっかり学んで、魂込めて、肩書きだけでなく質実ともに「女優になった」と伝えてくれる はるっぴの演技の雄弁さに、僕は身体中の血が沸騰するような感動を覚えました。
どんな褒め言葉も追いつかないくらいに素晴らしかった!
感想レポート④に続く