ネクタイは男の服装の中で、もっとも正体が分からないものだが、もっともその人間の正体を表すものでもある。
ネクタイはシミが付いていようが、ねじれていようが、五百円の廉価なものであろうが、首からぶら下がっていれさえすれば、どんな場所への入場も許されるという、不思議なモノでもある。
まさに入場券。ネクタイ自体より襟を正して首元を締めると言う行為、心構えに意味がある。
人の身体の中心、胸の中央に陣取ったこのネクタイは、他人の目に一番最初に入ってくるもの、その人の印象に大きく関係してくる。
アメリカの歴代大統領が演説をする際に、決まって真っ赤なネクタイを締めるが、それは「情熱」「パワー」そしてアメリカ国旗の赤、「愛国心」をメッセージとして伝えるためだ。
では、ビジネスという場において、どのような柄のネクタイを選択すればいいのか。
まずは、もっとも基本的なピンドットと呼ばれる水玉模様。この水玉模様の細かい規則性は、秩序を感じさせ、ある社会、組織の一員としての秩序を守りながら、個性を表現すると言うメッセージでもあり、人に安心感、安定感を与える。
そして、レジメンタルストライプ、最もポプュラーな柄で、鋭さ、シャープさを表現するため、ビジネスにおいてよく使われる、印象としては斜めの直線的柄は、シャープ、若さを感じさせる。もともとレジメンタルのストライプは、ある特定のグループのためのチームカラーだと言う歴史がある。
たとえば英国空軍のネクタイは紺、白、エンジ、海兵隊は紺、赤、黄色などのように、さまざまな色の組み合わせでチームカラーが構成される。
そして無地のネクタイ、個人的には一番この無地がお薦めで、理由はトータルに着こなした時の全体の色が少なくスッキリ見える、色が少ない事はそれだけでお洒落に見える。簡素さはお洒落に通じる。
私が考えるベーシックで上品なネクタイは紺の無地ではないかと思う。紺という色は国や年齢に関係がなく誰にでも似合う色、また一番目立つ胸元に無地の紺のネクタイを締めると、ネクタイが落ち着いている分、身につけている本人が浮き上がってくる。
スーツの役目は服を着ている本人を主役にする事で、それ以外は沈み込んでいなければいけない。
ネクタイだけではなく、どこかが目立っていて、そこに目が行くような着こなしは良いとは言えない。
大切なのは全体の調和ではないだろうか。