【変わる関係、変わらない関係 2】のつづきです。
まだ未読の方はこちらからどうぞ
今回はボーイズトークが思ったより長くなってしまいました^^;
長さがまちまちですみません・・・。
前回は昨晩の回想でしたが、
今回は話は学校に戻ります。
ではではさっそく続きをどうぞ~~
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
「それで、突き飛ばしてそのまま出てきちゃったと。」
昨晩あった出来事を聞き終わると、
あやねは今朝からのちづの行動の理由にようやく納得がいった。
「・・・うん」
「だから朝から龍と気まずいことになってたわけか」
「・・・・」
そして、
何も応えられないちづはそのままうつむく。
「ちづ・・・あんたさ」
「?」
「ようやく自覚したの?」
あやねの言葉に、
再びハッとして顔をあげる。
そして、次の瞬間、
ちづは、まるで瞬間湯沸かし器のように、
ボッ
っと、顔が真っ赤になった。
「な、なにを・・・」
その反応を見て、あやねはクスリと笑いながら言った。
「・・・龍があんたのこと好きだって」
「やのちん!!し、知ってたの?」
「まあ、なんとなくだけどね」
「真田君・・・ついに・・・」
ずっと隣で聞いていた爽子がポソリと呟く。
「ええーーーーー!!!なんだよ、さ、爽子まで??」
ちづが今までで一番驚いた声を上げる。
その声に爽子はビクッとなってちょっと肩をすくめた。
「へぇ~鈍そうに見えたけど、爽子も気づいてたんだ。」
あやねも驚いた顔で爽子を見た。
「う、うん。」
(前に、真田君が教えてくれたから・・・)
「ってことは・・・たぶん、知らなかったの、ちづくらいじゃない?」
「な、なんだよ、二人とも・・・知ってたんなら教えてくれたっていいじゃ~~~ん!」
うがぁぁぁぁ、
声にならない雄たけびをあげてガックリと肩を落とすちづ。
「龍が言わないんだもん、言えるわけないじゃない」
「ご、ごめんね、ちづちゃん・・・」
(内緒と言われていたので・・・)
爽子は心の中で手をあわせた。
「う、うう・・・~~~~~あ~~~!!!!!もうっ、どうしたらいいんだ~~」
半ばパニックになってちづは両手で頭を掻きながら、
顔をブンブン左右に振る。
「ちづはどうなのよ」
「へ?」
「龍のことどう思ってるの?」
あやねのふいの質問に再び顔を赤く染めるちづ。
「ど、どうって!!・・・そっそんなのっ・・・そんなの・・・わかんないよっ!・・・だって、龍は兄弟みたいな存在で、今まで一度だってそんな風に考えたこともなかったし」
どんどん小さくなっていく声。
「ちづちゃん・・・」
爽子はちづの動揺が伝わってきて、
ギュッと思わず両手に力が入った。
「でも、抱きしめられたんでしょ?」
「あんなの・・・別に今までだってなかったわけじゃないし」
「・・・じゃあ、なんでそんなに動揺してんのよ?」
「う゛っ」
あやねにそう言われて言葉に詰まってしまう。
(徹に失恋したあたしをなぐさめてくれたときだってそうだった・・・なのになんでこんなことで?)
考えれば考えるほどわからない。
どうして、自分はあの時あんなに焦ったんだろう。
いつものごとく笑い飛ばせばよかったんじゃないのか?
ちづは頭の中で何度も何度も自問する。
黙り込んでしまったちづを見かねたあやねが
「本当はさ、心のどっかでもしかして龍のこと好きだったりするんじゃないの?」
と、直球な言葉を投げかけた。
すると、それを聞いた瞬間、
ちづは、ガバッと立ち上がり、
「な、なななないっ!そんなことないっ!!!断じてないっ!!絶対ないってばーーーー!!!!」
そう叫ぶと、
なんだかその場にいてもたってもいられず、
そのままの勢いで走り去ってしまった。
「あっ!!」
爽子は慌ててちづを追いかけようとしたが、
もはや追いつけるようなスピードではなく、あっというまにその姿は消えてしまう。
「・・・う~~ん・・・こりゃ相当意地になってんな」
「ちづちゃん・・・」
一度意識してしまって、ぎくしゃくしてしまった関係を元に戻すには、
やはり本人同士がなんとかするしかない。
あやねと爽子は何もできない自分たちの無力さを感じながらも、
何があってもちづを暖かく見守ってやろう。
そう思うことしかできなかった。
その頃、爽子たちの元から走りさってしまったちづは、
行き場をなくして教室へ戻ろうかどうしようか迷いながら
(あ~~もう、なんであたし逃げてきちゃったんだよ。・・・)
情けないな~と廊下でためいきを吐いた。
(しっかし、矢野ちんも何言ってんだか・・・そんなことあるわけないじゃん。あたしが龍のことす・・・す・・・)
「・・・ははっ!ないないないない!!」
いつの間にか思っていることを口に出ていることにも気づかず、
つい早足になる。
と、
教室へと続く廊下に人影を見つけた。
「!!」
龍だった。
でも、ちづは気づいたものの、その横を無言ですり抜けることしかできない。
あんなに近かったのに、開いてしまった二人の感覚――
龍もあえてちづを呼び止めることはしなかった。
そんな二人の様子を、友達と一緒に歩いていた風早は、偶然見ていた。
「・・・・・」
やっぱりどうしても気になる。
ちづの行った先をじっと見つめる龍の背中を見て、
おせっかいは承知の上で、風早は聞いてみようと決意した。
そして、放課後、
いつも一緒に帰っている爽子に、
今日は龍と帰るから先に帰っていてと風早は断りをいれた。
爽子はなんとなく、
(風早くん、やっぱり真田くんの事が心配なんだろうな・・・)
風早の気持ちを察し、
あやねと一緒にお茶をしてから帰るから気にしないでと告げる。
そんな爽子の気遣いに感謝しながら、
風早は龍の部活が終わるのを待った。
西日の差す校舎で
最初に風早の姿を見つけたとき、龍は一瞬驚いた顔をしたが、
自嘲気味に笑みを浮かべる。
そして、
校門を出てから歩く道の途中で、風早は思い切って切り出した。
「・・・なあ、龍」
「ん?」
「・・・吉田と喧嘩でもした?」
「ああ。そのことか」
龍は風早が待っていた理由が自分のことだとわかり、
心配かけたかと少し申し訳ない気になったのだが、
ちづのあからさまなあの態度を見たら、誰でも気づくなと苦笑する。
「ごめん、偶然見かけちゃって、気になった」
「そっか」
「いや、言いたくなかったらいいんだけど・・・」
お互い、今まで恋愛などの話をしたりしたことなどあまりなかった。
いや、正確に言えば、風早は自分のことは話しても龍は自分のことをあまり多く話さないので、
今まで聞く機会がなかったというほうが正しい。
ちづとのことも、なんとなく龍の気持ちには気づいていたけど、
今まで直接、龍に聞いたことはなかった。
それだけに、
なんだかこういう話を聞くのは少し気恥ずかしい気がして、
風早はどう聞いたらいいのか言葉を選んでしまう。
「・・・別に、しょーたに隠す必要ねーしな」
そんな親友の様子を見て、
龍は口の端を少しあげた。
それから
どう言おうかと少し考えたのち、龍は口を開いた。
「昨日の夜、千鶴が家にきてさ」
「うん」
「抱きしめた」
「だっ!だきしめっ・・・」
多くを言うことが苦手な龍らしい、
あまりにもストレートな言葉に風早が後ろにたじろぎながら、顔を真っ赤に染めた。
「何でしょーたが赤くなる?」
「い、いやそーだよな。ごめん、ちょっとびっくりして。」
思わず、自分が前に爽子に対して起こしてしまった行動がフラッシュバックしてしまい、どうにも冷静になれない。
「な、なんで??」
聞いてもいいんだろうか?と思いつつも、
どうしてそうなったのか経緯が聞きたくなった。
龍は相変わらずいつものポーカーフェイスを崩さないまま続ける。
「・・・俺は別にここまで待ったから、この先も待つつもりでいたんだけど・・・。千鶴、ずっと兄貴のこと好きだったから」
「あーそうだったな」
龍の兄である徹は、ずっとちづが想いをよせていた存在。
でも、その徹には婚約者がいて千鶴の長年の想いは叶うことなく、失恋しまったのだった。
「でも、千鶴が昨日、しょーたとくろぬまのことがうらやましいって言ったんだ」
「えっ!?」
風早は
突然自分たちの名前が出てきて驚くと同時に、
自分がそんなにあからさまに顔に出してるのかと、再び赤くなった。
「しかも、早く新しい恋したいとか言いだしたから」
「・・・」
「もう、兄貴のことは完全に吹っ切ったんだなって思った瞬間、なんか今まで抑えてたのとか、なにもかもが瞬間的にどうでもよくなって、・・・気づいたら抱きしめてた」
龍は淡々と話しながら、
「こうでもしなきゃアイツ一生気づかない気がしたし」
少しだけ切ない目で遠くを見つめ、ふうっと短く息を吐く。
普段、沈着冷静でいつも考えてから行動するタイプの龍
(龍が衝動的になるなんてよっぽどだろうな・・・)
風早は
龍はいつからそんな想いをずっと抱えてきたんだろうか?と考えた。
別の人、しかの自分の兄を想っているちづを同じくらい、もしかしたらそれ以上前から想い続けてたとしたら、
龍の一途さは相当だ。
自分は
爽子に想いをよせていた間でさえ、何度もぶっちゃけたい衝動にかられていたのに、
龍はそれとは比べ物にならない時間、ずっと想いを抱え続けていたことになる。
風早は龍の想いの強さをあらためて実感する。
(俺にはそこまで我慢するのは無理だな・・・)
龍はすごいな
風早は心の底からそう思った。
「で、吉田はなんて?」
「突き飛ばされてそのまま出てった。それで今日はアイツ、目もあわせない・・・まあ当然だな」
ははっと乾いた笑いを漏らして、持っていた部活のバックを肩に背負いなおした。
そのバックの横で千鶴が以前誕生日プレゼントにあげた『野球馬鹿野郎』のグローブ袋が揺れている。
「そっか、それで・・・」
今日一日のちづの様子を思い返して、
風早は空を仰ぐ。
「こういう反応するってわかってたから。俺は別に気にしてないけど。でも・・・正直、いつまで千鶴に避けられ続けるのかって考えるとちょっとキツイ」
「・・・うん、確かに」
「かといって、今、俺が千鶴に何言ったって、もうアイツ聞かないとおもうから、今はぶっちゃけ、どうしていいかよくわかんねー」
「そっか」
(龍でもやっぱ悩むんだな・・・)
風早は驚いた。
どうしたらいいかわかんない
なんていうことを龍の口から聞いたのは、長年一緒にいるけどはじめてかもしれない。
それだけ、
いつも何に対しても、悩むことなく即決断できる強さを龍は持っていたから。
(やっぱ吉田のことだからだろうな・・・)
「器用じゃねーからな、俺」
龍はそう言って風早に向かってニヤッと笑った。
「っはは。おなじだ」
要領よく、うまく飛び回れたらどんなに楽だろう。
わざわざ遠回りなどしなくていい。
こんな風に相手とすれ違うこともない。
でも、
そんな簡単にいかないからこそ、もっと知りたい、もっと心に触れたい、
もっと近づきたいと思うのかもしれない。
相手の気持ちに―――
「まあ、俺にとって今までもこれからも千鶴たった一人だから。今さら焦ったところで何も変わんねーんだけど」
まるで永遠の愛を宣言するプロポーズのようにも聞こえ、
風早の方が照れてしまう。
「・・・龍ってたまに凄いことサラッと言うよな」
「そーか?」
「うん・・・。」
しかし、
龍にとってはいたって普通の言葉らしい。
「うまく言えないけどさ、俺、龍と吉田って似合ってるとおもうよ」
「それ、前に兄貴にも言われた。」
はははっ俺もそー思う。
龍は声に出して笑った。
その笑顔を見て、風早も安心したように笑う。
「吉田に届くといいな」
「ああ」
龍は言葉にこそしなかったが、
今まで鬱積していた気持ちが少し晴れた気がして
心の中で、気にかけてくれた風早に感謝した。
何も言わなくても通じる関係が心地いい。
それから
龍と風早は、久しぶりに男二人でたわいもない話をしながら帰宅したのだった。
【つづく】
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
龍は気持ちを表さない分、結構どうやって伝えるか難しくて。
ここまでおしゃべりでいいのか?
というくらい喋ってる気もしますが、
まあ、相手が風早だからということで許してやってください^^;
この先まだもう少しいろいろある予定です。
ちょっと次は更新おそくなるかもしれませんが、
もうしばらくお付き合いいただけたらうれしいです。
【そのまま4 を見る】