騒ぎを起こしたあの出来事も、記憶の片隅で薄っすら色あせていく頃僕はまたあの子に会った。
この日、僕は同期のヤツら3人と映画に来ていた。
映画なんてここ数ヶ月行ってない。
そう、
ナオと別れてから映画なんて行く機会がなかったんだ。
あの頃は、ナオに連れられてよく映画に行った。
新しい映画が上映される度、「次の休みはこの映画みにいくからねー♪」ってはしゃぐナオの顔が、
あの頃の楽しい記憶が蘇る。
僕は元彼の代わりだった
今でも思い出す、ナオの言葉。
僕は僕で在りたい。
もう、あんな恋なんて十分だ。
「おい!急げよ。もう始まるだろ。」
「だーいじょぶだって。映画の始めってのは新作映画の宣伝とか告知とかあるんだって、まだあと5分くらいは平気だよ。」
「ばか、お前のせいで遅れたんだろ。おせーんだよ。」
「飲み物とか買おうぜ。俺買ってくるわ。お前ら何がいい?」
そんな言い合いをしてるのが、タカシとコウ。
2人共タメで、入社当時から研修なんかでいつも一緒でいつのまにか意気投合してたヤツら。
「俺、ウーロン。ヒロキお前は?」
「あー、じゃファンタレモンで。」
「じゃぁ、チケット買っとくからコウは待ってて。」
3人分のチケットを買いにカウンターに向かう。
マイペースで気分屋なのが、「タカシ」
面倒見が良くて、しっかり屋なのが「コウ」
バランスが取れていて、飽きないヤツらだ(笑)
「ヒロキ急げ!さすがに始まる!席どこだよ。」
「えっと、I 列 12、13、14だ。」
「どこだよ、ソレ(笑)」
「バカ!ヒロキ、案内図なんて見てないできこうぜ。お前ら、走れよ!!」
こんな調子でバタバタしながら指定されたスクリーン会場へ向かう。
「すいません、席どの辺りですか?」
口早に入り口のオネエさんに尋ねて、振り返った顔に思わず驚きの声を漏らしてしまった。
「あっ・・。」
「ああ・・・。どうも。」
驚くのも無理はない。
僕が席を訪ねたオネエさんは、あの子だったんだから。