~War Is Over!~ | ツインソウルによろしく
久々の休日。私は日がな一日ゴロゴロして過ごそうと、二階のベッドで消息をくらましていると、階下から私を呼ぶ不穏な空気・・・・
 
「もう、ご飯が片付かないから早く降りてきて食べてよ!・・・」
 
特にお腹が空いているわけではなかったが、安住の地に別れを告げて下界に降りる。
 
ありがたいことに、そこには娘の残した分までしっかりと盛られていた。
 
「キレイに食べてね・・・」
 
このような場合、栄養の過剰摂取を気にしない理屈はどこにあるのだろうと思いながら、私はきれいに平らげる。
 
餌付けタイムが終わってトドになった私は、リビングのソファにあごを伸せ、反動で身体ごと持ち上げた。今は一先ずゆっくりと消化吸収に勤しまなければならない。
 
だが今度はコンセントに電気コードの入る陰影を確認。たちまち暗雲が立ち込める。
 
さっきまで平和だった日常に、清掃という名の開戦が、掃除機の号砲と共に始まるのだ。
 
やがてここも戦地と化すのは自明の理。ソファを転げ降りた私はほふく前進で最後の砦、縁側の片隅に勇気ある撤退を行った。
 
多分今日が天下分け目の決戦の日なのだ。
 
 
「少しぐらい手伝おうって気もないのね?」
 
司令官の仰るのも最もだが、今の私では何の戦力にもなるまい。今日という日を逃せばまた明日から七人の敵のいる別の戦地に赴かなければならない。ここは頑なに、寝たふりという聞こえない戦術を使うが、いつしか本当に眠ってしまったらしい。
 
さてどのくらい寝ただろう。ふいに何かの重みを感じて目を覚ますと、さっきまで小まめに動いていた妻がまるで私にのしかからんばかりに寄り添って眠りについている。さほど広い家ではないが、他のどこでも休める場所はあるはずなのに、何故か二人、狭い縁側のふちに折り重なるように眠っていた。
 
全身全霊で戦った司令官殿の寝息が聞こえる。
 
悪くない。
 
この広大な宇宙の片隅、銀河系のすみくたの、太陽系のはしくれの、小さな地球の小さな島国・・・・その小さな町の、小さな我が家。
 
柔らかな西陽を浴びながら、小さく折り重なる人間二人を、庭で寝転ぶ愛猫が不思議そうに眺めていた。
 
“至福”という二文字がふと脳裏に浮かぶ。
 
こんなパラレルワールドを私は夢に見ていたのを思い出した。
 
明日仕事先で私は宣言しようと思う。 
 
「もう戦いは終わった!」と。