「社会民主主義の5党派連合」? | にっし~の世の中思ったこと考えたこと(西形公一のブログ)

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1ヶ月ほど前の記事だが、
みんなの党の山内康一衆議院議員がこんなことを書いていた。

社会民主主義の5党派連合
http://blogos.com/article/45723/#45302_forum-for

・「国民の生活が第一」
・社民党
・「減税日本」
・新党大地・真民主
・新党きづな
…の、5党派。

・柱は「反消費税」と「脱原発」(反TPPもあるらしい)

…ということだそうである。

山内議員も書いているが、
このなかで「減税日本」だけが異質な印象を受けるという。
確かに「小さな政府」 vs 「大きな政府」という対立軸で捉えれば
そうである。
さらにいえば「社会民主主義」(筆者は「民主社会主義」という
表現のほうが好きだが、今日は山内議員に従って表記する)
イコール「大きな政府」という立場からすると、
それが「反消費税」を掲げることに、ねじれた感覚を持つ方も多いと思う。

しかし「社会民主主義」、
すなわち「大きな政府」そして「増税」と単純につながるのだろうか。
そこを整理するのが今日の論旨である(脱原発については
財政とは別なので触れない)。

たとえば、ユーロ危機では、こういう対立軸になる。

・「経済成長」 vs 「財政再建」

すなわち 「積極財政」 vs 「緊縮財政」ということである。
前者は主に歳出拡大であり、後者は歳出削減であるが、
このうち後者、「財政再建」「緊縮財政」を「増税」でまかなうというのも、
また一般的な考えである。これを「財政タカ派」という。

ならば、その逆である「減税して経済成長を実現する」という考えが、
社会民主主義と親和性を持つ、ということにもなるのではないだろうか。
これはつまり、いわゆる「上げ潮派」と「財政再建派」のどちらが
経済財政政策において社会民主主義に近いかということである
(日本では麻生太郎が代表したような赤字財政派はここでは考慮しない)。

社会民主主義は、伝統的には社会主義運動内の中道寄り穏健派であった。
しかし民主社会主義を掲げた旧民社党の存在もある。
もともと政治イデオロギー的には、幅が広いのである。

そして冷戦後に先進諸国で流行した社会民主主義の「第三の道」は、
自由主義と社会民主主義をミックスした思想であった。
この時点において、社会民主主義は必ずしも「大きな政府」では
なくなっているのである。もちろん増税も絶対要件ではない。

こうなった理由としては、先進諸国における経済構造の変化があると思う。
ケインズ経済学的な「積極財政」による「歳出拡大」は、
経済格差の大きい、あるいは経済成長が見込める時点では、
景気浮揚策として有効であった。
それは過去においてそうであったし、現在も途上国においてはあてはまる。
新自由主義・ネオリベラル的な経済財政政策が行き着いた将来でも、
同じようなことになるかもしれない。

しかしながら経済格差が縮小している、または低成長の時点においては、
減税、あるいは「増税しないこと」による景気浮揚策も、ひとつの答えと
なるのではないか。
個々人や個々の家庭のレベルでは「収入を増やすこと」だけでなく
「支出を減らすこと」も、ひとつの選択ではないかということである。
もちろん支出を減らすのは「反消費税」だけに限らない。
所得税減税なども考えられる。あるいは「収入を増やす」のか
「支出を減らす」のか微妙な線ではあるが「戻し税」や「負の所得税」なども
考えられる。
こう見ていくと5党派連合に「減税日本」が加わっていることも、それなりに
筋が通ることになる(ちなみに同党代表の河村たかし名古屋市長は
民社党の出身)。
「増税」 vs 「減税」の軸は、必ずしも 「大きな政府」 vs 「小さな政府」 の軸と
イコールとは言い切れない、それがユーロ危機の図式だということなのである。

「第三の道」以降のヨーロッパの社会民主主義勢力が
「平等」(Equality)よりも「公正」(Fair)を掲げる傾向が強いことも、
そのひとつの答えではないかと感じる。
その場合、社会民主主義は自由主義(なかでも社会自由主義)と重なるので、
「社会的公正」または「社会」そのものに重きを置くことになる。
少なくとも地方分権政策や福祉政策などをみるに、
ヨーロッパでは中央集権的な「国家による平等」から、
「社会のさまざまなセクターによる公正な競争を担保する」方向に
シフトしていることは確実だと思う。
国家・中央政府でなく、自治体やNGO・NPO、時には協同組合や中小企業、
あるいは場合によっては大企業のなかの非営利的要素、
CSR(企業の社会的責任)やSRI(社会的責任投資)などの面を
重視するということである。
社会民主主義は社会主義、社会自由主義は自由主義と区別するむきも
あるが、イデオロギー・思想的源流はともかく、冷戦終結後の世界においては
政策による区別も劣らず重要であり、社会民主主義と社会自由主義は
その「社会」を重視する政策において、合流していく現実があるではないか。
ただそれは「社会など無い」と言い切ったサッチャーなどとは、
やはり異なると思う。
イデオロギー的にはともかく、サッチャーは付加価値税(消費税的な間接税)
およびイングランド銀行の政策金利の引き上げを行った。
それは財政再建派の政策である。

先日「上げ潮派」に比較的近いとされがちで、
消費税率上げの延期も示唆している安倍晋三氏が
自民党の総裁に選出されたことを思うと、政治イデオロギー的には
真逆と感じられがちな「社会民主主義」5党派連合と安倍自民党が今後、
意外な提携をみせる可能性もあるように思う。
無論それを「旧来の」自民党と「社会民主主義」による
「大きな政府」連合と捉えるむきもあるだろうが、
「反消費税」が接点となれば、それは従来型の「大きな政府」と
様相を異にする。
いずれにしても山内議員が指摘するような
「政策や理念を軸とした政界再編」は大いに歓迎である。
ただ、その際に単なる一時しのぎの野合ではなく、
有権者に受け入れられる(それは例えば投票率の向上につながる)ような、
しかし同時に「左/右」や「大きな/小さな政府」といった
既成概念に捉われない、斬新でもあり皆が驚くような対立軸を、
今世紀の日本の行くべき選択肢として、示してほしいと思う。

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10月11日追記

「生活」主導の国民連合、準備会に出席したのは
(読売、8月28日)
http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/news/20120827-OYT1T01109.htm

小沢氏は「大阪維新の会」(現・「日本維新の会」)や「石原新党」との提携を
イタリアの政党連合「オリーブの木」になぞらえて提唱していたのだから、この
国民連合が「右」とされる側から「減税日本」を加えることに成功したことで、
「広範な国民連合」(こういう地方議員中心の団体もあるようだが)としての
陣容をそろえることには、とりあえず成功したということだろうか。