恒例の「いい夫婦の日」のフィクションです。
暇があったらどうぞ。
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ああ、また、やられた。
アイツにはかなわないところがある。
でも、次は絶対にギャフンと言わせてみせるわ。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20191115/15/kimigaichiban/ab/35/j/o0549036614640459941.jpg?caw=800)
大学のゼミで一緒になって、その時からの腐れ縁だ。
アイツもワタシも広告業界を希望。
ゼミの発表では、それぞれのプランをこき下ろしあったものだわ。
ま、お互いの実力を認め合う仲でもあったけど。
ワタシ達は、それぞれ、別の代理店に就職。
クライアントをめぐって競い合うことはなかった。
ワタシは結婚、出産を機に、外資系の代理店に転職した。
勤務時間も配慮してくれるこの企業は、ワタシには有難かった。
どういうわけか、転職の後、アイツと競合することが増えた。
最初のコンペではワタシが勝ったけど、このところ2連敗。
ホント、悔しい。
今夜は夫に不満を聞いてもらうつもり。
いい夫婦の日。
しかも、金曜日。
子どもは母が預かってくれるというし、着飾ってディナーデートをするのよ。
夫が待ち合わせ場所にやってきた。
「すごく綺麗だ」
「ありがとう、あなたも素敵よ」
目が合うと照れる。
店に入ると、夜景が見える席が予約してあった。
こういうことは夫に任せておけば問題ない。
最初はスパークリングワイン。
美味しいわ。
「ね、聞いてくれる?」
「何?仕事のこと」
「そ、また、負けたのよ」
「そういうこともあるさ」
「どうしてだと思う?」
「言っていい?」
「お願い」
「男女は関係ない、広告のプロだという意識が強すぎるんじゃないか」
「・・・」
「母であり、妻であることを受け入れ、そこを生かせば柔らかいプランが出てくると思うよ」
「そっか、何か悔しい!」
「ね」
「ん?」
「2人だけの時は仕事の話をやめようよ」
「でも、あなたの顔をみると・・・」
「今日は僕が、というより、ウチが勝ったけどさ、次は逆かもしれない」
「それは、そうね」
「ギスギスした会話はしたくない」
「分かった」
「今は素敵な奥さんと素晴らしい時間を楽しみたいんだ」
ワタシのライバルで腐れ縁の相手は
ワタシの心をとろかせるような笑顔を向けた。