ライバル | スイーツな日々(ホアキン)

スイーツな日々(ホアキン)

大好きなスイーツと甘い考えに彩られた日々をつづっていきたいと思います。

恒例の「いい夫婦の日」のフィクションです。

暇があったらどうぞ。

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ああ、また、やられた。

アイツにはかなわないところがある。

でも、次は絶対にギャフンと言わせてみせるわ。



大学のゼミで一緒になって、その時からの腐れ縁だ。

アイツもワタシも広告業界を希望。

ゼミの発表では、それぞれのプランをこき下ろしあったものだわ。

ま、お互いの実力を認め合う仲でもあったけど。

ワタシ達は、それぞれ、別の代理店に就職。

クライアントをめぐって競い合うことはなかった。

ワタシは結婚、出産を機に、外資系の代理店に転職した。

勤務時間も配慮してくれるこの企業は、ワタシには有難かった。

どういうわけか、転職の後、アイツと競合することが増えた。

最初のコンペではワタシが勝ったけど、このところ2連敗。

ホント、悔しい。

今夜は夫に不満を聞いてもらうつもり。

いい夫婦の日。

しかも、金曜日。

子どもは母が預かってくれるというし、着飾ってディナーデートをするのよ。


夫が待ち合わせ場所にやってきた。

「すごく綺麗だ」

「ありがとう、あなたも素敵よ」

目が合うと照れる。

店に入ると、夜景が見える席が予約してあった。

こういうことは夫に任せておけば問題ない。

最初はスパークリングワイン。

美味しいわ。

「ね、聞いてくれる?」

「何?仕事のこと」

「そ、また、負けたのよ」

「そういうこともあるさ」

「どうしてだと思う?」

「言っていい?」

「お願い」

「男女は関係ない、広告のプロだという意識が強すぎるんじゃないか」

「・・・」

「母であり、妻であることを受け入れ、そこを生かせば柔らかいプランが出てくると思うよ」

「そっか、何か悔しい!」

「ね」

「ん?」

「2人だけの時は仕事の話をやめようよ」

「でも、あなたの顔をみると・・・」

「今日は僕が、というより、ウチが勝ったけどさ、次は逆かもしれない」

「それは、そうね」

「ギスギスした会話はしたくない」

「分かった」

「今は素敵な奥さんと素晴らしい時間を楽しみたいんだ」

ワタシのライバルで腐れ縁の相手は

ワタシの心をとろかせるような笑顔を向けた。