ドラマ「パパ活」では、夫を深く愛しながら、
その親友と関係を持つ人妻に。
「奥さまは、取り扱い注意」にゲスト出演した時には、
余命半年を宣告され、離婚し、かつての恋人と暮らす役柄。
なかなか、普通の役がない霧島れいかさん。
アンニュイな雰囲気は、演技を超えて独特のものがあります。
ただ、見た目と、内面とのギャップを理解してもらえず
苦しむ役を演じたら、ピカイチかもしれません。
ブロガーさんの中にも、地味な性格とバランスをとるため
あえて派手めな外見を装っている方もいます。
前置きが長くなりました。
以下は、恒例の「いい夫婦の日」フィクションです。
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もともと茶色い髪を、無理やり黒く染めさせる。
そんな学校の指導をめぐる報道を耳にし、私は、ちょっとドキッとした。
記事が書かれた新聞に目を通していると
「ねえ、ママ」と娘が話しかけてくる。
「なぁに?」
「ママは、どうして、お顔と胸の色が違うの?」
「それは・・・」
「パパに聞いたら、『知らないし、ママにも聞くな』って言われたの」
「そうなの~。むずかしいのよ。
ほら、みにくいアヒルの子のお話を知っているでしょう?」
「もちろん!ママが何度もご本を読んでくれたもの」
「最後はきれいな白鳥になるけど、人間の場合は、そうはいなかいの」
「???よく分からない」
「昨日まで、みにくいと、馬鹿にしていた子が、急にきれいになると、くやしくなる。
悲しいけど、人間はそういう人もいるのよ」
「少し、分かるわ。でも、ママのお顔と胸の話と、どうつながるの?」
「お祖父ちゃんの家に行ったでしょう?」
「うん、楽しかった~。お外でいっぱい遊んだ」
「ママも、小さい時は、ずっと外で遊んでたの。だから日焼けして真っ黒だった」
「今のお顔みたいに?」
「そうよ~。でもね、中学校では運動部ではなく、英語を勉強するクラブに入ったの」
「知ってる。いっぱいいっぱい英語を勉強して、アテンダントさんになったのよね。そこでパパと知り合ったのよね」
「よく覚えているわね~。それでね、小学校までは、真っ黒だったママが、運動をあまりしなくなったら、色白に変わったの」
「今度は、お胸みたいに?」
「そうそう。そしたら、どういうわけか、男子にモテモテになって。逆に女の子たちからはにらまれちゃったのよ。『あんな色黒だったくせに』と思ったのね」
「れいかに、意地悪するのも、女の子ばかりなのよ」
「そうなの。もっと話して」
「ううん、今は、ママのこと聞きたい」
「学校では、ホント、ひどい目にあったのよ。しばらく行けなくなったこともあったの。ああ、あまり目立っちゃいけないのかな、と思ったり」
「ママ、かわいそう」
「でもね、高校は、心配したお祖父ちゃんが、東京に出してくれたから、そんなに気を遣う必要はなくなったわ」
「良かったわね」
「でね、れいかちゃん」
「うん」
「ママが目立ち過ぎると、れいかちゃんが、昔のママみたいに、ひどい目に遭うんじゃないかと心配なの。
だから、お引っ越ししてくる時、少なくとも昔の色黒に近い感じにしようと思ったのよ」
「お胸は日焼けしないから、白いままなのね」
「偉い!よく分かったわね」
「でもね、ママ」
「なあに?」
「お友達のまりえちゃんのママは、『れいかちゃんのママはスタイルが良すぎる』って言ってるそうよ」
「まあ」
「それで『あんなスタイルで、運動会に来られたら、比べられるこっちが困る』って」
「そっか・・・」
「ママ。れいかは、色は白くないけど、お勉強はパパに似てできる方だと思うの」
「賢いもんね~、れいかは」
「大抵のことがすぐに分かるから、まわりは悔しくて、れいかに意地悪するんだと思う」
「・・・」
「でも、わたしは負けないわ」
「えらいわね、れいか」
「絶対に、わざと馬鹿なふりなんかしない」
「れいか!」
「ママも、色黒の真似なんてしないでね、お願いだから」
私が、一生懸命、テニスをしたり、ジョギングしたりして、日焼けに向け努力している時、
夫は、娘のれいかと同じことを言っていた。
「君がれいかのことを思うのは分かるけど、あの子はもっと強いと思うよ。
きれいすぎる女の子も浮いちゃうだろうけど、勉強のできる女の子もつらいんじゃないか」
私は考え過ぎなのかな~。
「ただいま」
「あ、パパだ!」
れいかが玄関に走っていく。
私は笑顔で夫を迎えた。
「ママ、それからね」
「うん」
「れいかちゃんのママはあんなにきれいなのに、どうしてあのパパと結婚したの、って、まりえちゃんが言ってたよ」
「おいおい、れいか、それはひどいぞ」
「ふふっ、ごめんね。パパ」
なるほど、この小太りで冴えない夫がパパなら、実はあまり嫉妬されていないのかもしれない。