ブログネタ:【ブログネタ投稿キャンペーン】10年後の自分に一言
参加中
中森明菜さんのアルバムが売れているとか。
個人的には、「セカンドラブ」とドラマの主題歌だった「リ・フ・レ・イ・ン」が好きでした。
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♪恋も二度目なら 少しは上手に
愛のメッセージ 伝えたい
あの時から10年。
3人の男性と交際をしたけれど、
私の心の中には、いつも彼がいた。
それを交際相手も察知したのか
「君はいつも他の誰かを見ているようだ」と言われたりした。
もう30歳になったのに、私はあの恋をひきずっている。
10年前、私は大学の2年生だった。
アルバイトで家庭教師をした。
相手は高校3年の男子。
他の教科はまずまずだったが、英語が致命的にできなかった。
とにかく受験できる学力まで引き上げなくてはならない。
そう考えた彼の母親は、伝統的に英語が売りだった私の女子大に、伝手を頼って家庭教師を探しにきたのだ。
地方出身で効率のいいバイト収入を求めていた私に、最初に話が合った友人が譲ってくれたのだった。
彼は素直な生徒だった。
英語も分からないわけではない。
聞けば帰国子女だとか。
小学5年で帰国し、英語塾に入った
オーストラリアでイギリス英語に近い発音に慣れた彼は、アメリカ英語中心の英語塾になじめず、かえって英語嫌いになったようだ。
時間がないが、まずは基礎から。
つまり、日本の中学校で習う英語から復習を開始した。
私が家庭教師をするようになったのが5月の連休明け。
夏休みに入る前の段階では、中学英語は完璧にマスターしていた。
「頑張ってるよね」
「先生の教え方がいいからさ」
「そう?じゃ、教員を目指そうかな」
「それは駄目だよ」
「どうして」
「俺だけの先生でいてほしいもの」
2人の眼が合う。
まずい。。。
私たちは2歳しか違わない。
故郷にいる3歳下の弟と同じように思っていたが、彼は弟ではないのだ。
「あなたの志望校のレベルまではまだまだよ」
私は話題をそらした。
「うん、頑張る」
彼も参考書に向かった。
そんな危険な瞬間は何度かあったが、何とか受験の時期までこぎつけた。
第一志望校を受験する日、私は大学の門で彼を待った。
小走りによってきた彼の笑顔。
優しい目に、正直、キュンとなった。
「大丈夫、合格するわ」
「ありがとう。ね、パスしたら合格祝いをくれる?」
「いいわよ。辞書がいいかな」
「それもいいけど。唇がいいな」
「え??」
「じゃ、ね。約束だよ」
そう言い残すと、彼はキャンパスに駆けて行った。
故郷の父が倒れた。
その連絡が入ったのは、その日の夕方だった。
父の入院代がかさむのはすぐにわかった。
弟の進学費用もいる。
私が退学して家計を支えるしかない。
大學中退=高卒の学歴になった私が選べる仕事は、故郷にはほとんどなかった。
ただ、高校時代の成績がよく、有名女子大に進学したことは隣近所で知られていた。
気の毒に思った父親の知人のあっせんで、何とか、地元の信用組合に就職することができた。
そこは得意の英語を生かせる職場ではなかったが。。。
故郷に帰った直後も、彼とはメールのやりとりだけしていた。
第一志望校に合格したという連絡に私は飛び上って喜んだものだ。
お祝いに辞書と、とても恥ずかしかったが、唇を大写しした写真をメールで送った。
「わたしも唇をあげたかったわ」という言葉を添えて。
そして彼のアドレスを削除し、メールが何度来ても返信をしなかった。
この夏、東京で就職した弟が妻と長女を連れて帰省した。
弟家族の幸せそうな様子は、すこし胸にチクリときたが、嬉しいものだった。
弟と2人だけになった時
「姉ちゃんが犠牲になって、俺だけ幸せになってゴメン」と言われた時は頭に来た。
「そんな風にいわれたら、かえって私がみじめよ」
いつの間にか大声で反論していた。
声を聞きつけてオロオロする母が気の毒だった。
「ゴメン、変なことを言って」
「あんたは奥さんと子供のことだけ考えていればいいの」
「うん。そうだ、隣町で英語のサークルができるらしいよ。新学期に英語の先生が高校に赴任してくるので」
「え?私たちの出た高校のこと」
「そう。日本で大学院を出た後、アメリカの大学に留学していたらしい」
「そんな立派な人がなんでこんな田舎に?」
「分からないよ。学校で働き出すよりも先に、英語好きの人を募っているんだって。ほら」
弟が差し出したのは、サークルメンバー募集のチラシだった。
第1回の開催は翌日だった。
「姉ちゃんも夏休みなんだから、行ってみたら」
翌日の夜、弟の運転する車で、会場となっている近隣センターまで行った。
「じゃ、また連絡して、迎えに来るから」
センターに入ると、英語サークルは2階の一室と案内が書かれていた。
どんな人が主催者なんだろう。
何人ぐらい集まっているのかな。
そんなことを考えながら、ドアの前に立った。
「こんばんは」
引き戸を開けた私に
背中を向けていた男性が振り向きながら
「こんばんは」と応じた。
私は凍りついた。
「ど、どうして」
そこには、あの彼が立っていた。
「ごめん、今夜から、というのは嘘なんだ」
「え?」
「弟さんに頼んで、この部屋を押さえてもらった。市役所に同級生がいるんだって?」
「え、ええ」
「英語サークルを始めるのは本当さ。今夜はリハーサルみたいなものなんだ」
「そうなの」
「混乱しているよね?当然だ」
「アメリカに留学したというのは?」
「ああ、弟さんから聞いたんだね、それは事実。実は留学する前から、弟さんとは知り合いだった」
「え?」
「先生が退学した後、あの女子大まで押しかけて、先生が入っていたサークルと合コンするという名目で先生の友達を探しだしたんだ。その友達から、実家の電話番号を教えてもらい、かけたら出たのが弟さんだった。男同士だからかな、僕の気持ちを分かってくれたよ。『あんな姉ちゃんのどこがいいのか』とは言ってたけど」
「あいつったら」
「でも僕は学生の身だろう?とにかく大学を出るまで何もできない。そうすると、弟さんから、先生の交際の様子が伝わってきて」
「だって・・・」
「僕たちは告白しあったわけでもないしね。でも何だか、不思議と僕の節目節目で先生の恋愛があって。。
結果、タイミングを失った僕は大学院に行き、さらに留学しちゃったわけ」
「そうなんだ」
「憎きアメリカ英語を克服しているうちに思ったよ。先生に彼氏がいても構わない、奪えばいいんだって。教員免許は大学で取得してあった。そうそう転部して、英文科に入っていたんだ。びっくりでしょ?」
彼の優しい目が私に語りかけてくる。
「ね、聞いてる?」
「あ、ごめん。うん、聞いてるわ」
「県の教育委員会に、アメリカから連絡したら、まずは講師で採用すると。来年の試験で受かれば本採用になるはずさ」
「ご両親は何て言ってるの?」
「彼らは兄貴がちゃんとしているからいいんだ。もちろん、きちんと話したし、了解しているよ」
「そう」
「先生」
「うん?」
「あの写真、保存してあるよ、ほら」
私は真っ赤になった。
自分の唇は見たくない。
「ごめん、恥ずかしいよね。ね、また初歩から教えてくれる?あなたが好きです、は?」
「I like you. よ」
「先生がいなくなった時の気持ちを言うよ、これで合ってるかな
I miss you, and I know I love her.」
「you と her がごっちゃになってるわよ」
「あ、そうか。また、教えてね」
「私でいいの?」
「先生、いや、キミしかいないんだ、僕の心には」
♪抱き上げて連れてって時間ごと
どこかへ運んでほしい
切なさはモノローグ 胸の中
戸惑うばかりの私
(セカンドラブ 中森明菜)
注:画像はお借りしました。
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家庭教師と生徒、という組み合わせは、広末涼子さんの主演ドラマ「聖女」の設定をパクリました(^▽^;)
NHKさん、ごめんなさい
「唇」はブロガーさんの記事から着想を得ました。
Yさん、ありがとうございます。
かつて、松田聖子派と中森明菜派がいましたね。
皆さんはどちら派ですか?
どちらも、よく知らないって人もいるでしょうね