香りの記憶 | スイーツな日々(ホアキン)

スイーツな日々(ホアキン)

大好きなスイーツと甘い考えに彩られた日々をつづっていきたいと思います。

数寄屋橋のスクランブル交差点。
夕闇が訪れてきた。
わずかに西の空にオレンジ色が見える。
これは夕日の名残り。
夜が来るのが怖い私の気持ちを映しているようだ。

信号が変わった。
ソニービル側から有楽町駅方面へと渡る。
何かが記憶を刺激した。
かすかな香り。
これはあの人の匂い?
そんなことがあるだろうか。
この広い東京で偶然に行き交うなんて。

帰りの新幹線は切符を買ってある。
急がなくては。
そう思いながら、振り返って自分が歩いて来た方を見やる。
暗くてもうよく分からない。
勘違いに決まっている。
夜が怖いだなんて思うから、変な錯覚を起こしたのだ。

メールが着信した。
「西空を見ていて気がつかなかったみたいだね。
手を振りながらすれ違ったのに」

もう一度目を凝らす。
あの人だ。
笑っている。
こちらに来るように、おいでおいでをしているみたいだ。
心が揺れる。
東京に戻った人。
思い出だけ神戸に残して。
私だけ残して。

時計を見た。
急がないと新幹線に遅れる。
でも、最終にはまだ間がある。
どうしよう。
母に預けた子どもの寝顔が目に浮かんできた。

スクランブル交差点。
文字通り、私の心をかき乱している。
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