旅立ちのポートピア | スイーツな日々(ホアキン)

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大好きなスイーツと甘い考えに彩られた日々をつづっていきたいと思います。



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あ、メールだ。
え?ここで待ち合わせなの?
どうしよう。


スイーツな日々(ホアキン)

ポートライナー に乗るのは久しぶりだわ。
あ~、ハーバーランドが綺麗。
今度は待ち合わせ場所、あそこにしてもらおうっと。

「市民広場」に着いたわ。
ポートピアホテル は、改札を出て右側ね。
こちらから入ると、ロビーが下に見えるのね。
今、ドアから出て行った人は、確か…。
ううん、人違いだわ。
あの人だとしても、もう関係ないわ。
大丈夫。

さ、ロビーに降りた。
彼はどこかしら。
まあ、正面から入って来たわ。
ポートライナーじゃなかったのかしら。

スイーツな日々(ホアキン)

「お待たせ」
「今日はジャケットなのね」
「まあね。キミのワンピース、春らしくて素敵だよ」
「ありがとう。これからどうするの?」
「うん、予約してあるから食事をしよう」
「ここのレストラン、高いわよ」
「気にするなって」

エレベーターに乗るの?
あ、この階は。
アラン・シャペル に行くの?」
「大当たり。さ、着いた。先に降りて」

「お待ちしていました。こちらの席でございます」
「いい眺めだね」
「素敵ね。それよりも、どうしちゃったの?」
「気にしないで」
「コースは承っております。お飲み物はどうされますか?」
「そうだな。ワインの赤をグラスで。銘柄は任せます」
「私も同じものを」

「来たこと、あるんだね?」
「え?」
「店に入ったとき、山側の眺望にみとれず、まっすぐテーブルの方に進んだもの」
「…」
「責めてるわけじゃないよ」
「あのね、あの」
「キミがつらい恋をしていたことは、知っている」
「あ」
「キミにも僕にもお節介な友達がいるからね」

確かに、このレストランには彼と何度か来た。
その時、部屋も利用した。
真珠の仕事をしている彼。
親の店を手伝っているだけだと言ってた。
「いかにもお坊ちゃん」という明るさが好きだった。
服を買いに来てくれるお客さんに見せる私の笑顔。
それとは違う笑顔にしてくれた。
分不相応なプレゼントにもいつか慣れていた。
彼にご家族がいると知りながら、どんどん彼に惹かれる一方だった。
でも、彼の奥様が、私の店に姿を見せた時、私は悟ったわ。
彼女が着るようなものは置いてないんだもの。
このまま続けたら、二人の女性が傷つけ合うだけ。



スイーツな日々(ホアキン)

「多分、このホテルにも思い出はあると思う。でも、こちらが逃げたり避けたりしているわけにはいかないよ」

きっと、この人の言う通りなんだ。
ちゃんと大学を出ているのに、アルバイトしかしない彼。
優しいけど、どこか頼りない人。
なのに、胸をキュンとさせる人。
きっと、この目のせいね。

「ここに連れてきたのは、それを言いたかったの?」
「それだけじゃないよ。ずっと隠してたけど、今度、就職するんだ」
「ま~、どこに?」
「正確な場所は分からないけど、神戸市の公立中学だよ」
「どういうこと」
「教員採用試験に受かっていたんだ。ごめん、黙ってて。少し悩んでいたからさ」
「おめでとう。なぜ、悩むの?」
「キミが辛い思い出がある神戸に住むのはどうなのかなって」
「それって…」
「でもさ、どこに住んでも、思い出を消せるわけじゃない。だろ?」
「ええ。でも、だから、それって?」
「うん。このまま一緒に神戸で暮らしてほしい。バレンタインに男性から告白してもいいよね?」
「も~、こんな嬉しいサプライズはないわ」
「じゃ、いいんだね」
「ええ」
「やった~」
「ありがとう」
「約束して」
「何を?」
「辛い恋の相手に街で会っても…」
「私には、大好きなダーリンがいるって言うわ」
「あはは」


「美味しかったね」
「本当に」
「前に食べた時より?」
「も~、意地悪言わないで」
「ごめんごめん。デザートの盛り付けが綺麗だったね」
「夢中で食べるあなたって、何だか可愛かったわ」

あの人との間に、もっとドロドロに近いこともいろいろあったけど、そこまで言うつもりはないわ。
まさか、あの人も邪魔することはないでしょうし。


「ねえ、ポートライナーはあっちよ」
「何言ってるんだ。ポートライナーになんか乗らないよ」
「え?」
「もちろん、車でもタクシーでもないよ」
「…」
「三宮までシャトルバスが出てるんだよ。知らないの?」
「知らなかったわ」
「やっぱりな。どうやってホテルに来ていたか聞きたいけど、これ以上は突っ込まないよ。それより、これから、いろいろモノ入りになるから節約しなくちゃね」

何かイベントがあったのだろうか。
バスは年配の女性がたくさん乗り込んできた。
彼女達の甲高い声のせいで、彼の声もうまく聞き取れない。
でも、隣に座った彼の温もりは感じる。
この温もりを生涯感じていたい。

「しまった」
「どうしたの?」
「あなたにあげるチョコ、溶けちゃったかもしれないわ」

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