バレンタイン・ウエディング | スイーツな日々(ホアキン)

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大好きなスイーツと甘い考えに彩られた日々をつづっていきたいと思います。

チョコは好き? ブログネタ:チョコは好き? 参加中


昨年末にお伝えしたとおり、神戸を舞台にした妄想を
「Sweet Love City KOBE」として不定期に書くことにします。

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あ、また一緒になった。
大丸神戸店 のバレンタインコーナー。
前に行った売り場でも見たばかり。
というか、10秒ぐらいうだろうか、しばらく視線が合った
30代半ばかな。
男性がチョコを買うって、どういうことなのだろうか。


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こちらに寄ってきた。
まぁ、笑顔だわ。
よほど甘いものが好きなのね。
私を見てる…。
どうしよう。
いいわ、話してみよう。

「ご自分にプレゼントですか?」
…え?無反応?
「あの、どこかでお会いしましたか?」
前のコーナーで視線が合ったのも覚えてないの?
「さきほどもバレンタインコーナーで、熱心に見ていらっしゃいましたわ」
「そうでしたか。気がつきませんでした。ちょっと、考え事をしていたものですから」
「よほどスイーツがお好きなんですね」
「それほどでもないんですけど。チョコを探すのって、どんな気持ちかなと思って」
「ワケありなんですね」
「はぁ。…今、お時間ありますか?」
あら、誘ってきたわ。覚えていないふりしたのも、この人の作戦だったのかしら。
「…」
「すみません、初対面なのに変ですよね」
「いいえ、誰かにお話したいことがあるんですね。お茶でも飲みましょうか」


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私たちはカフェラ に移動した。
「いや~、こういうお店があるんですね」
「神戸には?」
「昨年の春まで、岡本に住んでいました」
「なのに大丸には?」
「もちろん買い物をしたことはありますが、このカフェは初めてです」
「そういう人もいるんですね。ところで、何かお話があるんじゃないんですか?」
「ええ。男の僕がチョコを買うなんて変だと感じたでしょう?いえ、いいんです。当然ですから。僕はただ、好きだった女性がどんな気持ちでチョコを選んでいたのか、知りたかったんです」
「好きだった、ですか?」
「あ…。今でも好きですが。彼女はバレンタインでチョコを渡してくれる時、いつも、どんな風に探したかを、細かく話すんですよ。正直に言って、その話を聞くのは煩わしいと思っていました。いろいろリサーチなんてしなくても、コンビニのチョコをくれればいいのに、と」
「その方とは?」
「去年の春から連絡が取れなくなりました。人づてに、結婚すると聞きました。バレンタインデーに」
「まぁ、そうなんですか。何があったんですか?」
「電話もメールもつながらなくなって、ずっと訳が分かりませんでした。でも、今日、チョコを探している時に、思い当たることがあったんです」
「どんなことですの?」
「ホワイトデーは苦痛でした。何を選んでいいか分からなかったので。『ホワイトデーコーナー』という掲示がある店に行って、適当に買って渡していました。去年の春は時間もなかったものですから、手ぶらで行きました。ちょうど土曜日でしたから、梅田で一緒に買い物をすればいいやと思って」
「それは分かります」
「で、予算はこのくらいだから、悪いけど自分で買ってくれる?と言いながら、現金を渡したんです」
「え?冗談でしょう?」
「本当なんです。誕生祝いやクリスマスプレゼントの時に予算の話をしても、いつも怒らなかったから。それがいけないんですよね。金額ではなく」
「当たり前でしょう。ひどいわ」
「彼女はしばらく無言でした。そして『そういうことなのね』って、寂しそうな顔をしていました。でも、その後、笑顔になって、『お金はいらないから、食事をしようよ』と言って。遅いランチを一緒に楽しみました」
「それっきりってことなのね」
「はい」
「もう理由は分かってるのね」
「自分なりに。一度、出張した時に、土産物屋で髪飾りを見つけて、『似合うだろうな』と思い、買って帰ったんですよ。安物でした。なのに『キミに似合うと思って』と渡したら、ものすごく喜んでくれたんですよ。僕は、長い間、無理して喜んでくれたんだろうな、と考えていました」
「それは違うわ」
「ええ。彼女を思いながら選んだのが大事なんですよね」
「その通りだと思います。もちろん、高価なプレゼントをいただくのは嬉しいけど、それよりも、好きな人が、自分を思いながら、探してくれたり、選んでくれたことの方が、ずっと嬉しい。私はそう思います」
「今日、スイーツ好きの彼女が食べるなら、どのチョコかな、と考えながら、売り場を回っていて、『ああ、そうなんだ』ってようやく気づきました」
「チョコレートはどうするんですか?」
「彼女を思いながら、自分で食べますよ」
「バレンタインデーに?」
「それは、あまりに悲しいですよ」
「ごめんなさい」
「いいえ。それにしても、気づくのが遅すぎました」
「そんなことないわ」

遅くないわ。
こんなに自分の気持ちを率直に話してくれる男性は久しぶり。
平凡な容姿だけど、少しドキドキしてきちゃった。
この純粋そうな目のせいかしら。
いけないわ。

「そうでしょうか?」
「人は生涯に、『これは』という人に3回めぐり逢うと聞いたことがあります。ですから、次回は失敗しないようにすればいいんですよ」
「今は彼女以外の女性のことは考えられませんが、おっしゃった言葉を大事に覚えておきます」

3人か。
昔の彼と、今の主人。
もう1人いるのかしら?
この人?
ダメダメ、そんなことを考えちゃ。


「今はどちらにお住まいなんですか?」
「夏に転勤して東京です」
「わざわざ、この時期に神戸に」
「大阪に出張する機会があったものですから。週末を利用して。これから、デートした場所で思い出を拾ってきます」

拾うんじゃなくて、「納め」に行くのね。
きっと彼女の幸せを願いながら。

チョコの味、ほろ苦いかしら。



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