水木しげる先生が亡くなられた。


享年は93歳


生涯現役を貫かれての大往生といって差支えないだろう。



私が先生の作品を初めて観たのは、


子供のころかかりつけの小児科医院の


待合室に会った【墓場の鬼太郎】を、


母に読んでもらった時だった。




明るくもない絵柄で、


それでいて陰湿な翳りのない漫画に、


子供心に妙にひかれるものがあった。



以来少年マガジンに連載されていた、


【げげげの鬼太郎】


をはじめ多くの作品を心楽しく読ませていただいた。


長じて図らずも私自身が、


妖怪ものでデビューをしてしまうとは夢にだに思ってはいなかった。



先生は帝国陸軍兵士として、


ニューブリテン島の戦いで負傷をし、


左手をなくされて九死に一生を得て生還をはたされている。



私の91になる母も日本赤十字の従軍看護婦として、


インパール作戦に参じて九死に一生得て生還をしているので、


なにか同時代のにおいというものをつよく嗅ぎ取っていたのかもしれない。



はじめに明るくもない絵柄と書いたが、


先生の漫画からは人間の根っこの部分として、


底知れない明るさというものを感じずにはいられない。




究極の逆境にあって、


生死を分けるのは人の心根の余裕と明るさだと、


あるアウシュビッツ強制収容所の生き残りの


ユダヤ人が書いていたのを思い出した。



先生は心明るく闊達な人格であったのだろう。



なにはともあれ、


今先生はこの世を去られた。


誠に持ってお疲れ様であり、


かつありがとうございましたと言うしかない。



実によき人生を全うされたのである。





先生、おめでとうございました。



私はこの世で先生にお目にかかることはありませんでしたが、


いずれ訪れるあの世では、


色々とお話を伺いたいと思っております。



なに、その時は時間はたっぷりありましょうから、


戦争から妖怪の話まで、


“当事者” たちをふくめて


ワイワイと楽しく明るく盛り上がりたいと思っております。



取り急ぎましてここに先生のご冥福をお祈り申し上げる次第であります。


合掌(笑)