今日は顔面神経の側頭枝について書きます。
専門的な内容になりますので、興味のない方は読み飛ばしてください。
顔面神経側頭枝は、我々がよく行っている前額リフト、フェイスリフト、こめかみリフトの際に傷つけないように注意を要する重要な神経です。
この神経が損傷されると眉毛を挙上することが困難になります。
僕が形成外科医だった頃も、傷をつけないように注意をしていました。
顔面神経の走行は結構複雑な場合があり、その走行を把握するにはしっかりとした解剖の知識と経験が必要です。
まずこめかみをこのように切開して、浅側頭筋膜(superficial temporal fascia 別名 temporoparietal fascia)を挙上していきます。
顔面神経側頭枝は眉毛外側のこめかみ付近ではこの浅側頭筋膜の中を走行します。
浅側頭筋膜の下にはlooser areolar tissueがあらわれます。
この層には血管がほとんどなく、手術のときにはほとんど出血をおこなさないため、剥離をする層としてよく用います。
さらにその下には深側頭筋膜(deep temporal fascia)があります。
この白く光る組織が深側頭筋膜です。
この深側頭筋膜はさらに浅葉(superficial layer)と深葉((deep layer)に分かれます。
(「浅側頭筋膜」と「深側頭筋膜の浅葉」は名前は似ていますが、別ものなので混同しないようにしてください!!)
こめかみリフトだけでなく前額リフトを追加する際には頭頂部に向かって、剥離をしていきます。
頭頂部と側頭部は側頭稜(temporal crest)と呼ばれる部分が境界になっています。
我々が冠状切開による前額リフトを行う際には骨膜下で剥離を行うのですが、頭頂部と側頭部の剥離層の違いをうまく見極めることも必要です。
複雑な内容になってしまいましたが、こめかみ付近で顔面神経側頭枝を傷つけないようにするには浅側頭筋膜の下の層で剥離をおこなっておくことが必要といえるでしょう。
(安全だとわかってはいますが、僕はいつも慎重な剥離をするようにこころがけています。)
ただし頬骨弓付近では顔面神経は骨膜のすぐ上を走行するため、話しは変わってきます。
また次回にでも説明しましょう。
最後になりますが、お体を提供してくださったこの御遺体に深く感謝をさせていただきます。