「この世の全部を敵に回して」白石一文著・・・番外
白石一文が問う、00年代「人間失格」の書
人間は、どこから来て、どこに向かうのか--。生きがたい思いを漫然と抱く
すべての人に、作者から突き付けられた八万文字分の言葉の爆弾。
表紙を見て嫌な予感はしていたが、やっぱり予想通り、いや予想以上にヘビーな作品だった。
まず、面食らうのは、この本の作者。
この本の作者は白石一文では無く、白石の友人で、その友人が急逝した後この作品(手記)が奥さんにより発見され、それを白石が刊行したという設定。
最後まで読んでも友人の手記のまま終わる。
しかし、読後調べてみると、それは白石が設定したフィクションで本書は白石本人が書いている事が判明した。
そして、この本の内容は小説でも無く、単なるエッセイでも無い、作者の死生観が綴られた一種宗教的な論説である。
題名からわかる通り、著者はこの本を批判覚悟で世に送り出した。
「──私は子供たちのことも妻のことも愛していない。彼らは私の前からいなくなっても何ら問題のない存在である。いつ死んでくれても構わないと常に思っている。彼らは私の人生にとって厄介者である。──」
という、3度のメシより妻子を愛する私( ̄Д ̄;;にとっては卒倒しそうな独白から始まり、「生」とは何か「死」とは何か、「輪廻転生」や「霊魂」、「殺人」とその「復讐」などについて教祖の如く独断的に綴っている。
私も若い頃は一丁前に「生」とは何か?人生の意味とは?などと随分考え、頭を悩ました時期があったが、考えても無意味だと悟り、その後流されるままの惰性的人生を歩んでいる。。。(><;)
著者が語る「輪廻転生」や「霊魂」は信じるか信じないかの世界だし、その死生観についてもかなり偏見的で、私にはこの論説の賛否を判断できない。
人生や生きる意味を考えている方々には一読の価値があるかもしれない。
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