447冊目 ほかならぬ人/白石一文 | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

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ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「ほかならぬ人」白石一文著・・・★★★★

二十七歳の宇津木明生は、財閥の家系に生まれた大学教授を父に持ち、学究の道に進んだ二人の兄を持つ、人も羨むエリート家系出身である。しかし、彼は胸のうちで、いつもこうつぶやいていた。「俺はきっと生まれそこなったんだ」。
サッカー好きの明生は周囲の反対を押し切ってスポーツ用品メーカーに就職し、また二年前に接待のため出かけた池袋のキャバクラで美人のなずなと出会い、これまた周囲の反対を押し切って彼女と結婚した。
しかし、なずなは突然明生に対して、「過去につき合っていた真一のことが気になって夜も眠れなくなった」と打ち明ける。真一というのは夫婦でパン屋を経営している二枚目の男だ。「少しだけ時間が欲しい。その間は私のことを忘れて欲しいの」となずなはいう。
その後、今度は真一の妻から明生に連絡が入る。彼女が言うには、妻のなずなと真一の関係は結婚後もずっと続いていたのだ、と。真一との間をなずなに対して問いただしたところ、なずなは逆上して遂に家出をしてしまう。
失意の明生は一方で、個人的な相談をするうちに、職場の先輩である三十三歳の東海倫子に惹かれていく。彼女は容姿こそお世辞にも美人とはいえないものの、営業テクニックから人間性に至るまで、とにかく信頼できる人物だった。
やがて、なずなの身に衝撃的な出来事が起こり、明生は…。


昨年の直木賞作品。

受賞作の他「かけがえのない人へ」を収録。

恋愛小説など、今更いいオッサンにとってはこっ恥ずかしくて手にとるのも赤面物なのであるが、直木賞なので避けては通れないのである。


ムム、これは中々いいんじゃないの。

只の惚れた腫れたの単純な恋愛物で無い、少し歪んだ恋愛関係が描かれている。

ストーリーに派手さは無いし、奇を衒わない外連味の無い筆致だがどこか芯の強さを感じさせる。


最近、この手の小説で特に男性作家に気に入った人は少ないが、この作家とは相性いいかも。

しかし、なんでこの作品が芥川賞じゃ無くて直木賞なのかが分らない。


ほかならぬ人へ/白石 一文
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