441冊目 楢山節考/深沢七郎 | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

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ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「楢山節考」深沢七郎著・・・★★★★

(1914-1987)山梨県石和町生れ。少年時代からギター演奏に熱中し、戦時中17回のリサイタルを開く。戦後、日劇ミュージック・ホールに出演したりしていたが、 1956(昭和31)年『楢山節考』で、第1回中央公論新人賞を受賞し作家生活に入る。『東北の神武たち』『笛吹川』などを発表するが、1960年の『風流夢譚』がテロ事件を誘発し、放浪生活に。埼玉県菖蒲町でラブミー農場を営んだり、今川焼きの店を開いたりしながら『甲州子守唄』『庶民烈伝』などを創作、1979年『みちのくの人形たち』で谷崎潤一郎賞を受賞。


楢山節考の舞台は信州の山奥の貧村。

この作品には多くの地元に伝わる唄が出てくる。

それらの唄から着想を得て本作は生まれたようだ。


1983年、本作が映画化されカンヌ映画祭グランプリを獲得した。

映画は見ていないのだが、その時の報道の記憶から本作は「姥捨て」の暗く陰湿なイメージが読む前から先行した。


しかし、作品の雰囲気はあっけらかんとしている。

息子の後妻が、旦那の四十九が開けた早々祭りに来ておりんの家に上がり込み、ご馳走を鱈腹食べる件があるが、その奔放さと信州弁(私の地元の遠州弁にも似ている)でのやりとりが面白く笑った。

貧乏家ながらも家族仲はよく、主人公の老婆おりんに生き難さはない。

しかし、おりんは自分の命に執着しない。

山に捨てられる事になんら恐怖を感じるどころか、自らが率先して行きたがり、まだかまだかと待ち遠しいくらいの心の持ちようである。


今の日本の高齢化社会はどうだ?

生きる目的、意味も無くただただ生かされている老人や高度医療により延命措置をされた人たち。

その人たちが現役世代に負担を強い、現役世代の方が青色吐息。

果たして、こんな長寿化を喜んでいいもんだろうか?


読後、人生ってなんだろう?

人の命の重さってどの位?

などと、久しぶりにそんな根源的な問題を想起させた作品であった。


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