- 「都会と犬ども」M.バルガス・リョサ著・・・★★★☆
- 大人の世界に目覚める思春期の少年たち。彼らを取巻く堕落した社会。自己の衝撃的な体験を見事に昇華させ絶讃を博したラテンアメリカ文学の旗手、’63年の傑作。厳格な規律の士官学校で起こった試験問題盗難事件―密告、いじめ、軍事教練中の射殺…暴行、飲酒、喫煙、盗み、ばくち、カンニングなど、鬱屈しつつも虚勢を張った粗暴な振舞いをする少年たち。弱肉強食の悲情な世界での彼らの成長過程を通して、腐敗、堕落、暴力、不正、偽善にあえぐ現実社会を告発する!
リョサは1936年生まれのペルー人作家でつい先日、本年度のノーベル賞文学賞を受賞した。
ラテン文学の旗手として地位を確立する一方で政治にも積極的に参加、1990年には大統領選に立候補するがフジモリ大統領に敗れる。
本書はリョサの初長編作品(1963年)で代表作の1つに数えられている。
前から図書館のラテン文学の書棚に行く度に気になっていた作家の1人なのであるが、何か小難しいイメージがあって手が出なかったが、ノーベル賞受賞という事で読んでみた。
本書は著者自らの体験を元に、軍事士官学校での少年たちの生活を描いている。
危惧した読み難さは無いが、1人称、3人称が入り乱れ、場面転換が多く、時間軸も過去と未来を行き来するのでちとややこしい。
前半は特に事件が起こる訳でもなく、断片的に出来事が綴られていくが、後半の訓練中に起こった事故を巡り大きく動き出す。
読み終わり思い出したのが、村上龍の「コインロッカー・ベイビーズ」。
共に少年たちの鬱屈、暴力、反抗などを描いている点で共通している。
「コイン~」に較べ、本書はペルー社会の現実に即したノンフィクション的、反政治的な色合いが強い作品であると思うが、物語としては「コイン~」の方が数段面白く、独特である。
この作品も、もう少し物語の味付けをしてくれれば(特に前半)面白く読めたと思うのだが。。。
都会と犬ども (新潮・現代世界の文学)/M. バルガス・リョサ
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