「家族シネマ」柳美里著・・・★★★
失われた家を求め、映画出演を決めた家族を描いた「家族シネマ」、同棲中の部屋を飛び出した登校拒否の過去を持つ女を描いた「真夏」、転校生といじめを題材にした「潮合い」―心に傷を負った人間が強く生きようとする姿を描き、家族が価値あるものかを現代に問う名作。
柳美里(ゆう みり)は在日韓国人で本作で芥川賞を受賞。
在日韓国人の受賞ということで韓国では異常に盛り上がったり、サイン会で爆弾騒ぎがあったりして一時期メディアを騒がせた。
私小説作家という事で本書の3編の主人公も著者自身がモデルとなっている。
「家族シネマ」は父母が別離し別居している家族たちが集まり映画撮影をするという、ちょっと非日常的な風景を描いている。
別居している家族が集まれば、ちょっとしたぎこちなさや緊張感があると思うんだけど、現代の人間関係の希薄さを描いているのだろうか、登場人物たちの心像描写が薄く全体的に緊張感に欠け”ボワ~ン”としている。
「真夏」については既に記憶が無い。
「潮合い」は小学4年の転校生のイジメを題材に、加害者とその同調者側の心の動きと駆け引きを描いている。
これが一番インパクトあった。