「いちげんさん」デビット・ゾペティ著・・・★★★
僕は旅が好きで、なんとなく日本に辿り着き、京都の大学で日本文学を勉強している。アルバイトで、目の不自由な若い女性・京子に、対面朗読をすることになって、文学に憧れをもつ京子とうちとけていき、彼女の心に受け入れられていくのを知った。でも、京都の『街』は、いちげんさんは受け入れてくれない―。
作者はスイス生まれの外国人でありながら、日本に在住し日本語で執筆活動をしている。
主人公は(作者自身をモデルにしていると思われる)京都の大学で日本文学を勉強している留学生でアルバイトで目の不自由な女性、京子に本の対面朗読をするうちに恋愛関係に発展していく。
冒頭に主人公が谷崎潤一郎の「鍵」の初版本を買う場面が出てくるが、盲目の女性とういう設定は谷崎の「春琴抄」をモデルにしているかもしれない。
外国人が書いたとは感じさせない非常に素直で流暢(?)な文体でぎこち無さは全く無い。
主人公も日本語に堪能で、オンボロアパートに暮らし日本の生活文化にもどっぷりと浸かり、日本(京都)に馴染んでいるつもりなのだが、周りの日本人は観光客扱いして慣れない英語で喋り掛けてきたり、修学旅行生に「外人だ、外人だ」と連発される。
盲目の日本人女性に、周りの景色や状態を留学生が日本語で説明しているという視点が興味深く面白いが、ストーリー展開が余りに素直で少し捻りが欲しいと感じた。
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