153冊目 中原の虹/浅田次郎 | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

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ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「中原の虹」浅田次郎著・・・★★★★★

「鬼でも仏でもねえ。俺様は、張作霖だ」
「汝、満州の覇者となれ」と予言を受けた貧しき青年、張作霖。のちに満州馬賊の長となるその男は、大いなる国の未来を、手に入れるのか。
栄華を誇った王朝に落日が迫り、新たなる英雄が生まれる。

 

 

私が初めて浅田の作品を読んだのは「蒼穹の昴」でした。

 

もう10年以上も昔のことです。

その面白さに興奮しながら、文字通り寝食を忘れ貪るように読みました。

もし、初めての浅田作品が「鉄道員(ぽっぽや)」だったり「地下鉄(メトロ)に乗って」だったら浅田作品にはそれ以上触れていなかったかもしれません。

本書は「蒼穹の昴」の続編に当たる、(この間に「珍妃の井戸」がありますがちょっとコケた)全4巻、総ページ数1423ページに及ぶ大作です。

 

 

「蒼穹の昴」が西太后に仕えた”最後の宦官”春児の出世物語だったのに対し、この物語は中国最後の王朝”清国”の末期に運命を共にした人間たちの物語です。

 

貧しき馬賊出身の総攬把”張作霖”、絶大なる威権を誇る西太后、西太后に仕えた最後の宦官李雲春(春児)、子ども時代に生き別れ張作霖の手下となった春児の兄李春雷、軍を掌握し政権奪取を目論む袁世凱。。。等等

実に個性的で魅力的な人物たちが登場します。

ストーリーは史実に基づきながらも浅田流に仕立てられた人物像や歴史変動が描かれています。

そして特筆すべきは浅田ならではの丹念な取材に拠るところの、リアリティを持った精緻な描写です。

エンターテイメント作品としては、いささか衒学的なきらいもありますが良い研究材料になるかもしれません。

こういう本を読むと正史に興味が湧き文献などを探索したくなります。

 

 

という訳で今回ちょっと早足で読み切りましたが1回や2回じゃちょっと読みこなせません。

 

孤島に文献と電子辞書を持ってじっくりと読みたい歴史大作でした。

なお、本書を読む際は必ず「蒼穹の昴」を先に読んでおいて下さい。

 

 

中原の虹 第一巻/浅田 次郎
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