「あべこべ」久世光彦著・・・★★★☆
弥勒さんが現れると、不思議なことが起きる。懐かしい女たちの住むあっちの国へ、風が吹く。人生をいとおしむ季節に訪れるのは過去か、幻か? 月の光に彩られた、九つの可笑しくて、やがて切ない幻想連作短篇集。
私の世代で久世光彦といえば「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」などTVドラマの一時代を築き上げた名プロデューサーとしてのイメージが強い。
執筆を始めたのは50歳を過ぎてからだったが、著作は人気、評価とも高い。
本書は連作の短編集だが、どれもちょっと不思議な話で、どこかノスタルジックでユーモアと哀愁があり、ちょっとHである。
その描写が巧く筆が立っている。
主人公を取り巻く登場人物もみんなキャラが立っていて面白い。
不思議な能力と雰囲気をもった女優の弥勒さん。何でも点数をつけてしまう文芸評論家の穴さん。編集者の眠さん。骨董屋の二股さん。
ちなみに主人公(作家)が著者本人で、弥勒さんは樹木希林、穴さんは福田和也らしい。