130冊目 あべこべ/久世光彦 | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

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ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「あべこべ」久世光彦著・・・★★★☆

弥勒さんが現れると、不思議なことが起きる。懐かしい女たちの住むあっちの国へ、風が吹く。人生をいとおしむ季節に訪れるのは過去か、幻か? 月の光に彩られた、九つの可笑しくて、やがて切ない幻想連作短篇集。

 

 

私の世代で久世光彦といえば「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」などTVドラマの一時代を築き上げた名プロデューサーとしてのイメージが強い。

 

執筆を始めたのは50歳を過ぎてからだったが、著作は人気、評価とも高い。

本書は連作の短編集だが、どれもちょっと不思議な話で、どこかノスタルジックでユーモアと哀愁があり、ちょっとHである。

その描写が巧く筆が立っている。

主人公を取り巻く登場人物もみんなキャラが立っていて面白い。

不思議な能力と雰囲気をもった女優の弥勒さん。何でも点数をつけてしまう文芸評論家の穴さん。編集者の眠さん。骨董屋の二股さん。

ちなみに主人公(作家)が著者本人で、弥勒さんは樹木希林、穴さんは福田和也らしい。