「告白」町田康著・・・★★★★
人はなぜ人を殺すのか――河内音頭のスタンダードナンバーで実際に起きた大量殺人事件<河内十人斬り>をモチーフに、永遠のテーマに迫る渾身の長編小説。殺人者の声なき声を聴け!
本書は明治26年大阪河内で実際に起きた大量殺人事件”河内十人斬り”を題材に、その首謀者である城戸熊太郎の半生を描いた物語である。
主人公の熊太郎は幼少の頃から「思弁的で内向・内省的な人間」で”思いと言葉と行動が一致”せず、世間一般人との齟齬が生じ孤立、自堕落な生活を送る日々であった。
そんな、熊太郎にも弟分(弥五郎)ができ、美人妻(縫)との結婚まで果たすが、熊太郎の自堕落な生活は改まらないまま妻の浮気が発覚、金銭のトラブルにも見舞われ、とうとう熊太郎の”思いと言葉と行動”が一致し殺人事件にいたる。
史実に基づいたストーリーながらそこは町田作品、随所に主人公の珍妙、滑稽、意味不明な言動が炸裂、笑いとペーソスに溢れている。
人は誰でも”思いと言葉と行動が一致”せずもどかしいという体験は持っていると思う。この作品はそこにテーマを置き人間の孤独感、不条理を描いている。
そんな、主人公に読者(私)は共感し思いどうりにならない人生の儚さを憂う。
まったくもって私はこういう話には弱い。読み終わって涙を流しそうになった。
しかし、本書は途中で放り投げようかと思っていた。
あまりにべらべらべらべらと屁理屈、無駄が多すぎる。
新聞連載の長編だったせいかもしれないがページ稼ぎとしか思えないようなくどい言い回し、余分な描写。
特に前半が長い。
676ページに渡る長編だがこの半分位だったら★★★★☆にしたに違いない。
やっぱり著者は短編がいいと思う。
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