110冊目 告白/町田 康 | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

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ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「告白」町田康著・・・★★★★

人はなぜ人を殺すのか――河内音頭のスタンダードナンバーで実際に起きた大量殺人事件<河内十人斬り>をモチーフに、永遠のテーマに迫る渾身の長編小説。殺人者の声なき声を聴け!

 

 

本書は明治26年大阪河内で実際に起きた大量殺人事件”河内十人斬り”を題材に、その首謀者である城戸熊太郎の半生を描いた物語である。

 

主人公の熊太郎は幼少の頃から「思弁的で内向・内省的な人間」で”思いと言葉と行動が一致”せず、世間一般人との齟齬が生じ孤立、自堕落な生活を送る日々であった。

そんな、熊太郎にも弟分(弥五郎)ができ、美人妻(縫)との結婚まで果たすが、熊太郎の自堕落な生活は改まらないまま妻の浮気が発覚、金銭のトラブルにも見舞われ、とうとう熊太郎の”思いと言葉と行動”が一致し殺人事件にいたる。

史実に基づいたストーリーながらそこは町田作品、随所に主人公の珍妙、滑稽、意味不明な言動が炸裂、笑いとペーソスに溢れている。

人は誰でも”思いと言葉と行動が一致”せずもどかしいという体験は持っていると思う。この作品はそこにテーマを置き人間の孤独感、不条理を描いている。

そんな、主人公に読者(私)は共感し思いどうりにならない人生の儚さを憂う。

まったくもって私はこういう話には弱い。読み終わって涙を流しそうになった。

 

 

しかし、本書は途中で放り投げようかと思っていた。

 

あまりにべらべらべらべらと屁理屈、無駄が多すぎる。

新聞連載の長編だったせいかもしれないがページ稼ぎとしか思えないようなくどい言い回し、余分な描写。

特に前半が長い。

676ページに渡る長編だがこの半分位だったら★★★★☆にしたに違いない。

やっぱり著者は短編がいいと思う。

 

 

告白 (中公文庫 ま 35-2)/町田 康
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