旅人日記 -10ページ目

ロライマの奇跡 ~初日~

Roraima1-1 昨日の酔っ払いツアーのお陰で朝から少々頭が痛い。
置いていく荷物をまとめ、宿に預けてチェックアウト。朝食を取っていると、ホセが古びたランドクルーザーに乗ってやってきた。
ブラジル人の4人組は通信事情が悪いためかその後連絡が取れず、ホセは結局俺ら3人だけの専用ガイドということになった。
ま、むちむちぷりぷりのブラジル娘が来るとは限らなかったわけだし、ひょっとしたらむさくるしいおっさん連中と一緒のテント生活になっていたかも知れないのだ。それに俺らだけなら余計な気兼ねもしなくて済むというものだ。
「そのかわり230USドルにさせてもらうけど、いいか?」
その程度なら全然かまわんよ。いざ出発だ♪

町から街道を北上し、さらに四駆でなければ走れない山道を越えて、二時間ほどでパライテプイの村に到着。
ペモン族の村で、村の男たちはほぼ全員ガイドかポーターを生業としているらしい。
ちなみに町での食料調達も村でのポーターの雇い入れも、ホセがてきぱきとこなしてくれた。さすがはこの道20年のベテランである。見事な手際だ。

Roraima1-2 村で軽く昼食を済ませてから、いよいよ登山開始。
といっても、この日は山の麓のキャンプ場までの緩やかな降り道を進む楽々行程なのだ。時々丘に隠れながらも徐々に近づいてくるロライマの姿を眺めながらゆっくりと歩く。
ゆっくりと歩いているつもりなのだが、気がつくとなぜかガイドのホセよりもかなり先に進んでいる。
まあほとんど迷いようのない一本道なので問題はないのだが、ガイドといったら普通、客を先導して前を歩くものだろう。殿を務めているつもりなのだろうか。

途中の景色のよい場所で休憩していると、最後尾のホセが追いついてきた。
見ると、体中汗だくで、はあはあ息を切らしている。大丈夫かよ、オイ。
「初日だから荷物が重くてね」
と言い訳していたが、食料やテントなどは俺らも分担して持っているのだ。試しにホセの荷物を持ってみたが、俺らの荷物より若干重いものの、それほどきついとは思えない。
ひょっとして口だけのへなちょこガイドなんじゃないか、コイツ。この道20年の経験はどうした?やや不安になってきたぞ。

Roraima1-3 夕暮れ時を少し過ぎた頃に本日のキャンプ地に到着。
テントを張るともう辺りは真っ暗。周囲の草地には蛍の光がちらほら。そして夜空には満天の星空が。あたかも俺らを歓迎してくれているかのようだ。ガイド料のことも含めて結構幸先いいんじゃないかい。

晩飯はキャンプ場に併設されたボロ小屋でホセとポーターが作ってくれた鶏の野菜煮込みだ。
これが意外なほどの美味!やるじゃないかホセ!見直したよ。なにしろ飯が不味いとそれだけで気力が失われるものだ。ガイドとしてはへなちょこかもしれんが、料理人としてこれだけまともな仕事をこなしてくれるなら、この先も安心である。

食後に星を眺めていたら、何気にホセが横に座り、独り言のよう愚痴をこぼしはじめた。
「ブラジル人がキャンセルしたのは俺のやり方が何か間違っていたからなのかもしれない・・・」
気にするなホセ。ブラジル娘が来ていたとしてもお前の相手は残り物だったのだ。
「若いうちにはそういうこともあるさ」
と、ヤツの方が年上なんだが、軽く肩を叩いてやった。
「本当はもう少し連絡が取れるまで待つべきだったかもしれないけど、君らとの契約もあるしね。責任というやつさ」
お?なかなか殊勝なことをいうじゃないか。気に入ったぞ。
明日からもよろしく頼むと、堅い握手を交わして就寝。

ロライマの奇跡 ~序章~

Gransabana1 地響きがすると思って戴きたい。
一歩一歩大きくなるその響きから、ヤツらの跫が明らかにこの洞窟を目指しているのがわかる。その重低音が洞内に鳴り響く度に、脆い砂岩の壁面からパラパラと砂がこぼれ落ちる。
すでにガイドもポーターもヤツらにやられてしまった。同行の隊員YもTも途中ではぐれてしまい行方がわからない。私と同様に他の洞窟に逃げ込んだか、それとも運良く下山口まで辿り着いているだろうか?
・・・・・ズシン
来た。ヤツらだ・・・。
ガラガラガラズシャン・・・グルルルル、フッーフッー・・・
息遣いがすぐそこまで近づいてきた。私ももうここまでか。
グゴゴゴゴゴ・・・ゴワーース!!!!!
ん?・・・ご、ごわす?


   ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


ブラジルのマナウスからバスを乗り継いで北上し、昨日国境を越えてベネズエラにやってきた。
国境を越えてすぐの町サンタエレナにて旅仲間のYさんと数ヶ月ぶりに合流。これから一緒にロライマ山に登頂しようという計画なのだ。

知らない人のために説明すると、ロライマ山というのはギアナ高地にあるテプイと呼ばれるテーブル状の山の一つである。
ギアナ高地には同様のテプイが100以上あり、外壁は垂直で標高差約1000メートル、大地にズドンと浮かび上がるその巨大な様は他では類を見ない雄大な光景を作り出している。地質は20億年前のものといわれ、遥かゴンドワナ大陸時代の地球の姿を今も留めている。地球最後の秘境といっても過言ではない。山頂には下界の影響を受けることなく原始の姿を留めながら独自の進化を遂げた植物が多いという。

これから俺らが登るロライマ山はギアナ高地最高峰(2800メートル)で、ベネズエラ・ブラジル・ガイアナ三国の国境線が山上の大地で合している。頂上面積280平方キロ(東京ドーム6000個分、23区の半分弱)。ロライマとは地元原住民ペモン族の言葉で「偉大」を意味する。コナン・ドイルの小説「失われた世界」のモデルにもなっており、周囲のサバンナ地帯はいつ恐竜が出てきてもおかしくない程の太古の雰囲気を醸し出している。映画「ジュラシックパーク」の撮影に使われたのもこの辺りだ。実際、ペモン族の中には得体の知れない巨大な獣や空を舞う巨大な黒い鳥を目撃したものもあるらしく、それらは伝説の中の神として崇められ、ロライマ山も不可侵の聖域として守られている・・・というのは俺の勝手な妄想だが、とにかくそんな山なのだ。

Gransabana2人跡未踏の奥地に(ウソ)二人だけで突入するのはやや危険と判断し、案内人を雇うことにした。
万が一、恐竜に襲われた時のための生贄として使うのだ。
サンタエレナの旅行代理店をいくつか回るが、誰もそんな危険な役は引き受けたがらないとみえ、
「4人以上集まればガイドを派遣しよう。5泊6日で一人250USドル。8日間なら300USドルだ」
などと、こちらの期待を裏切る料金を提示してくる。
むぅ、根性なしどもめ。
そんな中、街中で一人の男が声をかけてきた。
「ロライマに登るのか?俺が8日間200USドルで案内してやってもいいぞ」
へ?安いじゃないか。今度は逆に安すぎて何かワナでも仕掛けられているのかとやや不安になったきたぞ。
詳しい話はまた夜に、ということでいったんその男と別れる。
その後、数日前にマナウスで出会ったT君が到着し、新たな隊員として加わることに。

その晩、宿の下の中華レストランで3人で食事をしていると、昼間の男が現れた。
男の名前はホセ。36歳。この道20年のベテランガイドらしいが小柄で童顔のためかなり年下に見える。
英語はほとんど話せないが、ゆっくりとわかりやすいスペイン語を使ってくれるのでとりあえず意思疎通の上では問題ない。
「明後日から8日間の日程でブラジル人の4人組を案内する予定なんだ。ポーターを追加で雇えば君たちも一緒に案内することができる。ブラジル人たちは300USドルだが、君たちは特別に200USドルにしてあげよう」
そういうことか。納得だ。

ん?まてよ?
ブラジル娘4人と8日間一緒に過ごすわけか。それってかなり美味しい状況なんじゃないか?当然年功序列で俺から先に相手を選ぶとして、残った一人は、そうだなホセ、お前にやろう。
と、まだ来るのが娘たちだと決まったわけでもないのに、しょーもない妄想が頭をよぎったのはここだけの話だ。

Gransabana3 一通り話がまとまった後、ホセが別のガイドを紹介してきて、翌日はそのガイドの車でグランサバナ一日ツアーに出かけることに。
周辺のサバンナ地帯に点在する数々の滝を巡るツアーなのだが、運転手も含めて道中ビール飲み放題の酔っ払いツアーとなってしまった。
酔いすぎて途中何を見たのかよく覚えていないが、まあ楽しかったからよし。
ちなみに写真はその時のものである。

アマゾン探検

Amazonas マナウスからさらにアマゾン河の支流を遡り、ジャングルの奥地を探索してまいりました。

前人未到の広大なジャングルに覆われた大アマゾン。全てを食らいつくす獰猛なピラニアの群れだとか、巨大アナコンダだとか、巨大人喰いナマケモノだとかがいつ襲ってくるかわからない。鬱蒼と生い茂る森の中にはいたるところに毒蛇や猛毒のタランチュラがひそんでいるのだ。裸身の原住民が突然吹き矢を放ってくる可能性だって十分考えられる。我々探検隊は周囲を警戒しながら、一歩一歩奥へ奥へと進んでいくのであった・・・。

・・・とまぁそんな雰囲気をひそかに期待していたんだけど、所詮はただのツアーなんだよなー、これが。

おい、そこのスペイン人おばはん連中、ワニごときできゃーきゃーはしゃぐな。そこのフィンランド人新婚カップル、いちゃついている場合じゃないだろう。そこのアメリカ人のデブ親父、アマゾンにまで来てくだらんアメリカンジョークを飛ばしまくるのやめろ。
ったく、どいつもこいつもアマゾンをなんだと思っているんだ。もっとこう「川口浩探検隊」ばりの緊張感を醸し出さんかい。

現地人なんかポル語がばりばり通じるぢゃないか。おいそこのブラジル人ガイド、現地の親父と下ネタ話で盛り上がっている暇があったら、あそこの可愛いネーチャンを俺に紹介せんかい!(アマゾンの娘って美人率がかなり高かったと思う^^)

結局アナコンダもタランチュラも見れなかったしなー・・・。それでも一応くさるほどのワニと河イルカとパイソンは見ることができたし、お約束のピラニア釣りやワニ狩りも楽しめた。現地の子供たちとサッカーしたりもして、それなりに満足して帰ってまいりました。ピラルクやピラニアも食べることができたし、とりあえずこれでよしとしておこう。

ちなみに2泊3日のツアーで料金は405Rsを値切って350Rs(約17500円)。全体的な内容を考えるとちと高かったなぁ。やっぱりルレナバケ(ボリビア)の方に行っておくべきだったか・・・。

さてと、無事アマゾンも済んだことだし、ぼちぼちブラジルを脱出するとしようかな。

ジョージタウン(ガイアナ)

Georgetown スリナムから船で国境を越えてガイアナに入国。
国境から乗合いタクシーに乗って首都のジョージタウンに到着。
町に着きお目当ての安宿を目指すと、なにやらそちらの方から煙がモクモクとわいている。さらに消防車がサイレンをならして宿の方角に向かっていった。
ひょっとして、宿が火事?
「着いたら宿が燃えていた」なんて話になったらどうしよう。
別の宿を探すのも面倒だぞ。ネタとしては最高なんだけどネ。
不安と期待を抱きながら宿に到着。
残念ながら、いやもとい、幸いにも燃えていたのは宿ではなく、宿の前の草むらでございました。メデタシメデタシ。

というわけで、荷物を置いてさっそく町歩き。
スリナムまでは中国系やインドネシア系の人たちが結構いたからよかったんだけど、ここガイアナではアフリカ系の黒人ばかりが目に付く。統計ではインド系の住民が半数近くいるはずなんだけどどこへ行ってしまったんだ?ざっと見渡した感じでは2割くらいしか見かけない。中華のレストランも多いものの、中国系住民の姿もほとんど見かけない。
こいつはちと目立ってしまうぞ。狙われたらやだなぁ。

聞くところによると、この町はかなり治安が悪いそうなのだ。
夜歩きなんかマジで危険で、現地人でも2ブロック先に行く時でさえタクシーを使うらしい。
実際、路上には生きてるんだか死んでるんだかわからんやつがゴロゴロしているし、目つきの悪いにーちゃんもかなりいるぞ。草むらで蟻かなんかを捕まえては口にしてるやつもいるし・・・。

目立たないように気を使いながら観光するのも気疲れするなぁ。
ブラジルがやたらと恋しく思えてきた・・・。
もういいや、インド料理だけ食べて、明日の夜行でとっとと脱出してしまうとしよう。

んでインド料理屋を探し回ったのだが、なかなか見つからない。
ロンプラに載っている店も4~5軒あたってみたけど、全部閉店していた。どういうわけだ?
インド系とアフリカ系の住民の対立が激しいお国柄。アフリカ系からの嫌がらせで一斉退去してしまったのだろうか・・・?

人に聞いてまわってやっと1軒発見。
・・・と思ったら、お持ち帰り専用のファーストフード店じゃねーか。
まともな料理が食べたかったのに・・・ちっ。
しぶしぶローティーに包んだチキンカレーを注文。
む。こ、これは。懐かしいインドの味!悪くないぞ。いけるいける。
ラッシーも出せといいたいところだったが、大好物の「V8」が置いてあったので許してあげよう。
カレーにV8(野菜ジュースね)、なかなか素敵な組み合わせだ。

そんなこんなで、翌日の夜行でブラジル国境に向かい無事ギアナ三国の旅を終了。
結局ブラジルのベレンからボアビスタまで、ギアナ三国経由での移動費は総計約250USドルでございました。
うひゃぁ、結構かかったなぁ・・・。

パラマリボ(スリナム)

Paramaribo スリナムの首都パラマリボでございます。
ギアナ三国の中では比較的物価が安い所なので一息ついているところでございます。
(それでもブラジルの1.5~2倍くらい・・・^^;)

元オランダ植民地だけあって、インドネシア系の住民が多く、そのお陰でここではとても美味しいインドネシア料理を食べることができる。といっても屋台物なんだけどね^^;
ナシゴレンやバミーなど、南米でこれほど本格的なアジア料理を味わえるとは思わなかったなー。
仏領ギアナではベトナム料理が結構いけたし、次のガイアナではインド料理に期待できそうだ♪

それにしてもギアナ三国って白人がほとんどいなくてアジアやカリブやアフリカのどっかを旅しているような気分だ^^
立派なモスクもあるしね。
南米じゃねーなー、ここ。

カイエンヌ(仏領ギアナ)

Cayenne アマゾンを渡り終えた後、本当はマカパの町で1~2泊過ごしてゆっくりするつもりであった。
物価の高い仏領ギアナで土日を過ごすのが嫌だったのだ。
(土日はほとんどの場所が閉まるため、無駄に時間を過ごさなければならない可能性があるのだ)
ところが、マカパの町は何もなくて非常につまらなそうなのだ。しかも安宿も満室ときた。
ターミナルに行ってみると、国境へ向かうバスの座席が売切れ寸前状態。
これはもう乗ってしまえと神がささやいているようなもんだな。
成り行き任せは大好きなので、船旅で少々疲れていたもののそのまま夜行バスに乗り込んでしまった。

ところがこのバス、エアコンも付いてない上にトイレも壊れてやんの。しかも休憩時間もごくわずかしかくれない。
ブラジルでこんなバスに乗る羽目になるとは・・・^^;
とにかく、12時間の夜行移動を終え、国境の町オイアポケに到着。
まだ朝靄が霞む中、国境の小さな川を渡し舟で対岸のサンジョルジュに渡る。

ついにギアナ三国に突入である。まずは第一国目の仏領ギアナ。
フランスの海外県で、通過はユーロ、公用語は当然フランス語だ。

首都のカイエンヌまでは乗合いタクシーが走っている。
気になるお値段は・・・よ、よんぢゅうゆうろだとぉ??
たかだか3時間の移動だぜ? 親父、いい商売してやがんな!
「ウィ、ムッシュー、サバビエン?」
む、ムッシューときたか・・・その響きは悪くないな・・・。

さらにカイエンヌでの最安宿の料金はドミ1泊で、にぢゅうゆうろ・・・。
ギリギリ許容範囲ではあるが、こんな国では長居していられんな。
着いたばかりだが、とっととおさらばするとするか・・・。
1泊だけして、駆け足で市内観光を済ませ、翌日には隣国のスリナムに向けて旅立ったのであった。

物価はバカ高かったけど、人は親切で礼儀正しかったなぁ。
一度ネット屋で1ユーロ分使ったら「タダでいいよムッシュー」と気前良く無料にしてくれたりもした。
元は同じフランス領土ということでベトナム系の住民も多く、ベトナム料理が比較的安く食べられるという美味しい点もある。
悪いところではないのだ。
でもやっぱりこの物価は厳しすぎる。
ブラジルでは移動費の高さにヒーヒーいっていたけれど、今思えば可愛いものだったなぁ。
あぁ、早いところブラジルに戻ってゆっくりしてぇ・・・。

アマゾン渡河船

Amazon ベレンから船でアマゾン河を渡り、対岸の町マカパまで移動。
片道27時間の渡し舟だ。

旅行者の間ではマナウス⇔ベレン間の船を使うのが一般的なのだが、俺の場合は北方のギアナ三国方面に向かいたかったので対岸のマカパ行きの船なのだ。
ちなみにベレンからマナウスまで乗ると所要5日間である。それに比べたら27時間の船旅など楽なものだ。

船は朝10時に出港。
1時間前の9時には港に着いていたのだが、もうかなりの人数が並んでいた。
それでも比較的早めに船に乗り込むことができ、ここぞという場所に当たりをつけてハンモックを吊るす。
空いてる場所を選んだつもりだったが、その後ぞくぞく乗り込んで来た乗客たちがみるみるうちにハンモックを吊っていき、結局はぎゅうぎゅう詰めになってしまった。
乗客は全部で70~80人くらいだろうか。6畳部屋くらいの空間に15~20人といった割合での詰め込みよう。
なんだか奴隷船にでも乗っているような気分だ^^;
ハンモックに寝てみても、隣のハンモックとの隙間がないため全く揺れないのだ。
風に吹かれてハンモックに揺られながらアマゾンを眺めての旅・・・
そんな旅の情緒など微塵も感じさせてくれなさそうだぞ^^;

3階の甲板に出てみるとドでかいスピーカーが設置してあって音楽を最大音量でガンガン鳴らしている。
こういう辺りはさすがはブラジルっぽい♪
エンジンと音楽をアマゾンの空に鳴り響かせながら、この小さな船はドロ色の河を突き進んでいく。
甲板の椅子に腰掛けカンカン照りの太陽の下、気持ち良くビールを飲みながら過ごす。
すぐに大粒の汗が吹き出してきたが、流れるままに汗をかくのも時には気持ちが良いものだ。
時々シャワーを浴びて汗を流す。
河の水を汲み上げて使うシャワーだが、これが結構気持ちいい。

外は見渡す限り茶色の河が広がっている。
河というよりは、もはや海だね。
それでも密林の茂る大小の島々が点在していて、その島と島の間を通り抜けることもある。
時々、岸辺に水上家屋を並べた小さな村が見える。
マングローブの大きな根の上に並んだ裸の子供たちが手を振る。
川面には薄黄色の小さな蝶がひらひらと舞っている。
アマゾンに古くから伝わってきたのであろうカヌーを操る人たちの姿も見える。
うーむ、夢にまで見たアマゾンが眼前に広がっているよ。
かすかに期待していたピンクイルカは見れなかったものの、それでもアマゾン河の雄大な光景は十分に楽しめた。
満足満足♪

夜は乗客の一部が1階へ移動してやや隙間ができ、さらに河からの夜風が吹き抜けて気持ちよく眠ることができた。
しかも空は満天の星空である。もう最高の気分だ。
こんな船旅なら5日かけても悪くないかもなぁ・・・。

ベレン2

Belem2 朝起きて外出しようとしたらヨーダに呼び止められた。
いや本当はヨーダじゃなくて、ヨーダに良く似たイルダおばちゃんだったのだが、それはまぁいいとして、何かと思ったら、
「外は危ないわよ。カバンは置いていった方がいいわね」と忠告してきた。

ほえ?危ないって何で?
あ、そうか。今日は日曜日なんだ。
ブラジルの町って、たいがい日曜になると全部店が閉まってしまい廃墟のような感じになるもんなぁ。
人通りも完全に絶えるので、裏路地なんか確かに危なくて気軽に歩けないのだ。

ま、それでも大通りならまったく人気がなくなったりはしなかろう。
宿から大通りに出るまでを注意すればいいのだ。
「ちなみに、ピストル強盗の可能性もあるの?」と聞いたら、
「もちろんあるわよ。ホントに危ないんだから日曜日は」とのこと。
・・・忠告通り、カバンや財布は置いて手ぶらで出るとしようか^^;

手ぶらになってさえしまえば、パッと見はブラジル人の貧乏人と大差ないので襲われる確率はかなり低いのである。
万が一襲われたとしても、盗られるものがないんだから安心だ。

んで外へ出て、市場で食い歩いたり、町中の動物園の見学をしたり、一日中歩き回っておりました。
市バス代をケチっちゃったもんだから総計15キロくらい歩いていたかも。
くたくただ。今日は筋トレも休みにしてしまおう。

暗くなりかけた頃に宿に戻ると、ヨーダが、いやイルダが入口で待っていた。
「ジャポネス、大丈夫だったかい?」
お?心配してくれてたのかな?

実はこのおばちゃん、アマゾン船のチケットの手配もやっていて自分のところで買わなかったりするとかなり愛想が悪いらしいのだ。普段でも無愛想な時があるけど、それはたぶんロトくじが外れまくっていたりする時なのかもしれない(毎日やってるっぽいもんなぁ^^;)。

評判通り無愛想なとこもあるけど、根はブラジル人らしくいい人みたいだ。
明日また市場にいったら何か果物でも買ってきてあげようかな。
おばちゃんの笑った顔を見てみたいのだ。
にっこり笑ったらホントにヨーダそっくりになりそうなんだもんなぁ・・・(笑)。

ベレン

Belem1 アマゾン河の河口に位置する港町、ベレンにやって来ました。
お?もうベレンだってよ。我ながらかなりの高速移動なんでないかい?
もう完全に非沈没系パッカーだね♪

サンルイスから夜行バスに乗り、翌朝7時にベレン着。
バスターミナルから安宿がある旧市街まで2キロか。
市バスを使うほどでもないなー、ってことで歩いてみたけど、この町もやっぱしあぢぃわ。宿に着くまでに汗でぐっしょり。
ほとんど赤道直下だからなぁ、当たり前っていえば当たり前なんだけどさ。頼むから誰かこの赤道どっかに持って行ってくれー。

川べりの市場を見てまわりながら思ったけど、この町の物価ってブラジルにしてはかなり安い方かも。
屋台物も多そうだし、アマゾン地方ならではの味が気軽に楽しめそうだ。
よっしゃぁ、こうなったらもう食い歩いちゃうぞ♪
財布の紐をあまり気にせずに食い歩けるなんてボリビア以来だな・・・。
(いや、物価がボリビア並ってわけじゃないんだけどね、物価の高いギアナ三国に攻め入る前に食いだめしておきたいのさ)

ベレンの後はアマゾン河の河口を船で渡って対岸のマカパという町に行く予定。
んで、今日その船の値段と時間を調べてきたんだけどさー、対岸まで20時間!! 船によっては30時間もかかるんだってさ。
うひゃぁ・・・片道30時間の渡し舟って・・・さすがはアマゾン河といったところか。
とりあえず2~3日かけて存分に食いまくってから対岸を目指すとしますかね。

レンソイス

Lencois サンルイスからバスで5時間。
バヘイリーニャスという田舎町にやって来た。
知名度はあまり高くないけれど、美しい砂丘がある所。
バスを降りてすぐ、宿も決めない内に、誘われるがままに砂丘へ行くツアーに参加してまいりました。

(普段はそんなドタバタするようなことはしないんだけどさ、もう出発寸前のジープの空席に誘われたんだよね。そういう時って値切りやすいからねぇ。ちなみに所要5時間ツアーで40→30レアル)

さてさて、雨季には多くの湖礁ができるという、このレンソイスの砂丘。
もう乾季に入りかけていたので少々心配だったものの、行ってみたらまだしっかり水がはっていた。よかったよかった、余は満足じゃ♪
多少干上がり始めてはいるものの、泳ぐのにも十分なくらいだ。
それにしても、砂丘の中にできた湖なのに魚がいるのには驚いたなぁ。

バヘイリーニャスはとても穏やかでのほほんとした田舎町。
砂丘以外にたいした見所はないんだけど、気に入ったのでもう一泊だけ滞在してみようかな。