私にとって、生涯忘れることのない出来事が起こります。
私は、ボウリング場にいました。4人でプレイを開始し、私の投順は4番目です。練習ボールがあったので、1球投げましたが、その時は普段通りに投げられました。
さて、いよいよ本番がスタート
皆が投げ終わり、自分の順番がきて、ボールを両手で持ち上げた瞬間、それは起こります。
(・・・さっきまでと何かが違う・・・)
最初は自分でも何が起こっているのか、わかりませんでした。次に頭に浮かんだのが、
(あれ?このボールをどうするんだっけ・・・)
さっきまで投げられていたのに、目の前にあるボールをどうすればいいか、がわからなくなっているのです。
そのときの感覚は、ど忘れのひどい感じとでも言いましょうか、思い出そうとしても思い出せない感じ、、、なのです。
ボウリング場で、皆とボウリングをやっているという認識はあります。でも、どうしてもボールをどう扱うかがわからない。
私はボールを回します。すると、ボールに開いている2つの穴が見えてきて、(確かここに指を入れるはずだ)と思い出します。
そして、その後親指を入れる穴も見つけ、何とか投げる前の構えまでは出来ました。
出来ましたと言っても、確信を持ってやっているのではなく、(こんな感じだったような・・・)という、ひどく曖昧な状態で探りながらやっている感じです。
そして、
(・・・どうやって投げるんだっけ?)
今度は、投げ方がわからない。手と足を動かして投げていたはず、とまでは思い出せても、どこを動かせばいいかわからない。
でも、レーンの向こうに立っているピンを倒すという認識はある。これからやろうとする目先のこと・・・だけがわからない。ぽっかりとそこだけ抜け落ちてしまったかのようだ。
(ええ~い、何とかなるだろう!)
ボールを投げるために腕を下ろしながら、前に数歩踏み出し、ボールを手放す。もちろん、スムーズに投げるイメージなど、出来ていない。
何しろ、一歩踏み出した瞬間、次に何をするかわからない、という状態だ。脳からの指令なしに、身体のパーツが、バラバラに動いている感じだ。
ガコン、ガコン、ガコン!
投げ方がわからない状態で投げたボールは、放物線を描いて宙に浮き、思いっきり床に叩きつけられ、バウンドしながらガーター(脇のみぞ)に吸い込まれていった。
(寝不足で調子わるいのかな・・・?)
確かにその日、私は1時間くらいしか睡眠を取っていなかった。だから、次の順番まで横になっていれば大丈夫だろう。そう思いながら、3フレーム分を投げる・・・
でも、結果は同じ。
(脳内で何かが起こってる!!)
動物的な勘としか言えない。
クモ膜下出血などは、早ければその後のダメージも少なくて済むと、誰かが言っていたな。何かはわからないが、とにかく、一刻も早く病院へ行こう。
こうして、傍らにいた妻にすぐに病院へ連れて行って欲しいと伝える。
ただ、妻に、自分の状態を伝えるのもひと苦労。
『これからやろうとすることが、わからないんだ』
いくら言っても伝わらない。普段、冗談を言うことが多い私は、この時ばかりは自分を恨んだ・・・
(まじめに言ってるんだよぉ~~~~~~~!!)