ラオスダムは災害か? | KGGのブログ

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https://edition.cnn.com/2018/12/14/asia/laos-hydropower-dams/index.html

ラオスはダム災害に直面しているか?

ケイティ・スコット: CNN

更新 1247世界標準時(2047 HKT)2018年12月14日

 

 まず衝撃波が来た。次いですぐに破裂音が続いた。そして高さ15フィート(4.5m)のパリ市ほどの広さを飲み込むに十分な巨大な波がラオス南東部を洗い流し、村々をバラバラにし、家を飲み込み、数千人の人々を離散させた。

 今年7月(2018年7月23日: 訳者註)、ラオスのアタプー県における十億ドルのダム崩壊で、少なくとも35人が死亡、7,000人以上の人が家を失った。国営メディアによる。

 

 悲劇のなかで、ラオス政府は既存ダムの安全性を検討し、新規ダムの承認を中止すると約束した。国際専門家チームが、その事故の根本原因を探るために呼ばれた。

 しかし数カ月後、検討も調査も行われているものの約50箇所のダムも着実に建設が続けられている。

 その国では数百以上のダムが計画されており、環境保護活動家は、ラオスにおけるメコン川の環境が、それに頼る人々の生命とともに荒廃するに違いないと警鐘を鳴らしている。

 

 

メコンを粉砕するダム

 東南アジア地域の中心に位置するラオスは、観光客に人気のタイ、ベトナムやカンボジアという近隣諸国の影でひっそり生きる(南北に)細長い内陸国である。

 その結果、その元フランス植民地は、山、台地や平原が手つかずのままそこにある。しかし、現実問題として、ベトナム戦争における約8千万発もの不発弾が残され、締め付けられている。

 

 ラオスはメコン川により貫かれている。その川はチベットのヒマラヤに源を発し、2,700マイル(約4350Km)流れ、ミャンマー、ラオス、タイ、カンボジアそしてベトナムを通って南シナ海に流れ込む。

 

 しかし、メコン川委員会によると、中国からベトナムにかけて、巨大なタービンを回すために貯水し放流する、水力発電用ダムがメコン川とその支流の自然の流れを堰き止めはじめている。その委員会はメコン川の開発を調整する政府間機関である。

 

 どの場所も共産国ラオスほど公言していないが、ラオスにはメコン川に流れ込む川や支流に沿って46箇所のダムがあり、合計約6,500メガワットの発電能力を持っている。

 別の54箇所のダムが建設中で、多くは完成間近である。

 

 それに加えて、メコン川主流の地峡部に11のより巨大な水力発電ダム計画がある。それらは少なくとも合計1万メガワットの発電能力をもつ。

 これらのダムのうち9箇所はラオスに位置し、2箇所は既に建設中である。

 

 アジアの最貧国の一つとして、ラオスは電力を近隣諸国に輸出することにより利益を生み出すことを期待している。

 ラオス政府は今後12年で、発電能力を3万メガワットまで増大することを目指している。エネルギー・鉱山省が2016年に発表したデータによる。

 

 すべて計画通りに進むとすると、2030年までにメコン川には429箇所のダムができることになる。

「もし計画中の多くのダムが完成すると、いままで知られていたメコン川の環境を完全に変えてしまうことになる。」川とそれに依存する社会の権利を守る環境保護グループ、インターナショナル・リバーズの東南アジア地区プロジェクト責任者モーリン・ハリスは語った。

「自由に蕩々と流れるその川の広がりが、完全に水瓶の並びもしくは水を溜めた湖に変わってしまう。広範な生態系に対してドミノ効果をもたらしてしまう。」

 

 それらの効果は、地元の人々から土地を奪うことも含まれる。ハリスは説明した。地域住民を退去させ、再定住させ、その過程で川に頼っていた世代をあとにして新しい生計をたてさせようとする。

 ダム建設会社が、生計の建て直しと生活水準向上に注力する再定住と補償プログラムを行うものの、それらは微々たるものとハリスは語った。

 

 

環境を遮る

 何百年の間、ラオスではメコン川とその周辺で生命が茂ってきた。毎年雨期には、川は水で満たされ、近隣の森や水田に水が溢れた。乾期には肥沃な土がもたらされた。

 水牛は土手を歩き回り、泥色の川は多くの水生生物の住みかである。危機に瀕するメコンオオナマズ(プラー・ブックのこと: 訳者註)やイラワジ・カワイルカも含んでいる。

 

 しかし、環境保護活動家は、ダムを川に作りすぎて過負荷をかけると生態系が破壊されるに違いないと語る。

「(これらのダム)は、メコン川流域がもたらす天然資源に依存する数百万人もの人々のように、その地域の漁業、魚類の回遊、生活ならびに経済に影響する。」インターナショナル・リバーズのタイ地区行動コーディネーターであるピアンポーン・ディーテは説明した。

 

 ダム建設がメコン川、アマゾン川やコンゴ川流域で加速する一方、ヨーロッパや北米では数百もの巨大ダムが解体された。ミシガン州立大学の研究者の最近の研究による。

 

 その研究は述べた。ダムは、川の生態系遮断、相当な森林破壊、生物多様性の喪失、大量の温室効果ガス放出、食料システムや水質や農業への悪影響、さらには数千人もの人々の退去をもたらした。

 

 メコン川に計画されたダムは同様の問題を起こすに違いない。メコン川委員会が発表した2018年「委員会研究」による。

 

 その委員会研究は、メコンデルタへの堆積物97%減少とともに、2040年までには漁業の衰退を予想する。

「その国において水力発電の開発は魅力的に見えるかもしれないが、妥協点と損失についてもっとバランスをとった考慮が必要である。」ハリスは語った。

 

 

誰が犠牲になるか?

 ラオス政府はこれらの計画を自ら行う経済的・技術的能力を持たない。したがって外国の支援に頼ることになる。

 

 そのようなものとして、ラオスにおける多くの水力発電ダムは、中国、タイ、韓国、日本ならびにフランスからの投資者により資金提供される。コートニー・ウェザビーは説明した。ワシントンに本拠を置くシンクタンク、スティムソン・センターにおける東南アジアプログラムの研究アナリストである。

「中国は最も大きな(投資者の)一つである。すくなくとも50のプロジェクトとラオス全体の発展性の三分の一は中国の資金調達、投資ならびに/もしくは建設に依存している。」ウェザビーは語った。

 

 ほとんどの場合、ラオスはダムの土地を25年もしくは相当の期間、投資者に貸与している。その後、ダムはラオスに返還される。

 

 ラオスは時にプロジェクトに小さな決定をもつ。あるいは発電した電力の一部を国内用に提供するか、外国に売るかの説明を政府が受けているかもしれない。ウェザビーは語った。

 

 しかし、東南アジア本土におけるエネルギー需要の急速な増加にあわせて、発電電気のほとんどはタイやベトナムに販売される。メコン川下流域での水力発電開発から得る利益が2040年までに1兆6千億米ドルと見積もられるが、水力発電プロジェクトのほとんどが政府により計画された事実にもかかわらず、ラオスはその23%を得るに過ぎない。委員会研究による。

 一方、タイは810億米ドルの経済的利益を得るだろう。なぜならタイは主たる投資者であり、またラオス電気輸出の一義的購入者であるからだ。中国、マレーシアならびに韓国も利益を得る。研究による。

 しかし、ハリスもウェザビーも、これらの数値はたぶん過大評価されていると警告した。

 

 

前に舵を切る

 ディーテによると、委員会研究から得た重要な成果は、政府が他のエネルギー獲得手段を求めるべきであるということだ。「なぜなら、それらのダム建設は非常に破壊的であるのだ。」

 しかし、彼女はラオスがその呼びかけを心に留めることに楽観視していない。

 CNNはラオス政府に質問したが、コメントの要求に応えはしなかった。

 

 9月、ASEANの世界経済フォーラムでの発言で、トーンルン・シースリット首相は、ラオスは再生可能エネルギーのため別の方法を模索し続けるが、水力発電開発は重要な収入源でありつづけると語った。

「我々は、社会経済学的な面や社会に対するその計画の潜在能力の影響を保証しなければならない。しかし、水力発電プロジェクトは収入と再生可能なクリーンエネルギーを生成する良い方法である。」彼は聴衆に語りかけた。

 しかし、首相は付け加えた。ラオスは「アジアのバッテリー」にはなりようもない。近隣国の需要に比べて国内の電源開発能力はまだ非常に限られているからだ。

 

 彼は、ラオス政府は7月のダム崩壊の教訓を「考慮し続ける」と確認した。

「電源開発という文言で、我々は、今から水力発電計画の発展は注意深い計画と良い設計を基礎にするべきであるということを確認するために関与する。」首相は語った。

 

 しかし、ディーテは語った。これらのプロジェクトに関する決定のほとんどが、閉じた扉の向こうで行われた。

 彼女は語った。環境と社会への広い影響を懸念する地域の活動家、地域社会や下流の国々からの強い反対にもかかわらず、これはメコン川本流における建設中の2箇所の水力発電ダムの例である。

 

 彼らは主張する。環境関係経費についてはダム承認の過程に加味されず、地域社会は参加する機会を与えられない。

 実際、7月のダム崩壊に伴い新しいプロジェクトの中止を発表した数日後、ラオス政府は別のメコン本流ダム諮問プロセスに同意した。

 このプロセスの間、近隣諸国は提案された計画の利害を評価できる。また、ラオスは逆の影響を最小化するための調整を行う機会を持つ。

 

 国際的な組織からの圧力は、ダム建設業者に環境への影響を和らげるための方法を採用させることが可能になる。スティムソン・センターにおける東南アジアプログラム部長ブライアン・アイラーは説明した。

 しかし、支流のプロジェクトは同様の諮問プロセスは必要ないので、これはメコン川におけるダムで唯一当てはまるだけである。彼は付け加えた。

「ラオスにおいて、組み込まれた緩和策が全くない多くのダムを見ることができる。」「それらは国際的注目のレーダーから外れている。」アイラーは語った。

ラオスでは55のダムが建設中である。彼は語った。「注意を払うにはあまりに多すぎる。」

 

図版はCNNのガブリエル・スミスによる。

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仮訳終わり

 

 

 2018年12月の記事です。

 ラオス最南端アタプー県のダム崩壊は2018年7月23日に発生しました。

 

ウィキペディアに概要と経時的流れがありました。

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 セーピアン・セーナムノイ副ダム決壊事故は、2018年7月23日18時頃にラオスのチャムパサック県パクソン郡のホアイマクチャン川、セーピアン川、セーナムノイ川に建設中であったセーピアン・セーナムノイダムの副ダム(D)が決壊した事故である。セーピアン川へと大量の貯水が一気に流出したことでアタプー県サナームサイ郡の下流域にあたるセーピアン川沿いおよびセコング川沿いの少なくとも19村(マイ村、ヒンラート村、サノングタイ村、ターセンチャン村、タモーニョート村、ターヒンタイ村、ターボック村等)の2657世帯、14108人(女性7705人)が被害を受け、42名が死亡した。

 

7月20日 - 5ヵ所の補助ダムのうち、1ヵ所のダムにおいて11 cm沈下しているのが確認される。

7月22日21時(現地時間) - 副ダムの一つ(サドルダムD)で上部が押し流されているのが発見される。直後、SKエンジニアリング・アンド・コンストラクション (SK E&C) が当局に通報、住民の避難が始まる。

7月23日

 3時 - サドルダムDの水位を下げるため、セーナムノイダム(主ダム)の一つから放流。

 正午頃 - 政府が川下の住人に正式な避難命令を出す。

 18時頃 - ダムの亀裂の拡大が確認される。

 20時頃 - ダムが決壊。50億m3 の水が流出する。

7月24日

 1時30分 - サドルダム付近の村が冠水。

 9時30分までに7ヶ村が冠水。

 ラオス政府は7月閣議にて同地区を国家緊急災害地域に指定、労働社会福祉省が中心となり、国防省、アタプー県らと協力し特別対策委員会を設置。義援金については中央では労働社会福祉省国家災害防止管理委員会および地方では県庁が管轄とした。

7月25日

 18時トンルン首相が記者会見を行い、587世帯、3060人が一時的に避難しており、少なくとも26人が死亡し、131人が行方不明になっていると発表。洪水が下流域に及び13村に被害が拡大しているとした。

 ソーンサイ副首相をトップとする国家天災対策特別委員会を設置。

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引用一部 一部改変

 

 

 一時、嫌韓WEB民の間で、韓国のデベロッパー社員がさっさと逃げたとか、帰国したとか言われていました。そんなことはどうでも良いのですが。

 

 

 この記事の中で、1万メガワットというのがどのくらいの規模か調べてみました。

 水力発電ですと、日本で一番の発電量を誇るのは奥只見ダム発電所で560MW。黒部第四ダム発電所では335MW。

 私のよく知るザンビアとジンバブエ国境のカリバダムでは南北の堤にそれぞれ発電所があります。北堤発電所と南堤発電所です。北が960MW、南が666MWです。かなり大きい発電所であることがわかります。

 水力発電所では設備投資したわりには、アウトプットが少ないように思います。そして、昨年7月のような事故も起こります。

 

 火力発電所では、昨年地震のために緊急停止し、復旧できなかったために北海道内全電源喪失を招いた元凶、苫小牧東部火力発電所は、1、2、4号機の3基で合計1,650MW。火力発電所の効率の良さがわかります。

 

 一方、原子力発電所で、今は停止した福島第一原発は6基のリアクター合計で4,700MW。一箇所で、水力発電所の数箇所分の電力を生み出します。そりゃ、原発に傾くはずだ。一箇所でこれだけ発電すれば、いくら使っても大丈夫と思ってしまうのでしょう。3.11のあと、東京は半年ほど街が暗かったのですが、今はどうです。けろりと忘れて、じゃぶじゃぶ電気を浪費していますね。

 

 垂れ流しするように電気を無駄遣いし、「原子力発電所反対」とか、「二酸化炭素は環境破壊の元凶」などと『ほざいている』連中は、まず、原始生活にもどってから、そういう発言をしてもらいたいものです。環境原理主義者にそのような人が多いような気がします(個人の妄想です)。

 

 電気もない、ガスもない、水道もない生活。大自然の中で肉食動物の攻撃に恐れながらの生活。

 素晴らしい『環境』の下で生活できますよ。

 

 

写真はセーピアン・セーナムノイ主ダム アジアタイムズから借用