銀河航海時代 第3話 「なぜならば、希望は最後まで残っているから」 | 千客万来!! 蒼天堂古書店

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暇人が稀に小説書くブログです。あ、日記もたまにします。

「はぁっ、はぁっ…」

インスは自宅へ向かって疾風のように駆けた。

母の無事を確かめなければ。

自宅は定食屋。すなわち料理に使う油など燃えやすいモノがかなりある。

逆に考えれば1階で仕事をしているから、すぐに逃げ出せるということにもなる。

様々な思いが交錯しながら、インスは必死に走り、遂に家が見えた。

! 母さん!!

やはり自宅も轟々と燃えさかっていた。

「…迷ってるヒマはないか!!

腹をくくって、炎の中へと突っ込む。

「ううっ、あっちい…母さん!! 母さん、どこにいるの!

大声で必死に母を探す。瓦礫があれば、鉄剣で薙ぎ払って道を開く。

「クソっ…母さん、母さん!!

「…コホッ、イン…ス…?」

すぐ後ろで、瓦礫が崩れ、母が顔を出した。外傷は特に見当たらない。

「母さん!! 大丈夫だった?

「ああ。お客さん先に逃してたら、調理台の下敷きになってね…なんとか自力で這って出たのよ」

「よかった…すぐに出よう!

「そうしようかね」

息子は母に肩を貸して、どうにか家を脱出した。

「…だあっ、助かった…」

「ありがとね、インス。わざわざ助けに戻ってきてくれて」

「息子が親を助けるのは義務みたいなもんだよ。…そうだ、シグマ!

「シグマ君、何かあったのかい?」

「実は…」

インスは事の顛末を母に話した。

「なぁるほどね…分かった。アタシは先に避難所に行く。アンタはどうする…って、聞くまでもないか」

「うん、シグマを待つ。いや、加勢しに行く!!

OK。絶対、死ぬんじゃないよ! このアタシの子なんだからね!!

レイリアは駆け出して、残されたのはインス1人となった。

「まったく…そこは、『あの人』の息子なんだから、とか言って欲しかったな…」

言い残し、インスは駆けた。

たった1人の良き友人を救うため。

「…シグマ、大丈夫かな…いや、アイツは意外とタフだし大丈夫か」

「お! うぉおーい、インス!!

見ると向こうから1人の少女を打き抱え、走ってくる親友の姿があった。

「シグマ、無事!?

「この俺がそうそうヘバッてたまるか!! …と、その前に…」

シグマは抱いている少女を下ろし、優しくいい聞かせた。

「あのな、ミリア。兄ちゃん達はもう少し用事があって、ミリアと一緒に逃げることはできねぇんだ。1人で避難所まで行けるか? ほら、あの先にある大きな教会だ。すぐに兄ちゃん達も行くから、な?

少女は少し考えた後、元気に答えた。

「うん、わかった! ミリア、ひなんじょでまってる!! だからおにいちゃんたちもすぐに来てね?

「おう、任せとけ!!

「じゃあ、いってくる!! ぜったいだよぉ!

少女、シグマの妹は元気に手を振って、教会に向かって走り去った。

「…さて、平和タイムはこれにて終了だな。あとは分かってんな、インス?

「ああ。このまま逃げても街がボロボロになるだけだ」

「てコトは…」

「この惨事の首謀者を叩きのめす!!

「決まりだな」

「うん。シグマ、武器は?」

「コイツだ」

シグマは両手にはめた鉄甲を見せた。

「何、それ?

「ナックルダスターだ。まあメリケンサックとかいろいろ呼び名はあるんだが、こうやって拳にはめて殴るんだよ」

「へえ、そんな武器があるんだ」

「最近開発されたばっかなんだそうだ…お前もちったあ世の中勉強しろ。科学ってのはどんどん進んでいくんだぞ」

「う…分かってるよ。それより…」

「っと、そうだな。…行くぜ?」

「うん」




生まれ育った故郷を取り戻すため、2人の戦士は駆け出した。