銀河航海時代 第2話 「かと言ってここは地獄でもない」 | 千客万来!! 蒼天堂古書店

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暇人が稀に小説書くブログです。あ、日記もたまにします。

インスが自宅を飛び出した頃と同時刻・・・

ギルセンの街外れにはおよそ200体程のGM軍団が集結していた。

「ッフフ・・・まずはこの街からだ」

「いいのですか? こんな平和ボケした星、それもこんなド田舎を襲って・・・なにかメリットでもお有りなのですか?」

「その疑問はもっともだな。しかし、我はそこに目をつけたのだよ」

「というと?」

「フフン、こんな田舎を襲うことによって人々を完全な戦意喪失へと導くのだよ。

それに、いきなりヴェンデッタやローサットのような大都市を無理に攻撃し、こちらが甚大な損傷を負うのも忍びない・・・まずは確実に勝算のある都市を狙うのが最も賢いやり方なのだよ」

「なるほど・・・武闘派かと思っておりましたが、意外にも頭脳戦もお得意のようで」

「そうか? ハハハハハ・・・」

その中でも一際目立つ、2人組がいた。

1人は長身の白髪、やや2枚目気取りな男。もう1人は低い背で切れ目の悪魔男(ゴブリン)。

「さて、無駄話もここまでだ。そろそろ行くとするか・・・行け、我が獣人(ビースト)軍団!! この街を片っ端から叩き潰せぇぇぇぇ!!!!


グオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!


キギャアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!





今、獣人達が猛攻勢を開始した。





「ふっ、っふ・・・せいッ!

インスはその頃、家からやや離れた、今はもう使われていない採掘場で鉄剣を振るっていた。

「はっ、せぇい! よっとぉ!

突き、薙ぎ払い、前転してから逆手持ちし、空を斬る。

「…毎日、よく飽きねえよなぁ…」

それを端から眺める少年1人。名をシグマ・レイダース。

インスの幼なじみであり、良き相談相手である。

「ま、好きで始めたことだしね。いろいろ身につけとかないと」

「それをすんのは必然なのかよ?」

「ほっ! ふう…シグマもやる?」

「パス。正直ダルい」

「もー、せっかく誘ってるのにー。相手もできるし、僕としても都合がいいんだけど」

「俺ぁ、オメーみたいに正義の炎がメーラメラって訳じゃーねえのヨ」

「僕だってそんなつもりないよ。ただ…」

「ただ?」

「…いや、なんでもないッ! ほっ!!

一時置いて、また剣を降りだした。

その時、遠くの方で獣のような吠え声が聞こえた、ような気がした。

「…ん? シグマ、何か聞こえない?」

「うんにゃ、なーんにも」

「そんなことないよ…ほら」


・・・・ォォォォォォォン・・・・・


「…そうだなぁ、聞こえる。なんか街であったか?」

「戻ろうか、トラブルだとマズいし」

「そうすっか」

2人は元の住宅地へと走った。



だが、そこは既に、



「…こりゃあ、何の冗談だぁ、オイ…」



異形のよそ者の手によって、



「どうして、こんなことに…」



瓦礫の跡と屍人の山が築かれていた。



周りは既に火の手がいくつも上がっており、化物のようになっていた。

建物は大半が半壊、もしくは全焼しており、逃げ惑う人々の群れができていた。

泣き叫ぶ子供、叫ぶ女性、狂ったように炎に向かっていく男…

そこはまさに、阿鼻叫喚の地獄絵図だった。

「誰が…こんなことを…」

インスは鉄剣を強く、強く、握り締めた。

「あぁ…まったく…人様の土地で好き放題してくれやがって…」

シグマも拳を固めていた。そして、


「どこのどいつだあああああああぁぁぁああああ!!!!!!!!!!


最大級の怒声を放った。


シグマは普段はおどけて、やる気のないように見える少年だが、

この街の誰よりも星を愛する男でもあった。

その為、復讐の念が今まさに沸々と煮えたぎっていた。

「ゼッてえ許さねえ…そいつに1発ブチかますまで、このイライラは抑えきれねえ!!

「…シグマだって充分、正義の炎燃やしてるんじゃない?」

「へっ、そうかもな。…っと、まずは家に戻ろう。家族が心配だ」

「そうだ!! 母さん!!

刹那、走りだしたが、友人の声によって呼び止められた。

「待て、インス!

言われ、インスは振り返る。今も足踏みをし、居ても立ってもいられないという状況だ。

「なんだよ、急がないと!!

「…生きろよ」

そう言って唯一無二の親友は親友に親指を突きつけた。

「…ああ、シグマもね!!

「おうよ!!

2人はお互いの家へ向かって走りだした。



これが彼の伝説の第1歩となるのも知らずに…