良書のススメ(38) 杉浦日向子先生の「江戸アルキ帖」 | 福島市南沢又のきくや洋品店

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美麗なカラーイラストと風情溢れる流雅な小文とで、失われた江戸八百八町の街並みに読者をそっといざなう杉浦日向子先生の「江戸アルキ帖」は、「前代未聞の江戸ガイドブック決定版」との謳い文句で平成元年4月25日に新潮文庫の初版が出されました。

 

店主が持っているのは平成19年5月15日刊行の第25刷版です。

 

 

悲しいことに、杉浦先生は平成17年(2005)7月、下咽頭がんのため、46歳の若さで逝去されています。先生の訃報に接したとき、店主はしばし瞑目し、日本国はまたかけがえのない人を一人喪ってしまったなと思いました……。

 

杉浦先生のプロフィールは本書の表紙カバーの内折部分に記載がありますので、下に接写引用させていただきます。

 

 

大らかで、明るく、優しくて、思いやりに溢れた杉浦先生のお人柄が感じられる扉の言葉が、胸を打ちます。そのページを本書より下に接写引用させていただきます。

 

 

店主はほかに杉浦日向子先生のご著書を3冊(「風流江戸雀」「一日江戸人」「隠居の日向ぼっこ」)、書架に置いておりますが、よく読み返すのはこの「江戸アルキ帖」です。

 

本書は見開きで画文併載の形をとっておりますので、杉浦先生の画集としても楽しめるようになっています。

 

本書からその見開きページを数例、下に接写引用させていただこうと思います。

 

 

絵も素晴らしく、文章も達意。そして、全編に透徹する杉浦先生の慈眼。店主は思い出したときにそっとこの「前代未聞の江戸ガイドブック」を手に取り、バーチャルな江戸トリップを楽しんでいます。

 

強い江戸情緒、旅愁、懐古の情……普段、日常生活の中で影を潜めているそういう日本人ならではの感性の所在を我が身の中に確かに感じさせてくれる「江戸アルキ帖」は、江戸人を自認されていた杉浦先生が後世の日本人に遺してくださったかけがえのない宝物と言えるのではないでしょうか。

 

今はただ、杉浦日向子先生の御霊の永久に安寧なることを祈りたいと思います。

 

合掌。